俳句鑑賞文(復刻版)    2017 April        トップへ   




(4/30)

大楠や天上に良き若葉風   孝之

巨大な楠の枝にも新芽が出始めて緑に耀き、風にそよいでいる。
若葉は風を味わい、風は若葉を励ましているようだ。
中七天上に良きの措辞で天にも届きそうな楠の大きさが目に浮かぶ。
若葉風の季語と響き合って実に爽やかな印象を与えてくれる。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしい鑑賞有難うございます。
北野さんの鑑賞のお句の若葉風を頂いたようにも思います(笑)。
若葉風の季語は5月までとっておくべきでしたが、4月末のいい季語がなく早詠みとなりました。



百花あり津軽に猛く春来たる  つしま いくこ

東北・北海道の春は遅いが、時期が来ると春を待ちかねた花々が一斉に咲き始めるという。
それはまるで早コマ送りの映像を見るように次々と怒涛の勢いで咲き競うのだ。
一時に咲く様子を百花と措辞しさらに猛くと詠んだところが実に素晴らしい。
(お願いがあります。句の後に俳号/名前などを書くようにして下さい。
他の方の書式をご参考に)

つしま いくこ ありがとうございます。
津軽では梅もチューリップも水仙も、一気に一時に咲きます。
その爆発的な様子を描きたくて作りました。 受け取っていただき嬉しいです!
俳号と番号、了解です。ご指摘ありがとうございます。





(4/29)

幸せを丸めるおみな蓬餅  のどか

老婦人が蓬餅を作っている。蒸したもち米と蓬の葉をボールに入れて擂粉木で丹念に撞く。
丸める時に小豆の餡を中に。漉餡に違いない。一心に丸めるのは誰に食べさせるためだろうか。
幸せを丸めるという措辞に痺れた。

大関博美 北野さん。ありがとうございます。とても嬉しいです。





(4/28)

液晶の焼け焦げさうな躑躅かな   孝之

真っ赤な躑躅が咲いていて見とれ思わずスマホで撮影した。
燃えるような赤い花、液晶の画面も焦げるように輝いている。
液晶の焼け焦げさうなの措辞・形容がお手柄だと思った。

原孝之 北野さん、有難うございます。
皆様の琴線に少しでも触れる表現が出来たことが歓びではないでしょうか?
有難いことです。



風吹けば満天星の花りんりんと  祐

満天星の白い花が咲き始めた。この花は鈴蘭のような釣鐘型だ。
風が吹けば、りんりんと鳴りそうだと詠者は想像した。
私も花の鳴音を聞いてみたいと思った。






(4/27)

今日からが天職であれ朝雲雀  つしま いくこ

いくこさん、初めまして。一日一句互選に頂きます。
晴れた日の朝、雲雀が高い空で元気に囀っている。
雲雀さん、それがあなたの天職よ。思う存分鳴きなさいよ、と詠者は応援している。
青い空と雲雀の鳴き声、春爛漫を感じさせる句だ。

つしま いくこ 過分なおほめの言葉、ありがとうございます。
ものすごくうれしいです!
能美顕之 互選にいただきます。朝。新しい仕事か、現在の仕事か、
どこか不安で満たされない気分で、また1日が始まる。空を仰ぎ深呼吸。
雲雀がすーっと自由に空を渡っていく。その広い景に何か心ほどかれる。
まっさらな一日に一歩を踏み出す作者。その足取りはたくましい。
「天職であれ」という中7が素晴らしい。大好きな一句です。



たんぽぽの絮や行く先決めぬ旅  美音

たんぽぽの絮が春風に乗って飛んでいく。
どこへ飛んで行くのかは風まかせ。特急券も指定席もない。
そんな寅さんのような旅をしてみたいとの詠者の願いが見えるように感じた。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます。嬉しいです。





(4/26)

喰うて死ぬことも本望菜種河豚   征一

季語の菜種河豚とは、菜の花の咲く頃が毒の一番強い河豚は
喰ってはいけないという一種の禁忌だと初めて知った。
だが九州では「がんば」と言い珍重するという。
きっと脂が乗って一番美味しい時期なのだろう。
詠者はそんな美味しい河豚なら喰って死んでも本望だと開き直っている。
よほどのグルメなのだろうか。

