俳句鑑賞文(復刻版)    2016 August        トップへ   

                                        ⇒  一日一句鑑賞文(16-05)  (16-06)  (16-07)



鑑賞を花の肥やしに夏惜しむ

 「一日一句互選」の鑑賞を積極的に始めて3ケ月が経った。
「言葉ならざるものへと逸脱しつつある言葉」(詩的思考のめざめ:阿部公彦)、
 言葉の表面的・一般的な意味だけではなく、
その裏・延長にある意味を察するということに注意して鑑賞をしてきたつもりだ。
 俳句には読者の想像に任せる意図を持って言葉を選び使った句がたくさんある。

 《身のうちに白桃を抱き会ひにゆく》    辻美奈子
 《花の夜の言葉ひとひら信じたき》     町野けい子
 「白桃を抱き」や「花の夜」から何を想像するか、それは読者に委ねられている。

しかし、詠者の心を読み取れた場合もあるが、見当違いの読みをしてしまうこともあったが、
作者の方々の暖かい言葉に勇気を頂いた。
永田 満徳】 作品は作者の手を離れれば自由に解釈されることは当然です。
向瀬美音】 北野さん、素晴らしいご鑑賞ありがとうございます。さすが私の心をお見通しで。
Sachiko Hayashi】 北野様 母の死を乗り越えるぞっ!の気合いと空元気を選んで戴き嬉しいです。
原孝之】 高校野球のことは全く頭にありませんでした。読み手により引き上げられた句です。
夏野が甲子園のこととは!しかし、甲子園は青春の夏野ですね。








(8/31)

ロダンさえこっそりワルツ星月夜   直美

ロダンとあるが、彫刻家ロダンではなく彼の作品のことだろう。
上野の西洋美術館の前庭には、考える人、カレーの市民、アダムとイヴなどが屋外展示されている。
星月夜は、月のない夜空が星明かりで月夜のように明るい、の意だが、
大都会東京で実際にこのような光景に出会うことは難しが、
作者の頭の中では、信州や富良野の煌々と煌めく銀河が見えていて、ロダンの彫刻がワルツを踊りだした。
幻想的な光景を想わせる楽しい句だ。

高井 直美 北野 和良 さま、ありがとうございます(*^^*)!嬉しいです!
はい、「考える人」もたまにはワルツを踊りたいだろうと思いながら詠みました
北野 和良 これで昨夜のリクエストにお応えしたことになりますね(笑)





(8/30)

青き空大き山抱く野分あと   大林 正

気がかりな台風が行き過ぎ、冴え渡る青空が戻ってきた。
秋を迎えようとしている山の姿も澄んだ空気の中にくっきりと見えていて、
まるで空が山を抱えているようだ。大きな景を気持ちよく詠んだ句だ。
作者の心も澄み切っているようだ。

大林 正 北野 和良 さま ありがとうございます。感激です。





(8/29)

併せ持つ光と闇の桃を剥く   孝之

この句の「桃」は隠喩であろう。光と闇を併せ持つモノ、いろいろと考えさせられる。
隠喩という手法は謎々と同じで、すぐにネタバレするようだと味気ないし、
深すぎると読者は謎解きを諦めてしまう。
この句の場合は「光と影」というヒントの出し方が絶妙だと思った。
敢て推理をすれば、人間の心、それも若い女性となるだろうか。
今月私は次の句を出した〈颯々と衣脱ぎたる熟れた桃〉、だが私の句は底が浅すぎたようだった。

原孝之 北野さん、こんばんは。互選有難うございます。
嬉しいです。詳しくご鑑賞下さり有難うございます。嬉しいです。





(8/28)

鬼の子のふはりと揺らぎ黄昏るる  征一

鬼の子とは蓑虫のこと。枕草子では秋風吹けば父恋しと鳴くという。
作者は黄昏時に風にそよぐ一匹の蓑虫を見つけ、父恋しとなく声を聞こうと耳を傾ける。
かの清少納言が聞いた鳴き声は、私にも聞こえるはずだ・・・・・

桑本 栄太郎 「一日一句互選」に頂きます。
鬼の子と云えばとても好きな高浜虚子の「蓑虫の父よと鳴きて母もなし」の
有名な句が想起されますが、 何れにしましても、秋の大変な寂寥感が想われます。
御句の「黄昏るる」との措辞にとても共通知る情感が想われ好きな句です。
今村 征一 北野さん桑本さん御選句と感想有難う御座います。




      【8月第4週 週末は席題で一句】


義仲寺に眠る翁の秋の声  美音

頂きます。翁は芭蕉ですね。智月尼との関係はどうだったのでしょう。
『ともえ』 諸田玲子著 平凡社
http://sky.geocities.jp/kitano555_2010/dokusho_2015/801_tomoe.html


