能『班女』 (ハンジョ)    セルリアン・タワー能楽堂     2001/12/9

 高校の同級生・芦谷民枝さんが能『班女』を演じるというので、在京の同窓仲間と観にいった。 場所は4月にオープンしたセルリアン・タワー能楽堂(渋谷)。駅から徒歩5分ほど、初めて 行ったが素晴らしい能楽堂(地下2F)だ。

 芦谷さんは、津田塾大学で邦謡会を入会し45周年の記念大会だという。この日のプログラムは、朝9:30から夕5時まで能・素謡・仕舞・舞囃子など15の演目が並んでおり、 能『班女』はその中の主演目だ。演じる人はアマチュアだが、プロの人たちも応援している。 芦谷さんの班女の地謡(10人)と笛・鼓の演奏はプロ、その中でも鼓の曽和博朗氏は人間国宝の名人。そんなプロを バックに従えて、シテ(主人公)を演じるのだから本当にたいしたものである。

   (能のあらすじ)吉田少将(ワキ:宝生閑)が東国の任地へ向かう途中、岐阜野上の宿で遊女・花子と 契り、愛の誓いに扇を取り交わす。花子(シテ:芦谷民枝)は少将を恋こがれ扇を抱き、勤めを怠るためとうとう遊女宿を 首になり、狂って京へ流れてゆく。(宿の女将:芦谷志麻子)
 東国から京へ戻る少将が宿に立ち寄るが、花子は行く方知らず。京に戻って下賀茂神社に参拝し、 そこで偶然に少将との再会を祈願し狂い舞う女の姿をみつけ、もしや花子ではと家来に扇を確かめさせる。 扇が確認され、二人は再会を喜び合う。

   「班女」は昔の中国皇帝(漢の武帝)の妃。帝の寵愛を失った彼女は、秋になると捨てられる夏の扇に わが身を例えた詩を作ったという。

 アイ狂言で宿の女将を演じるのは民枝さんの次女・志麻子さん。母娘が同じ舞台を演じるとは、 なんとも羨ましいことだ。
 私は能に詳しいわけでもなく、深いところはよく分からないが、素晴らしい演技だったと感動した。 鼓・笛の伴奏も迫力があり、能を盛り上げていた。

 一つ前の演目は素謡『大原御幸』。安徳天皇と平家が壇ノ浦の戦いで敗れた悲劇を題材としたもの。