小出有紀 互選に選ばせていただきます。菜種河豚、初めて知った言葉だ。
美味しいものを食べる。好きなことをする。充実の時間を過ごす。
これからは後悔したくない人生を送ろうと思っている胸中を存分に痺れさせていただいた。
今村 征一 北野さん小出さん御選句並びに素敵な鑑賞有難う御座います。



縦書きの手紙したため花水木   直美

先日地元の句会で同工の句〈葉書まだ縦書きにして花便り〉に出会った。
パソコン、スマホの時代となり横書き文書が多い中で、詠者は縦書きに拘っている。
世の中に迎合せず自分は自分の時代を生き抜くという矜持なのだろう。
その覚悟が潔いと思った。

高井 直美 北野さん、ご選句とご選評をありがとうございます。
普段はメールばかりですが、姑と両親はメールが使えません。
おかげで時折、葉書や手紙を書いています。時代に迎合せず矜持を保っているのは、
実は姑と両親なのかもしれないと、北野さんのご選評を拝読しながら感じました。
素敵なご選評を頂いてとても嬉しいです





(4/25)

ジーンズに少し小さき春日傘  祐

句を読んだ瞬間にモネの〈日傘の女〉と松田聖子の〈白いパラソル〉を思い浮かべた。
モネの絵の女はロングスカートを履いている。
だが詠者の見た女?はジーンズを履いているところが如何にも21世紀らしい。
彼女の日傘はどんな色だったのだろう。

原孝之 おはようございます。「一日一句互選」に頂きます。
軽快なるジーンズの女性。しかし、お肌には気をつけて少し小さめの日傘を差して颯爽と歩いて行く。
活動的な女性ですら、お肌には人一倍気をつけているのだと感嘆するばかり。
牧内 登志雄 原さん、北野さん、互選にお選びいただきありがとうございます。
よく浅草に行きます。寄席であったり、神谷バーであったり、ほおずき市。もちろん浅草寺へのお詣り。
浅草も最近は外国人の姿がやたらと目立ちますが、ピチピチのジーンズを穿いた、
ちゃきちゃきの若い女の子が白い日傘をちょいと傾げて人混みを縫っていく。
こうしたちょっとアンバランスな光景が浅草の面白さだと思います。



墓詣で迎ふる山につつじ燃ゆ  晶子

詠者が墓詣に出かけられた寺を取り巻く山は燃えるようなツツジに囲まれていた。
亡くなられた方々の魂が燃えているのかも知れない。
ツツジを見ながらご先祖の魂に祈りを捧げられたのだろう。

畝川 晶子 北野さん、ご選句をありがとうございます!
冬場は寂しい墓地も燃えるようなツツジの赤で、詣でる側だけでなく
故人も喜んでいるような気がします。素晴らしいご鑑賞をありがとうございました





(4/24)

山吹や一人ぼつちのわらべ歌   孝之

一人ぼっちの子供がわらべ歌を歌っていて、傍らには山吹の花が咲いてきた。
友達がいないのか、鍵っ子なのか。山吹は一重か八重か。
句の全体からは寂しい気分が伝わってくるのだが、山吹の黄色が希望を与えてくれそうだ。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うごさいます。
太田道灌の山吹伝説を何とか違った形で句に出来ないか?考えていました。
この山吹の咲いていた地名が福童という場所なのです。
実は、高校の陸上部の顧問の先生(故人)のお宅の側でもあります。
わらべ歌はその地名から来ていて、一人ぼっちの少女は
太田道灌が出会った娘(少女)を想像しました。
牧内 登志雄 互選にいただきます。眩しいほどにボリューム感がある
黄金色の山吹の花と、「一人ぼつち」のわらべ歌の対比がとても鮮やで、
一人ぼつちでも決して孤独ではない雰囲気が伝わってくる句だと思います。
原孝之 牧内さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うごさいます。
お二人の読み手の鑑賞は作者の想像を遥かに超えております。