石庭に谺するかな秋の声・・・清一

頂きます。石庭が目に浮かびます。


新色を試す口紅秋の声  直美

頂きます。女性らしい句です。


宙に浮く槍も穂高も秋の声  征一

頂きます。北アルプスの山々が目に浮かびます。


秋の音波動は空へすみわたる  ぶせふ

頂きます。中七波動は空へに惹かれました。


思ひ出の貝のうちから秋の声  のどか

頂きます。ジャンコクトーの詩を思い出します。


防人の狼煙見上げる秋の声   孝之

頂きます。記紀神話の時代にまで引き戻されるようです。


聴きながら和む心や秋の声  亜仁子

頂きます。秋の気配に浸っている心地よさ・・・・




(8/27)

    月光に体を任せ髪を梳く  美音

女が湯上がりに髪の毛を梳いている。上五中七からすれば月光を浴びる露天でなければならない。
何時の時代だろう? 内湯の珍しかった江戸時代なら庭に盥を出して
湯に浸かりながら、或いは湯浴みの後の光景かもしれない。
現代なら鄙びた温泉の露天風呂が目に浮かぶ。
いずれにしろ月光と妍を競う美しい女であろう。

向瀬美音 北野さん、素晴らしいご鑑賞ありがとうございます!うれしいです。
桑本 栄太郎 「一日一句互選」に頂きます。
女性が湯あみの後、洗い髪を乾かしゆっくり月光の降り注ぐ中で髪を梳き整えている。
女性が髪を梳くという行為は、整えると云うこともさりながら、
そのひと櫛毎にをんなとしてのわが身を自覚し認識しているのである。
「月光に身体を任せ」との措辞に、艶やかで匂い立つような色香が想われる。





(8/26)

旧道を絵になる眺め野路の秋  俊克

地方の旧街道筋であろう。昔は栄えていたが、近くに立派な新道ができて交通も人の往来もそちらに移ってしまい、
今は人通りも少なくなったが、昔の面影を残し懐かしい風景画のような風情がある。
私は四国八十八ヶ所を遍路で歩いたが、遍路道は旧道に残されていて作者の見たのと同じような光景を思い出す。
下五が消えゆく風景への哀感をよく語っている。

大久保 俊克 ありがとうございます(*'▽')





(8/25)

連弾の響きて終はる遠花火   はるを

花火大会のフィナーレでは、数十発、いや数百発の花火が立て続けに打ち上げられる。
絶え間ない連発の花火の音はまるでピアノの連弾演奏のように聞こえる。
上がり終えた後には突然静寂が訪れ、作者は耳に残る余韻に浸りながら何を想ったのだろう。
花火そのものは見えないが音だけが響く、遠花火の季語がよく効いている。

江守 治雄 北野さん、ありがとうございます。
西武園の花火です。今は建て込んでほんの少ししか見えなくなったが音だけは届きます。
このところ、ゆっくり人様の投稿を覗く余裕なく、この欄への投稿を控えておりました。





(8/24)

五十俵三人扶持てふ台風来  正則

時代小説を読むのが好きだ。それによると「五十俵三人扶持」とは貧乏御家人のことである。
彼らは扶持米だけでは家族を養うことも出来ず、傘張りの内職をしたり、庭に野菜を植えて自給自足に耐える。
そんな貧乏御家人の如き台風とはどんな台風なのだろうと疑問で一杯になりこの句を選んだ。
ぜひ作者の自解をお願いしたい。

野島 正則 北野さん、一句相互選いただきありがとうございます。   
時代劇の必殺仕事人の中村主水は、30俵2人扶持、それよりは収入が多い程度ですね。
句意は、選者の推測にお任せします。
北野 和良 少ない収入にやけっぱちになり八つ当たりをしているような、台風でいいでしょうか。
それにしても9号10号の被害も大きかったですね。



月点心息子の顔と夫の顔   ひとみ

北野 和良 「月天心」は、中国宋(そう)の邵康節(しようこうせつ)の詩
「清夜吟」の一節「月天心に到(いた)る処(ところ)」を踏まえている。
季語は「月」で、季は秋。「月天心貧しき町を通りけり」(蕪村)。
名月が中天にこうこうと輝く秋の夜更け、月面が息子さんや旦那さんの顔に見えた、という読みでいいでしょうか?
岩本 ひとみ 北野さん  私の詠んだままの読みをして頂いて大変嬉しいです。
誠に嬉しい限りです(*^^*) 詳しいご説明も入れてくれてありがとうございますm(_ _)m
季語は「月」です





(8/23)

白桃のためらひ傷の二つ三つ   草民

足立 光隆 【一日一句互選】に頂きます。白桃、もう完璧なもの。そこにためらい傷があるという。
買い物客の品定めか…匂い立つようなお句だ。完璧なものへの憧れと破壊衝動。リアルがある。ぶせふ選
北野 和良 私もこの句にはとても惹かれました。白桃は若い女性の隠喩、と読みました。
山野辺 茂 北野さん、ありがとうございます。



