出合茶屋
阿部牧郎著 講談社2003 2005/12/26

阿部牧郎氏の本で、昨年に読んだ『後家長屋』の続編である
ポルノ仕立てではあるが、性描写はごく軽め。それよりも大阪の町人風俗を、元侍の主人公の目から見て
描くという趣向が面白い。
町之介は、奥州・三戸藩に仕える武士だったが、さる事情でお家断絶となり、大阪で町人となり貸し本屋を始めた。
妻は病気で亡くなり、小さい子供と母親との三人暮らし。資本もないので、株を持つ大きな貸し本屋の支店となり、
毎日15貫の本を担いでお得意先を回っている。お得意先の人たちを巡って様々な事件が起こり、それと絡めて町之介
の色事が語られる。
出合茶屋
出合茶屋は男と女が逢瀬をたのしむ貸座敷である。二人で一緒にくつ客と、一方が先に来て待ち合わせる客がいる。
(現代のラブホのようなものか?)
先着するのはほとんどが女である。茶を飲み、草双紙を読んで相手を待つ。上気して、胸がどきどきしている。
固苦しい説話、長ったらしい物語などが頭に入るわけがない。どこを開いても挿絵のある甘い恋物語の草双紙が
女客の読み物である。
高麗橋通りの鏡屋の仲の良い中年の夫婦が、出合茶屋を出て行くのを見た。
いい年齢をした夫婦が、どうして出合茶屋などを使うのか?
おそよは床の間に手燭をおいた。ふり返って抱きついてくる。二人は口を吸いあった。
やがて町之介はおそよを横抱きに抱え上げたまま、ゆっくりとあぐらをかいた。酔っているので息が切れる。
おそよは町之介の首に両手をまわしてまた口を吸いにくる。
青いおそよの着物のすそがみだれ、脚とふとももの一部があらわになった。いくつもの鏡台にそれが映っている。
右手をおそよのふともものあいだにへすべりこませる。さかのぼって、とろりと濡れたやわらかな肉の狭間へ
たどりついた。真珠の粒をさぐりあて、親指の腹でやさしくこする。二本の指をあたたかい狭間のなかへすべりこませた。
村からきた娘
茶問屋・浅田屋の家へ内儀のおこうを訪問したとき、手代の嘉七にてごめにされようとしていた女中のおみねを救った。
邪魔された嘉七は怒って出て行ったが、内儀おこうの情人になっているようだった。亭主は死に息子が跡を継いでいる。
ある日、お峰が町之介の家を訪ねてきて、折り入って聞いてほしいことがあるという。おみねは和歌山の山奥の娘で、
縁を頼って浅田屋に雇われたという。
おみねの村では過疎の余り近親結婚が多く、生れる子供には弱い子や障害を持つものが少なくなく、外の血を
入れるために子種を欲しいと言う。
「泰平堂はん、子種をくださいね。ちゃんと根づいたら、うち紀州へ帰ります。うちをもらいたいいう男が
いるらしいさかい」 おみねは手を上下に動かしはじめた。
やがて、吸い寄せられるようにうつぶせになり、男のものを口にふくんだ。せっせと奉仕にとりかかる。かたちのよい乳房が
あわただしく揺れ動いた。
町之介はじっとしていられなかった。おみねに咥えこまれたまま、彼女をあおむけにする。両脚をひらかせて、あたたかい谷間へ
顔を伏せていった。競って二人は舌を使った。町之介は泉に口をつけてすい続ける。やがておみねは、鳩のように愛らしく
鳴き出し、まだ男のものを受け入れていないのに、腰を上下に揺すりはじめた。
旦那替え
お菊は薬種商小山忠兵衛の囲われ女である。難波新地で芸者に出て、二年目に忠兵衛に見染められて落籍されたということだった。
「ご本宅の旦那はん、このところお見かぎりだすねん。三味線のお稽古か、本読みぐらいしか、私、することがおませんの」
泣き笑いの表情でお菊は打ちあけた。 思い切って暇をもらい旦那を替えたいという。
値段は月二両の手当てと、下女の手当て三両、年に二十七両ほどだという。お菊には貧しい実家がすがっていて、
金が要るようだった。
町之介がお菊のうしろへまわった。手拭でお菊の背中や腰をこすってやる。最後は後ろ向きのまま抱き寄せて、
両手で乳房を可愛がった。ちょうどよい大きさのふくらみが、町之介の掌のうえで心地よくはずんだ。お菊は目を閉じて
町之介に背中をあずけ、甘い声をもらしはじめる。
町に介はお菊の下腹へ右手をすべりこまれた。草むらの下方のやわらかな沼地が、にじみ出た液をあふれさせて町之介の
指を迎えいれる。同時にお菊は手をうしろにのばして、堅くなった男のものをとらえた。指をからませて、うっとりとした
表情になる。
この本には、上記の他に◆ 蔵の中 ◆ 隠居の恋
◆ ひたむき ◆ 廻し祝い
などの作品が収められている。