船頭の手繰る竹竿糸柳  寛昭

墨堤の景色と読ませてもらった。猪牙舟の船頭が竹竿を操り、
岸辺には糸柳の新芽が風にそよいでいる。
舟の客は誰だろう。花見は過ぎたから根津権現のツツジを見に行く人か、
はたまた小梅村の別宅へ向かう商家の主人か。
まるで浮世絵版画のような景色が思い浮かぶ。

小出有紀 互選に選ばせていただきます。
水墨画のように実直で余白が心地よい。竹竿が「糸柳」とされてるのも惹かれた。
逼迫感がないので、春のまったりした雰囲気にそこはかとなくあっている。
古閑 寛昭 北野さん、有紀さん、ありがとうございます。素晴らしい鑑賞嬉しく思います。





(4/23)

新緑や同行二人朝の駅  藤倉浩正

同行二人とは四国八十八霊場の遍路のこと、お大師様と共に歩くという意味である。
新緑の候に朝の駅を出立してその日の遍路を歩き始めることを詠んだのだろう。
(少し辛口の鑑賞となるが)私は八十八霊場を二周歩いた。延べの距離は2千キロ位だろうか。
四国の南半分の鉄道はとても貧弱だ。また遍路宿に泊まり翌日の行程を歩き始める時、
鉄道の駅を使うという機会は殆どないと言っても良い。従って下五朝の駅は現実味が薄い。
そうは言っても遍路の句とあればとても共感するので頂いた。
(追記)詠者は第三者で朝の駅でお遍路をする人を見かけたと読むことも出来る。
自分にも暇ができればお遍路を歩いてみたいと思ったことだろう。

藤倉浩正 北野 和良 さん ありがとうございます。



羽衣をふはりかけたり山桜   玉有良

羽衣とは鳥の羽で作った薄く軽い衣で天人はこれを着て自由に空中を飛行するという。
羽衣伝説は各地に残っているが、脱いだ羽衣を掛ける木と言えば松の木が定番だ。
詠者は咲き誇ろ山桜を見て、天女が羽衣を掛けたようだと見た。
山桜の意外性が生きている。

小出有紀 北野さん、ありがとうございます(^-^)/嬉しいです。
養花天、花曇などの季語を知って以来、幻想的なモノとの組み合わせが
絵になることを発見しました。共感してくださり嬉しいです(*´∀`)





(4/22)

春の山登山電車もフルパワー   孝子

中七登山電車で立山黒部を思い浮かべた。
雪の回廊も開通し、たくさんの観光客が押し寄せているだろう。
客を乗せた登山電車、ロープウエイがフルパワーでフル運転に違いない。




陽光でほほに紅さすチューリップ   久美子

明るい陽射しを浴びて花開いたチューリップ。
中七のほほに紅さすという措辞が花を優しく見ている詠者の気持ちをよく表している。
こんな写真のイメージではないだろうか。



山田久美子 北野様、互選と素晴らしい鑑賞ありがとうございます。
母の形見になりましたチューリップが、2年目にしてようやく花開こうとしていたのを見て、
チューリップがほほに見えて詠んだ句です。とても嬉しく、今後の励みになります





(4/21)

黒板の微分積分目借時   草民

数学の苦手な学生には、微分積分の教師の声が子守唄に聞こえるのだろう。
季語目借時の斡旋がとても上手だと感じた。

山野辺 茂 北野さん、ありがとうございます。



風光る乳房の丸み確かめつ  祐

鑑賞のとても難しい句だと思う。
季語風光るはうららかな春の日(昼間)を指しているが
中七下五では突然エロスの香り全開だ。さらに確かめている人物は誰なのか。
女性が自分自身を確かめているのか、はたまた男が恋人の乳房を確かめているのか、
ヒントは一切ない。詠者が女性になりすましているのでなければ、
何とも羨ましい光景ではある。