バイエルを弾く子と競ふつくつくし   直美

ピアノを習い始めたばかりの子供さんが練習曲のバイエルを弾いている。
子どもの頃、ピアノの入門編といえば、必ずといっていいほど使われた教材『バイエル』。
バイエルは、右手と左手が案外ややこしく、忍耐力が要るもので、地道に練習しないと弾けない。
今の子どもたちは、スイミングとかダンスとか、いろいろ忙しいので、
地道な練習の要るバイエルは人気がなくなってきているという。
作者の子供さんは我慢強くバイエルを弾いているが未だたどたどしい。
窓の外ではつくつく法師が合奏するかのように鳴いている。
季語を上手く使い素直に景の浮かぶ句だ。






(8/22)

うなだれて友を見送り秋暑し  栄太郎

親しくされていた友人が突然亡くなられ、野辺の送りをされたのだろう。
私も同級生と会い飲む時の話に、俺たちはいつ突然死んでもおかしくない歳になってしまったなぁと。
人はいつか必ず死ぬと分かってはいても、家族や親しい人の突然の死に理不尽を感じるものだ。
作者に同情し亡くなられたご友人の思い出を大切にされるよう願う。

桑本 栄太郎 北野さん・・・一日一句互選にお選び頂き、大変有難うございます!!。
いつも通っていますキリスト教会の親しくしていた友人を見送りました。
一昨日の前夜式、昨日の告別式へと参列致しましたが、
いつも自分に取って大切な友人を先に送ってしまっていると思うのは小生だけでしょうか?
とても寂しく感じます。
Aniko Papp 一日一句互選に選ばせていただきます。
【うなだれて友を見送り】という基底部の意味は、
亡くなってしまった友達をうなだれて見送ることです。
干渉部である【秋暑し】という季語は、適切に働きます。
葬儀には黒い弔服を着ていて参加して、残暑の暑さが実際より厳しく感じられているんですから。





    【8月第3週 週末は席題で一句】

【席題】瘋癲道人氏提供   基本季語 :新涼  傍題季語 :秋涼し 秋涼

新涼や夢の舞台の銀メダル・・・清一

北野 和良 席題一句頂きます。400mリレーの銀メダル、素晴らしい快挙でした。
原孝之 頂きます。ジェット桐生に祝杯!


向瀬美音 新涼や愛しき人の待つ国へ  美音

北野 和良 席題一句頂きます。心ときめかしてバカンスの旅へ。
向瀬美音 北野さん、ありがとうございます。あれ、帰国の事だったりして?
原孝之 頂きます。新涼の海外の旅!いいですね!


地下鉄の押し出す風や涼新た  孝之

北野 和良 席題一句頂きます。残暑のこの頃地下鉄入口でふと秋を感じた・・・・
向瀬美音 この句、私も好きです。中7がうまいですね!
原孝之 北野さん、美音さん、互選有難うございます。
Aniko Papp 頂きます。【地下鉄の押し出す風や】という基底部の後、
【涼新た】という干渉部は適切になります。基底部の言葉続きは、
実際より強い感じを伝えて、誇張的で、俳諧的」です。
【涼新た】という季語がよく働き、ユーモラスもある面白いお句です。
十河 トモ子 頂きます。季節なんかないような地下での季節感、その発見が面白いと思いました。智


秋涼し空気美味しくなりにけり  亜仁子

北野 和良 席題一句頂きます。空気美味しく、が新鮮です。
原孝之 頂きます。素直な詠みです。


足立 光隆 悪人の自覚を深く涼新た   ぶせふ

北野 和良 席題一句頂きます。悪人の自覚、常人にはなかなか出来ないことですが・・・・
向瀬美音 私もこの句好きです。自覚をすれば赦されます^^
原孝之 頂きます。この自覚が俳句を磨く!


陸上のリレーの四人秋涼し  十河智

北野 和良 席題一句頂きます。ボルトに迫る銀メダル、感動でしたね。
十河 トモ子 ありがとうございます。新聞一面の爽やかな顔が秋涼に会うように思いました。智
清水 憲一 席題一句互選に頂きます。何度見ても爽やかな勝利でした。正に涼新たな気分になりました。
原孝之 頂きます。リレー句には全て互選!


岩山にリュック下ろすや秋涼し  太三

北野 和良 席題一句頂きます。苦しい登りを終え、ほっと一休み。
向瀬美音 頂きます。情景と気持ちがよく伝わってきます。





(8/21)

      三井寺の擦れた吊り鐘秋の旅  美音

三井寺は、正式には「長等山園城寺(おんじょうじ)」といい、天台寺門宗の総本山です。
平安時代、第五代天台座主・智証大師円珍和尚の卓越した個性によって天台別院として中興され、
以来一千百余年にわたってその教法を今日に伝えてきました。
作者はこの三井寺を訪れ、長い時代を経た釣り鐘に擦り傷を見つけ、千年の時を染み染みと思い起こした。
紫式部が祈願で訪れた石山寺も近くにある、この後立ち寄ってみよう・・・・・

向瀬美音 北野さん、素晴らしいご鑑賞ありがとうございます。





    8月後期  【埋字で一句】
投句の【お題】
@いつの間に○○○○○○○○○○○○
A○○○○○夢のごとくに○○○○○
A◯◯◯◯○○○○○○○○終はりけり


初風を夢のごとくに聞き入りぬ 亜仁子
北野 和良 頂きます。涼しい風の音が聞こえます。
Aniko Papp 選んでいただき、ご鑑賞、ありがとうございました。とても嬉しいです。


