阿修羅展                2009/04/26               トップへ


阿修羅展を見てきた。(上野、国立博物館)
展示会場の平成館の前には、長い行列。「あと何分待ち」という看板を持った整理員も。

  

国宝・八部衆像と国宝・十大弟子像(6体)が奈良興福寺から出開帳されていた。
最後のブースに置かれた「阿修羅像」は、高い台の上に、周囲を時計回りに回りながら拝観出来るように置かれていて、
たくさんの人が、静かに移動しながら、像の姿に魅入っていた。

  

阿修羅を含めた八部衆像は、仏教を守護する「天」で、もとはインドの神、仏教に取り入れられて守護神になった。
三面六臂の阿修羅、鳥頭の迦楼羅(カルラ)、一角を生やす緊那羅(キンナラ)など、いかにもインドの神らしい変わった姿だ。

  

脱活乾漆造(ダッカツカンシツヅクリ)という麻布を漆で何層も塗り固める技法で作られている。
天平時代(8世紀)にこのような像を作る技法があったことに感心する。
また、当時の技工が、インドの神の姿をどうやって知ったのかと不思議に思った。

十大弟子像は、釈迦に従った十人の高弟たちの像で、いわゆる「お坊さん」の姿をしていた。
一人一人の顔はとても写実的で、個性的なのだが、紀元前6世紀頃(天平時代からさらに千年昔)の人の姿・顔を どうやって再現したのか、
モデルは誰なのか、これも不思議だ。

阿修羅の三つの顔は、正面の顔が一番良いと思った。
真直ぐに見つめた眼にとても惹かれた。



NHKの番組「プロフェッショナルー仕事の流儀」を見た。
阿修羅立像を奈良興福寺から上野国立博物館まで輸送する仕事を引き受けた、海老名和明氏(62歳)の文化財輸送の仕事振りを取材したものだ。
脱活乾漆造(ダッカツカンシツヅクリ)という技法で作られた繊細な千年以上前の仏像の輸送を引き受けた男。
普段の仏像輸送に加え、幾つもの工夫を新たに考え出し、輸送を成功させた。
木の箱に変えて、アルミの箱、六本の腕を支えるアルミの支持など。
輸送トラックの振動を極限まで抑える工夫。



妥協を許さず未知の領域に挑むプロフェッショナルの仕事と、完遂させた時の爽やかな笑顔が印象的だった。


阿修羅展の前に、上野奏楽堂(旧東京音楽学校)で、パイプオルガンの演奏を聴いた。
毎日曜日に、東京藝術大学の学生さんが、パイプオルガンやチェンバロの演奏を行う、
日曜コンサート(無料)が行われている。
古い楽器の柔らかい音色が心を癒してくれる。

  

見学の終わったあとで、仲間と駅構内のアイリッシュバーで一休み。ギネスビールが美味しかった。