牧内 登志雄 互選にお選びいただきありがとうございます。
「女性になりすまし」というのは面白い読み方だと思いました。
春のうららの日に自らの乳房を確かめている女性を詠んだ句です。
来月に子宮の施術を控えて、女性の象徴である乳房の丸み感触を確かめている。
ただ、素直に読めば「何とも羨ましい光景」であることは間違いなく、
そのような読み方でも楽しいと思います。
若い頃に付き合っていた女性が乳がんの手術をした冬の寒い朝を思い起こして
「右乳房メス入れる日の薄氷」と詠んだことがありましたが、
これは完全に女性が読んだ句として受け取られてちょっと戸惑った経験がありますので、
もう少し詠者の視点を明確にした句を作っていきたいと思います。





(4/20)

再会の名残り尽きまじ花は葉に  栄太郎

揚句の前書きに<旧友と妙心寺にて再会>とあるので、情景は明白だ。
私事だが昨日昔の会社の仲間の同期会があり、一年ぶりの近況報告で盛り上がった。
お互いの健康を喜び昔話に時の経つのを忘れた。とても共感の一句です。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、
嬉しいコメントもお寄せいただきまして大変有難う御座います!!。
小生は33年前、東京の百貨店の外商担当から大阪の百貨店外商へ
と転勤となり、机を並べていた後輩の同僚です。その後、
お互いに退職後も年賀状などの交流がありましたが、彼は自宅で商売もはじめ、
小生は京都住まいの為普段はあまり交流が有りませんでした。
先日十数年ぶりに電話があり、「娘が京都の妙心寺の近くに居るので遊びに来ている。
時間が取れれば会いたい」との事で再会を果たし、昔話と想い出の花が咲きました。
やはり年賀状であっても音信を取り合う事は大切ですね!!。
北野 和良 桑本さん、そういうご事情だったんですね。
私にも京都へ行く機会があればぜひ妙心寺のご案内をお願いします。



押し上げる空の高々花水木   正則

咲き始めた花水木を詠んだ句がいくつも出てきた。野島さんのこの句では、
ハナミズキのたくさんの花が空を高々と押し上げていると詠んだ。
花はピンクか白か? そしてその後ろに明るい青空が見えてくる。

野島 正則 北野さん、選に、句を引き立てていただける
鑑賞をいただきありがとうございます。





(4/19)

一斉に色めくけやき穀雨来る   孝之

穀雨の候、ふと見上げると欅の新芽が一斉に伸び始めていた。
裸木となり冬をじっと耐えてきた枝に命の芽吹きが緑に輝いている。
一斉に色めくという措辞がけやきの活力をよく伝えている。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
福岡市のけやきがつい先日まで枯木だったのが緑になってきました。
その生命の息吹に感動しました。折しも穀雨の時でした。



きりしまの深紅に思ひ出す恋も   顕之

霧島ツツジは1.5mほどにもなり、深紅の花は実に見事で生命力に満ちている。
詠者はこの花を見て、過ぎし日の恋の情熱を懐かしく思い出しているのだろうか。
(写真は笠間つつじ公園にて)

能美顕之 北野さん、選をいただき嬉しい観賞をありがとうございました!
お寺の境内にきりしまがあるのですが、初恋の人が遊びに来てくれた時、
名前を聞かれて答えられなかった思い出が甦りました。





(4/18)

ゆつたりと時間流るる花の宿  亜仁子

花の宿(季語)は、花の咲いている家或いは宿所を指す言葉だ。
詠者のいる花の宿にはゆったりと時間が流れている。
いつまでも今の状態が続いて欲しい、それが一番幸せだから。
優雅な雰囲気と語のリズムがとても良い所に惹かれた。

Aniko Papp 選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、ありがとうございます。
とても嬉しいですね。また、桜の咲いているとき来日致したら、花の宿にお泊りしたいです。



わが内の海原さへも春の色  直

詠者の心には海原があり、それは春の色に染まっているという。
厳しい冬を過ぎ春が訪れると誰しも心がウキウキし未来への期待に胸を躍らせる。
そのワクワクする春が心の海原にもさざ波を立てるのだろう。

大津留 直 北野 和良 さん、ありがとうございます。
本日この句から「わが内の海原さへも春の色なしてさざなみひたに穏けし」
という歌を作ったところでした。
北野 和良 大津留さん、私の鑑賞はほぼ的を射ていたということですね。嬉しいです。
大津留 直 北野 和良 さん、びっくりしました。
北野 和良 大津留さんの海原が私の海原とつながっているのかも知れませんね(笑)
大津留 直 この俳句大学のメンバーは一つの海原で繋がっているような気がしています。