秋の蝶夢のごとくに睦みけり  探花
北野 和良 頂きます。秋の蝶になってみたいです。
高井 直美 北野 和良 さま、ありがとうございます。
秋の蝶は短い命を惜しむ様に番いで仲良く飛びますね


落ち鮎の永き旅路や終はりけり  探花
北野 和良 頂きます。故郷に帰り儚く燃え尽きる命。
高井 直美 北野 和良 さま、ありがとうございます。
故郷、岐阜の清流と鮎の様子を詠みました


手花火の短き恋の終はりけり  栄太郎
北野 和良 頂きます。線香花火の散り際、儚いですね。

十六夜や美しき逢ふ瀬の終はりけり  美音
北野 和良 頂きます。十六夜の君は誰?

いつの間に涙溢れて夏五輪  穗坂 俊一
北野 和良 頂きます。リオの日本選手の活躍は感動でしたね。

水琴窟夢のごとくに秋澄めり  美音
北野 和良 頂きます。秋の澄んだ空気に響く水琴窟の水音が聞こえます。

いつの間に蜂の巣サッカーボールほど  十河智
北野 和良 頂きます。スズメバチの巣でしょうか?
十河 トモ子 熊蜂でした。退治しましたが、大変でした。智


丑三に夢のごとくに鹿啼けり・・・清一
北野 和良 頂きます。奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき。

小川 コウ 帰省子と濃密会話終わりけり  コウ
北野 和良 頂きます。どんな濃密会話だったのか、気になります。
小川 コウ アラフォーの娘に言う事は決まっています。嫁に・・・です。


いつの間に乳首尖りて秋の夜半  美音
北野 和良 頂きます。読んでいるだけでドキドキして来ます。

触れ合うて水蜜桃の終はりけり   ぶせふ
北野 和良 頂きます。中七にいろいろと想像が膨らみます。

上野 孝子 いつの間に初秋の香り色づいて  琴音
北野 和良 頂きます。孝子さんの秋色は何ですか?
上野 孝子 紅葉色です。命誕生の色。私のお誕生日は10月。(⌒‐⌒)〜


酔芙蓉片恋のまま終はりけり  孝之
北野 和良 頂きます。片恋は切ないですね・・・・

秋風や十年の恋のおはりけり  大林 正
北野 和良 頂きます。十年も想い続けてきたのに・・・・・




(8/20)

新涼や吟詠響く詩仙の間・・・清一



詩仙堂は徳川家の家臣であった石川丈山が隠居のため造営した山荘である。
現在は曹洞宗の寺院でもあり丈山寺という。
名前の由来は、中国の詩家36人の肖像を掲げた詩仙の間による。
詩仙は日本の三十六歌仙にならい林羅山の意見をもとめながら漢晋唐宋の各時代から選ばれた。

作者は京都市在住で、このような史跡に簡単にアクセスできる地の利を持っておられ実に羨ましい。
詩仙の間に身を置き、漢晋唐宋の各時代の詩を眺め、丈山の思いに気持ちを重ねる。
吟詠の声が微かに聞こえてまさに至福の時間に身を任せている作者が見える。

清水 憲一 北野さん 素晴らしい選評と鑑賞ありがとうございます。
詩仙堂も私宅から車で15分の距離で主に秋に尋ねます。





(8/19)

朝顔や宇宙語かたる人のふゑ   ぶせふ

今どきの新入社員はオジサンにとって宇宙人。何をしでかすかわかったもんじゃない。
世代間のギャップ、オジサンには若者の喋る言葉がまるで宇宙語のように聞こえるのだ。
朝顔の花を笛に見立て、そこから宇宙語が聞こえてくようだとの想像が楽しい。

足立 光隆 北野さん ありがとうございます。楽しいご鑑賞ですね♪
実際に宇宙語なる言葉を話す知り合いがあるもので、作りました。(笑)





(8/18)

虫選びキラキラ光る子供の目  亜仁子

虫は兜虫か鍬形虫のことだろう。彼らは甘い樹液を好む。
子供は昨夜の内に森の木に甘い汁を塗りつけておき、朝起きて心を躍らせながら木の場所に行く。
期待通り何匹かの兜虫が集まっていた。虫の体が朝日を受けて光り、子供の目もキラキラと光っている。
どの虫を採ろうか・・・・手が震える・・・・子供を見守る作者の目が暖かい。

Aniko Papp 私の俳句を選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、ありがとうございました。とても嬉しいです。





(8/17)

爽やかに三人娘の晴れ舞台  俊克

リオ五輪、卓球女子団体で日本は銅メダルを獲得した。
まさに三人娘の晴れ舞台だった。
インタビューに臨んだ主将福原愛選手の涙が印象に残った。

大久保 俊克 ありがとうございます。





(8/16)