(4/17)

武者返しだけは崩れず残る花   孝之

武者返しとは熊本城で初めて出現した城の石垣の曲線傾斜のこと。
加藤清正が大阪での地震で石垣が崩れたことに対する工夫として作り出したとTVで見た。
私の故郷の姫路城の石垣もこの工法を採用している。
一年前の大地震でも武者返しの石垣は崩壊を免れた。
今花の時期が終わろうとしているが、桜も石垣に良く耐えたねとエールを
送っているのだろう。中七から下五への残るの措辞が橋渡しをしているようで面白い。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
昨日のNHKの番組は感動しました。サムライの知恵、
とりわけ加藤清正の編み出した武者返しは地震予防策だったということに驚きました。
武者返しは普通、侵入を防ぐためとしか思えません。
それが、地震から守るためのものだったということですね。
姫路城と云えば、黒田官兵衛による築城かと思いますが、
清正といい、官兵衛といい智の殿堂のような侍ですね。
北野 和良 原さんもTVを見られたのですね。
あの時代の武将たちが緻密な工学を実践していたことに驚きました。
永田 満徳 私も見ました。先人の知恵を継承することは大切ですね。
原孝之 永田先生、こんばんは。明治の改修の石垣が殆ど壊れていましたね。
温故知新ですね。コメント有難うございます。



春寒しセール価格の仏花かな   玉有良

詠者は仏花を買おうとしてセール価格(値下げ?)になっているのに気がついた。
奇しくも私は今日墓参のため霊園へ出かけ、売店で仏花を買おうとして、
一年前よりかなり値上がりしているのに気がついた。
だが、他に売っている場所すら無いので黙って払うしかなかった。
霊園は高所のため数百本の桜並木は満開でお花見をする人たちもたくさんいた。
花見のお礼を払ったと思えば、それはそれでいいかと・・・

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
仕事場のひとつが東山なので大谷祖廟ならびに、東大谷墓地があり、
よく見かける光景なのですが、さすがに仏花が安くなってるのは初めてみましたΣ(゜Д゜)
実際には夏日で半袖で歩いていたけれど、これは「春寒し」しか思いつかなかったです





(4/16)

姉妹して競ゐて笑ふしゃぼん玉   久美子

小さな姉妹が二人でシャボン玉を吹いている。
ほら、わたしこんなにたくさん! お姉ちゃんわたしの方がこんなにいっぱい!
笑い転げる姉妹を優しく見ている詠者の愛情が浮かんでくる。

山田久美子 北野様、互選と素晴らしい鑑賞ありがとうございます。
今のしゃぼん玉は売り物ですが、昔は自分で作りました。幼き時の思い出です



的を得た質問ばかり八重桜  孝之

向瀬美音 互選に選ばせていただきます。
おそらく原さんが初めて取り合わせに挑戦したのだろう。
授業の様子と八重桜をぶつけたと想像する。
距離感を知るためにもう少し背景が知りたい。
原孝之 美音さん、こんばんは。ご選句とご鑑賞有難うございます。
八重桜の花言葉は「教養がある」とのことでした。
昨日、同僚の先生が質問攻めにあったらしいのですが、
結構的を得た質問ばかりだったそうです。キャンパスに八重桜が満開となり、
教養ある学生を育てたおものだと思った次第です。
北野 和良 原さん、私も一日一句互選に頂きます。
八重桜で女学生とピンときた。熱心な教師と真面目な新入生とうイメージが浮かんだ。
原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句とご鑑賞有難うございます。
花言葉からイメージするのは例がたくさんあるでしょうね。





(4/15)

肥後へ向かい黙祷をする花すみれ  紀宣

菫の花が咲き始めた。花は少し頭を垂れてまるで肥後に向かって黙祷をしているようだ。
巨大地震から一年、まだ復興半ばの肥後国。菫も早い復興を祈っているのだろう。
花に託した詠者の気持ちに共感した。