魂の去り難くあり大文字・・・清一    

京都では毎年8月16日に「大文字」「左大文字」「妙・法」
「舟形」「鳥居形」の5つの山で送り火が焚かれ、
「送り火」や「大文字さん」と呼ばれている。
送り火は、盆に迎えた故人の霊を再び送り出し、無病息災を祈る伝統行事であるが、
燃え上がる炎を見て、作者は「魂の去り難く」詠む。
作者も又先祖の魂との別れを惜しんでいるようだ。

清水 憲一 北野さん ありがとうございます。
京都の伝統行事でもありますが、幸いにも五山の送り火のそれぞれが季語になっています。
舟形のある舟山の麓に父母の墓を私の名で築き
毎年舟形の送り火を見ながら父母とお別れをしています。
死んだらお仕舞いと言う世知がない人が増えている中で、
このような行事を通して先祖の霊を敬うことは大切に伝えて行きたいと
強く思う昨今でもあります。ご鑑賞ありがとうございました。





(8/15)

チェロの音と調べに秋の生まれけり  美音

チェロと言うとパブロ・カザルスを思い出す。
チェロの近代的奏法を確立し、深い精神性を感じさせる演奏において20世紀最大のチェリストとされる。
有名な功績として、それまで単なる練習曲と考えられていたヨハン・ゼバスティアン・バッハ作
『無伴奏チェロ組曲』(全6曲)の価値を再発見し、広く紹介したことがあげられる。
平和活動家としても有名で、音楽を通じて世界平和のため積極的に行動した。
秋の清々しい空気の中で、ゆったりとした無伴奏チェロ組曲を聴いている作者の姿が浮かぶ。

向瀬美音 北野さん、素晴らしいご鑑賞ありがとうございます!
私はバッハの無伴奏チェロ組曲が大好きです。





    【席題で一句】(初秋)

秋はじめ透きとほるかな聖歌隊  美音

「席題で一句」に頂きます。清々しい秋の空気と透明なボーイソプラノとが共鳴しています。
原孝之 頂きます。秋はじめと澄んだ声が呼応しています。
清水 憲一 頂きます。私も聖歌隊に入っていたのを思い出させて呉れたお句です。


躙口上り初秋の茶会かな・・・清一

「席題で一句」に頂きます。初秋の清々しい空気に包まれた茶室が目に浮かびます。
清水 憲一 北野さん ありがとうございます。秋に入り一服戴きました。
原孝之 頂きます。躙口のことは知りませんでしたが、軍師官兵衛、真田丸で分かりました。
京の夏茶会は厳しいですね。これからが良いですね!
向瀬美音 頂きます。



米を研ぐ指先楽し初秋かな  探花

「席題で一句」に頂きます。そろそろ新米の季節。主婦らしい感覚に溢れた句だと思いました。
高井 直美 北野さま、選んでいただき、ありがとうございます(*^^*)!
選評いただいたとおり、新米の季節も間もなくだと思うとお米を研ぐのも楽しくなります。
また、マンション住まいで、真夏の間は水道水も生温いので、初秋にはお水が爽やかに感じます(*^^*)
原孝之 頂きます。家事が楽しくなる初秋ですね!
高井 直美 原さま、ありがとうございます(*^^*)!
はい、少し気が早いですが、栗ご飯を炊くのも楽しみだなぁと思いながら詠みました(*^^*)!
今村 征一 一句選に頂きます



初秋を拾ふ山間ドライブへ  孝之A

「席題で一句」に頂きます。残暑を逃れ涼しい山間へ初紅葉を探してのドライブと読みました。
原孝之 北野さん、こんにちは!互選有難うございます。280mまで上りました。
向瀬美音 頂きます。
今村 征一 一句選に頂きます。句を拾ひながらのドライブですね。



新秋の卓球娘風に乗る 俊克

「席題で一句」に頂きます。リオの金メダル期待の三人娘。風に乗るの措辞が生きていますね。
大久保 俊克 北野 和良さん、 ありがとうございます。





(8/14)

閃きと勇気の日本盆まつり  孝之
卓球女子四強へ

「卓球女子四強へ」との添書で、リオ五輪女子卓球団体戦だと分かった。
準決勝まで勝ち進み、いよいよメダルへの挑戦が始まる。閃きと勇気でメダルが掴めるか。
折しも日本では帰省者を迎えて盆祭りの最中、こちらでも熱い夜が続くのだ。

原孝之 北野さん、こんばんは。連日の互選有難うございます。
「閃きと勇気」の言葉は解説者の言葉です。頂きもいいですよね?





(8/13)

十念をやつと唱へる法師蝉  孝之

十念とは南無阿弥陀仏を十回唱える修行法のことで、これを行うことで極楽浄土へ行けるとされる。
立秋を過ぎて法師蝉(つくつく法師)が鳴き始めた。
作者は鳴き声を聞いて、蝉も十念を唱えているように感じたのだろう。
蝉の鳴き声に”もののあわれ”を感じた作者に共感する句である。

原孝之 北野さん、こんばんは。互選下さり有難うございます。
詠み手を超える読み手のご鑑賞有難うございます。
私は、ツクツクボウシを何回唱えるかよく数えています。
30回以上唱えるツクツクボウシもいます。今日の昼間は10回こっきりでした。
まだまだ盆にはその位かと思っていたら、夕方には見事な大合唱でした。





(8/12)

蜩や風とひかりを織り成せり  ぶせふ

蜩は深い森や林の中を好むと言われる。
作者は林の中を散策していて蜩の鳴くのを聞いたのだろう。
周りには清々しい光と涼しさを感じさせる風が吹いていて秋の到来を告げている。
一幅の軸を見るような句である。

足立 光隆 北野さん ありがとうございます。森に囲まれた作業所風景を詠いました。





(8/11)

髪洗ひ君の真玉手待つばかり  あきこ

北野 和良 真玉手【またまで】とは1.真玉(またま[=真珠や宝石])のように美しい手。
張りがあったり滑らかで美しい手。美人の手。・・・美しい言葉を見つけられましたね。
素晴らしい恋句と読みました。
木代 明子 北野 和良 さんありがとうございます。
この言葉を使いたくて詠みました(*^^*)
清水 憲一 一日一句互選に頂きます。この句を読んだときに小野小町の百夜通い伝説を思い出した。
勿論通ったのは深草少将、小町は髪を洗って真玉手の少将を毎晩待つのである。
小町の居た京都山科の随心院には髪を洗った小町の井戸が今でも残されている。
嘸かし少将の来るのを恋い焦がれたことだろう。
詠者はそのような小町の身になってこのような恋の句を作句されたのであろうかと
想像しその華麗な中七の言の葉に共感して選句と致しました。
北野 和良 私も一日一句互選に頂きます。鑑賞は上の清水さんに同感します。
木代 明子 清水 憲一 さん素敵な鑑賞、ありがとうございます(*^^*)
ご鑑賞の通りの気持ちを詠んでみました。ストレートに伝わって嬉しいです。
木代 明子 北野 和良 さん選句ありがとうございます(*^^*)
真玉手の言葉が持つ力ですね!





(8/10)

五島より持ち帰りたる秋の風   孝之

作者はゼミ旅行で五島へ行かれたようだ。
豊かな海と島の風景を満喫して帰途についた。
鞄の中には海の幸と爽やかな島の風。風を持ち帰る、という措辞に感動した。

原孝之 北野さん、互選にお選び頂き有難うございます。ご鑑賞有難うございます。





(8/09)

大関博美 天皇陛下の「お気持ち」発表
御心は和を尊びて瑞穂垂る  のどか

北野 和良 一日一句互選に頂きます。天皇陛下のお気持ちの発表は歴史的な出来事だった。
政治には関わってはならないという立場上から、「生前退位」を直接には言えないが、
お言葉の中にはそのお気持ちが滲み出ていた。国民の大部分がそのお気持ちを受け取り、
政府・宮内庁もお気持ちを実現する方法の検討に入ったという。歴史を刻む一句だと思う。




◆ 第九回 俳句の広場ラ・セゾン句会総括(テーマ:リオ五輪、スポーツ)

8/06--08 に行われた第九回 ラ・セゾン句会の結果を纏めてみた。
投句者は7名、投句数(max5句)は28句(平均4句/人)。
選句参加者は7名。選句規定は〈特選1、並選5〉だった。
特選=2点、並選は1点、として得点表を整理してみた。
入選句数は21句(75%)、入選者数7名(全員)。

高得点句は以下の通り(敬称略)


 銀漢に槍を突き刺すリオ五輪   (北野和良) (5点)
 夏天より水の惑星穿つごと    (北野和良) (5点)
 砲丸を首に据ゑたる暑さかな   (北島和弘) (4点)
 リオの冬情熱燃やし世界沸く   (陣内良輔) (4点)
 蝉の穴覗けばリオが見えるかも  (今村征一) (3点)
 ビール飲み背で五輪を見てをりぬ (今村征一) (3点)

なお個人合計点は今村氏と北野氏が11点だった。
ご健吟の皆さま、おめでとうございました
。 (集計には慎重を期しましたが、不審な所があればご指摘下さい)
(集計表は公表を控えます)

北島 和弘 ありがとうございます〜(。・ω・。)
今回は私のお題が分かりづらかったね〜反省!
しかしながら北野さんは冴えてましたね〜おめでとうございます。
北野 和良 北島さん、有難うございます。今回のテーマ、私にはイメージが浮かびやすかったです。





(8/08)

阿波の街ぞめきのリズムで踊りだす  俊文

徳島の阿波踊りの発祥は江戸時代・蜂須賀公に遡る。
庶民に許された阿波踊りの伝統は、優雅な女踊り、奔放な男踊りとして発展を続けている。
この時期、本番の日に備えて各連の練習にも熱が入り、街中にぞめきのリズムが溢れ聞こえてくる。
作者もどこかの街踊りに参加しようとワクワクしているのだろう。