つちたに jt 純一 北野さん、ありがとうございます。とてもうれしいです。



頤のうすき翳りや紫木蓮  祐

紫木蓮の花びらは根元の方が少し濃い色となっている。
それを頤のうすき翳りと措辞したところは花を良く観察した結果だ。
だが私には詠者の隣に佇む女性の姿が浮かぶ。
彼女の頤のうすき翳りを感慨深げに見ている詠者の目。

牧内 登志雄 北野さん、互選にお選びいただきありがとうございます。
なんだか、すっかり読まれてしまっていますね。
白い木蓮より紫木蓮には大人の色気があって好きです。
同時にそれは背徳の儚さを抱えていて、それが翳りとなっていますね。





(4/14)

白魚よ淡い光のむれ動く  勉実落

白魚漁の季節である。船の上から海面を見ると
無数の白魚が群れ淡い光が動いているように見える。
今年は豊漁できっと舌を楽しませてくれそうだ。 光のむれ動くの措辞が新鮮だ。

佐野勉 ありがとうございます。つづきです。鎮まれば落花の庭の薄き灯に 勉実落



サラサラの花びら撫でる石畳   孝之

花吹雪となった桜の花びらが石畳の上に舞っている。
花びらが石畳を撫でるという措辞が面白い。
オノマトペのサラサラは撫でるを修辞していると思うが、
上五はサラサラとの方が直裁的で分かりやすくはないだろうか。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
「サラサラと」に推敲しようかとは思いました。「サラサラの」にすると
乾ききった花びらの感じが出ます。どちらもありかと思いました。





(4/13)

定期券ぎゅっと伸ばして新入生   幸

新入生は定期券(パスケース)を落とさないように長いゴム紐で首から掛けるよにして、
改札を通る時、ゴムをぎゅっと伸ばして器械に当てている。
そんな様子を正確に描写した句に感心した。新入生頑張れ、と応援したくなる。

 お目に止めて戴きありがとうございます
電車通学していたちび達も父となり電車通学の小学生に重なり合う風景になりました。



入園児帰るあいさつ「しゃようにゃら」 双葉

新しく幼稚園(保育園)に入った幼児はまだ言葉・発音も幼い。
それを「しゃようにゃら」と措辞したところが詠者の発見だ。
幼児に対する愛情の溢れた句だと共感した。

新名勝之 ありがとうございます。
自分の想像に素直に描写できたと思っています。





(4/12)

クレヨンのサクラ色減る花盛り   夢酔

幼い子供が写生をしている。大きな桜の木が満開だ。
子供は画用紙いっぱいに桜の木を描き花びらをサクラ色で塗りつぶす。
クレヨンのサクラ色だけがどんどんと減っていく。
懸命に絵を描いている子供の姿と満開の桜の木が鮮やかに浮かんでくる。

室木 助樹 御選句ありがとうございます!



ちゃうど良き式の記念や花盛り  栄太郎

詠者は親戚の結婚式に出席されるために出雲路に行かれたようだ。
式も滞りなく終わり、帰路どこかの高台から宍道湖を眺めると
菜の花畑が広がり桜も満開を迎えていた。
後々になっても満開の桜を見るたびにこの日の目出度い式のことを
思い起こすことだろう。詠者の喜びが溢れた句だ。






(4/11)

花の雨更地以前を忘れたり   草民

いつも通る道だが、ある日ふと見ると建物がなくなり更地になっていた。
はてここにはどんな建物・店があったのかと思いだそうとして思い出せない。
季語花の雨の斡旋が妙を醸し出している。

原孝之 こんばんは。「一日一句互選」に頂きます。
更地になる前にはビルがあった東京のとある町。更地になって久しいのか?
前にどんなビルがあったのか?人間の記憶はそのようなものだ。
更地には、花びらが積もっている。更地になったことを花びらが教えてくれたのだ。
移り変わる東京を切り取ったとも言える。
山野辺 茂 原さん、北野さん、ありがとうございます。
最近、また都内は空き地が増えてきたような気がします。



地震の地に槍を構へて花の像   満徳

熊本城にある加藤清正片鎌槍像を詠んだ模範的な写生句である。
下五花の像と措辞したことで、像の傍らに満開の桜が浮かび上がってくる。

永田 満徳 選んで頂きありがとうございます。
清正公像は熊本城を見守る形で建っています。その気持ちを詠みました。



(4/10)

桜咲く客は満開花は五分   久美子

TVのニュースには毎日桜咲くが伝えられている。
桜の咲くを待ちかねたように人々は花見に出かける。
詠者の見た場面では花はまだ五分咲きなのに公園は花見の人々で埋まっている。
花見客と咲き具合との対比、客は満開の措辞が句を引き立てている。

山田久美子 北野様、ありがとうございます。
客の満開 表現に迷ってましたので、とても嬉しいです



咲き極め散る気さらさら無き桜   征一

この句は一見すると満開の桜、まだまだ散りそうにない桜花と読める。
しかし如何に見事に咲こうともいつか散らない桜など無いことを人間は知っている。
そこまで考えると、組織の頂点で権力を誇り
有頂天になっている人を揶揄しているようにも読める。
慢心し散る気はさらさらないと威張っていても、いつか花は散る運命ですよと。

今村 征一 北野さん御選句並びに感想有難う御座います。





(4/09)

珈琲をすこし濃くして桜雨  祐

下五桜雨は咲いた桜を散らすような雨という詠者の造語だろうか。
全国に満開の知らせを追うように雨が降り出し、
はや花が散り始めてしまうのかと気が気ではない。
そんな日は少し濃い目の珈琲が良いと豆を多めにして挽いた。
珈琲の好きな私にはとても共感できた句だ。

牧内 登志雄 北野さん、ありがとうございます。
「桜雨」は季語にはならないと思いつつ、下五に置いてみました。
午後の珈琲はグァテマラを少し濃くして淹れてみました。





(4/08)

陽の光ミモザの花は金の雨  亜仁子

明るい陽射しの中にミモザの花が咲いている。
黄金色に輝く花はまるで黄金の雨のように見えた。
詠者の感動を金の雨と措辞したところにとても共感した。

Aniko Papp 選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、ありがとうございます。
とても嬉しいですね。ハンガリー語では、ミモザの花が「金の雨」と呼ばれています。
北野 和良 亜仁子さん、ハンガリーの方は想像力の豊かな方なんですね。
勉強になりました。ありがとうございます。
Aniko Papp ありがとうございます。私もそう思います。
一番有名なハンガリーの詩人の一人であるArany Janosは例えば、
「髭」を「男の羽」と呼びました。



星ひとつ燃えつきて咲く白木蓮  Takashi Nakamoto

中本さん、初めまして。見上げると白木蓮が白く輝くように咲いている。
この花はきっと遠い宇宙の星の一つが燃え尽きて生まれ変わったのだろう。
壮大なファンタジーを詠んだ句に驚き感動した。

牧内 登志雄 白木蓮、紫木蓮、いずれにしてもイメージ的には静かな
佇まいの咲き方だと思ってきたが、この句に出会って吃驚した。
まさか「星ひとつ」が「燃えつきて」咲くとは。
木蓮のイメージを一変させた、壮大な句として印象に残る。
Takashi Nakamoto 北野和義さま、牧内さまありがとうございます。
木蓮の花はつかの間の陶酔に浸り、あっという間に燃えつきます。





(4/07)

太閤も聴きし醍醐の初音かな  玉有良

慶長3年、豊臣秀吉が催した醍醐の花見は京都の醍醐寺に1,300人もの女性を招いて催した大宴会である。
醍醐寺では今も花見に人気があり、鶯もやって来る。詠者は鶯の声を聞きつけ、
きっと太閤秀吉もこの鶯を聴いたのだろうと感慨深く振り返っている。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
ちゃんと境内を回ったのは初めてでしたので、素晴らしかったです(*´∀`)
鶯も今年初めて聴きました。
俳句のネタになりそうなものもたくさんあったので、しばらく醍醐寺ネタが続くと思います