河野 俊文 北野さん、素晴らしい鑑賞をいただき嬉しく思います。
この炎天下、それぞれの連は阿波おどり本番に向けて、最後の練習に力が入っています。
見ている私たちも思わず力が入ります。まさに生きることの象徴のようにも感じます。





(8/07)

木目あるコンクリートや秋に入る  正則

建築家ル・コルビジェの設計した国立西洋美術館が世界遺産に登録された。
この建物の柱は、木製の筒にコンクリートを流し込んで固めたので、
型枠を外した後のコンクリートの表面には木目が転写されている。
日本と洋式の伝統建築技法が融合した記念に相応しい建物となっている。
作者はこの建物を淡々と写生し、ル・コルビジェの偉業を伝えている。

野島 正則 着目した木目で、すばらしい鑑賞文をいただき、感謝です。




    【8月第1週 週末は席題で一句】(喜雨)

喜雨や好し土に草木に生者にも  太三
日照り続きの後の雨は、草木や生き物すべてに生気をもたらす。

見渡して生きとし生きるものに喜雨  征一
生きとし生きるもの、の措辞が喜雨の季語とよく響き合っている。

惜しみなく草木も人も喜雨浴びる  美音
浴びるという措辞が喜雨の喜びをよく表している。

喜雨続き畑喜び都会泣く 亜仁子
畑は喜び都会は泣くという対比が人間の身勝手を炙りだしている。

生き返る喜雨の中なるご挨拶 十河智
ようやく雨が降りましたね、と喜びの挨拶が見えてくる。
十河 トモ子 皆様、ありがとうございます。香川はよく断水しました。実景です。智





(8/06)

リオ五輪始まる日なり原爆忌   孝之



8/06広島の原爆記念日で鎮魂の祈りが捧げられた。
同じ時間、地球の裏側ではリオ五輪の開会式が行われた。
ブラジルはポルトガル人の入植に始まる移民国家、種々の人種で構成され日本人もその一員である。
式典の中で日本人が登場する場面は、広島の式典の時間に同期されていた。
リオの貴賓席には各国の首脳や国連事務総長の姿が見られたが、安倍首相の姿はなかった。
首相にとっては広島を優先するのが当然だ。
二つのセレモニーが重なったこの日、いろいろのことを考えさせられた。

原孝之 北野さん、素晴らしいご鑑賞有難うございます。
昨日の出来事は原爆忌が遠い過去に風化していく日にも感じました。





(8/05)

一瞬の隙で陥る蟻地獄  郁芬

薄羽蜻蛉の幼虫が築く蟻地獄。蟻などの小動物はこのすり鉢に落ち込み命を落とす。
人間の世界にも様々な蟻地獄が待ち構えている。それは借金地獄であったり愛の煉獄であったりする。
そこへ好んで陥る人などいないが、一瞬の油断で陥るのだ。

Yufen Hong 北野樣,ご選句そして素晴らしいご鑑賞本当にありがとうございました。非常にうれしいです。





    【埋め字で一句】

それとなく想ひ伝ゆる天の川  亜仁子
北野 和良 頂きます。恋人への想いを直截に伝えるのには勇気が要りますね。

冷素麺ふと思ひ出す母の顔  琴音
北野 和良 頂きます。お母様も冷素麺がお好きだったんですね。

夏草に埋もれてをりぬ句碑ありけり・・・清一B
北野 和良 頂きます。お遍路の札所でよく句碑に出会います。

香水やふと思ひ出す熱き夜  美音
北野 和良 頂きます。あの人はこの香水が大好きだった・・・・

じんべ着てふと思い出す父のこと  大林 正
北野 和良 頂きます。甚平を着ていた父の歳になってしまったな・・・

念仏にふと思ひ出す茄子の馬  孝之
北野 和良 頂きます。お盆に飾る茄子の馬、残してゆきたい風習です。

それとなく夜見店指輪を薬指   Kohtaroh Dan Aoki
北野 和良 頂きます。あの人が夜店で買ってくれた。愛があるならディオールでなくてもいいの。
Kohtaroh Dan Aoki ありがとうございます。貧しい時が良かったのかなぁ?


酔芙蓉ふとおもひ出す恋ひる人  栄太郎
北野 和良 頂きます。あの娘も酔芙蓉のように、一口飲むとすぐに顔が赤くなったなあ・・・・・

黙といふ抗議ありけり梨を剥く  征一
北野 和良 頂きます。何かを怒って口を利かない・・・それを分かっていて乗り越える、熟練のご夫婦ですね。

それとなく耳たぶ噛んで星月夜  美音
北野 和良 頂きます。耳たぶを噛まれると心まで蕩けてしまう・・・・

涼風やふと思ひ出すあの乳房  孝之
北野 和良 頂きます。小ぶりだったけど弾力があってツンと上を向いていた・・・・

秋草や恋の人影ありにけり  太三
北野 和良 頂きます。ススキの穂の向うに寄り添う二人が見えます。

それとなく息吹きかけるうなじかな・・・清一J
北野 和良 頂きます。うなじへ息を吹きかけるのが前戯の始まり・・・・
清水 憲一 北野 和良 さんありがとうございます。この歳になっても妻は感じるようです。(笑)


それとなく夢を握るや夏の星  岩本 ひとみ
北野 和良 頂きます。夢を握るの措辞がいいです。どんな夢なのか想像が広がります。




(8/04

蝉たちの別れの宴始まりぬ   孝之

夏の宵地上に現れ脱皮し成虫となる蝉、だが地上での命は短い。
蝉は古来より感動と無常観を呼び起こさせ「もののあはれ」の代表だった。
これを見よ人もすさめぬ恋すとて音をなく虫のなれる姿を(源重光)》
雄蝉の雌を求め大合唱する蝉時雨を作者は別れの宴と表した。
蝉の地上での寿命は1〜2週間とも言われるが、その間に何度も交尾するのだろうか?
カマキリの雌は交尾の後で雄を食い殺すと言われるが、カマキリは生涯に一度の交尾に違いない。
蝉も婚活に成功し交尾を済ませると抜け殻となって地に落ちるのみ。
宴の始まりは、すでに宴の終わりを予兆しているのだ。

原孝之 北野さん、素晴らしいご鑑賞有難うございます。
素晴らしい読み手に鑑賞されて蝉たちの歓びはいかばかりかと思います。
北野 和良 「別れの宴」の措辞がいろいろと想像を掻き立て、句を立体化させていると思いました。
原孝之 北野さん、そのご指摘に感服致しました。
確かに「宴」は色々な想像をする良い言葉ですね。
私は酒飲みですから、そのことばかりでしたが、漢字からは恋にも通じるものですね。
有難うございます。「宴」句を北野さんも詠まれて下さい。
北野 和良 難しい宿題ですね。挑戦してみます(笑)





(8/03)

湯呑み酒干して始まる夏祭り  穗坂 俊一

夏祭の日がやってきた。それぞれの町会には自慢の神輿や山車がある。
きらびやかに飾った神輿は壮年が担ぎ、子どもたちも山車の綱を引く。
出立の前に神輿の周りに集まり、お神酒で乾杯! 祭りの雰囲気が一気に盛り上がる。
上五湯呑み酒が、手作りのお祭りの様子をよく現している。

穗坂 俊一 ありがとうございます。 田舎の祭りは、先ず一杯から…です。 ご鑑賞の通りです。





(8/02)

長明の八百年の蚊に刺さる・・・清一

方丈記の冒頭『行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。』
を高校で学び覚えている人も多いはず。
梅雨も開け、暑苦しい夕方、作者は蚊に刺された。
蚊と言えばブラジルのジカ熱や野口英世の黄熱病を思い起こす人も居るだろうが、
作者は何故か鴨長明を思った。方丈記にある
『或は春夏日でり、或は秋冬大風、大水などよからぬ事どもうちつゞきて、五穀ことごとくみのらず。』
と長明が嘆いた鎌倉の世の無常観と荒れた気象に振り回されている平成の今を重ねたのかもしれない。
蚊⇒か⇒鴨長明と水平思考的な連想で一句が出来上がる、俳句ならではの遊びの達人の句だと思った。

清水 憲一 北野さんの誠に素晴らしい鑑賞に敬服致しました。
そのような水平思考の連想とともにこの長明の晩年の庵の跡の近くに昔住んでいました。
そこへ夏度々訪れた時の実感句でもあります。
この乱れた世にあって今こそ鴨長明の方丈記が見直されるべき時と痛感している次第です。





(8/01)

その愛を掻き乱したる扇風機  祐

この句を読んだ瞬間、櫂未知子氏の「ストーブを蹴飛ばさぬよう愛し合う」を思い出した。
櫂氏は北海道出身で当地の冬はストーブが身近にあり、句の情景はすんなりと理解できる。
扇風機(夏季語)は今も使われているが、エアコンに押されて脇役に甘んじている。
扇風機が主役だった昭和の時代を振り返っての句だろうか?
扇風機がかき乱す愛とは? 愛の行為を邪魔する無粋な風なのか?
愛の言葉をかき乱す邪険な風なのか? 良くは分からないが惹きつけられる句だ。





    【7月第4週  週末は席題で一句】


一晩の過ち悔いる夏の果  征一

北野 和良 頂きます。どんな過ちなのか、いろいろと想像してしまいました。


万物やまつしぐらにて夏を追ふ  太三

北野 和良 万物が真夏のエネルギーに満ち溢れている。頂きます。


湾岸のラップのりのり夏の果   草民

北野 和良 頂きます。夏の浜辺で若者がラップに興じている景が浮かびます。


ピアノ弾く夏の終わりに想ふこと  亜仁子

北野 和良 頂きます。ピアノを弾きながら想うのは、過去の追憶かそれともこれからの計画か・・・・


命の重さを受け止め夏終る ・・・ 清一

北野 和良 頂きます。海外のみならず国内でも命の重さを考える事件が続発し悲しいことです。







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