賞味期限切れがどうした春卵  陸沈

春卵を食べようとしたら、賞味期限が切れていた。
それがどうだというのだ。俺は今この玉子が食べたいのだと開き直ったところが実に愉快だ。

緒方 順一 北野さん、ありがとうございます。
春卵はぷりぷりしていて、賞味期限が過ぎたくらいでぷりぷり感は失われない。
すっと口語で出てきた句でした。





(4/06)

早々とあだ名つけられ新入生  紀宣

新学期が始まりクラスの友達も皆新顔同士。
さっそくあだ名を付けられる子供も出てきた。
私は以前こんな句を作った。〈転校生渾名はケンと爽やかに〉。
渾名で呼びあうことで友情は深まっていくのだろう。

つちたに jt 純一 北野さん、互選に選んで頂き、とても嬉しいです。
また、北野さんの素晴らしい句を拝見して、これからの糧にしていきたいと思います。



花びらを背にのせ走る筑紫二郎   夢酔

花筏という言葉があるが、これは緩やかな流れのイメージがある。
揚句は筑紫二郎とあるので大河である。
そこに流れる花びらが果たして目に入るのか不思議ではある。
だが、中七背に乗せ走るの豪快な措辞と大河はよく合っている。

室木 助樹 鑑賞ありがとうごさいますw励みになります





(4/05)

うとうとと花見疲れの車内かな  栄太郎

花見に出かけ、存分に楽しんだ帰路、電車の中でどっと疲れが出て
思わずうたた寝をする。私も今日龍ケ崎市へ樹齢400年の大しだれ桜を
見物に行き帰りは全く同じ状態だった。
幹周り5mの古桜の霊に招かれたのかもしれない。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き
、嬉しい共感のコメントも頂戴しまして大変有難う御座います!!。
阪急京都線の電車の今の時季は、花疲れの乗客のうとうとしている
光景ばかりが目立っています。京都から蛙の目を借りてくるようです。



千枚田斜面うねりて百千鳥  直

千枚田(棚田)は全国にあるが、新潟県山古志村のものも有名だ。
山の斜面に切られた田んぼ、田植え、実り、冬の雪、いずれも印象的な風景だ。
詠者は今春の千枚田を眺めている。春の訪れを喜ぶように小鳥たちの囀りも賑やかだ。
中七斜面うねりてが実感を伝えるおっきな景の句だ。

大津留 直 北野 和良 さん、ありがとうございます。
ご丁寧な鑑賞、大変うれしく拝受しました。





(4/04)

陽も笑ふやうに輝く春休み  亜仁子

春休みなり、子どもたちは公園の広場で楽しそうに走り回り笑い声が絶えない。
その光景を見下ろす太陽の明るい光はまるで太陽が笑って見ているように思える。
子どもたちを見守る詠者の優しい眼差しが見えてくるようだ。

Aniko Papp 選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、ありがとうございます。
とても嬉しいですね。



清明や水辺に遊ぶ風のあり  祐

北野 和良 一日一句互選に頂きます。水辺に遊ぶ風の措辞が素晴らしいです。
小出有紀 互選に選ばせていただきます。
「水辺に遊ぶ風」はさざ波を起こしてるのだろうか?
主語を変えるだけで、印象を変えることができる言葉の面白さを再認識させられました。
牧内 登志雄 有紀さん、ありがとうございます。
原句では「さざ波」としたのですが、あまり直截的なのでいろいろと推敲してみました。





(4/03)

不揃ひの二礼ニ拍手新社員   正則

桜の頃に神田明神にお参りしたことがあり、
その時どこかの会社員が団体で参拝するのを見た。
新入社員を引き連れて商売繁盛を祈りに来たのだろう。
新社員はまだ社会に慣れておらず二礼二拍手もたどたどしく不揃いだ。
腹の中では今時神頼みをしてもお利益があるのかと疑っているのだろう。
だがそうやって段々と会社の方針に従う社員に育ってゆくのだ。
客観を貫く見事な写生句だ。

野島 正則 北野さん、選に、鑑賞をいただき、ありがとうございます。
神田明神は確かに、会社の団体のお参りが多いですね。



花衣千鳥ヶ淵の身の火照り  美音

詠者は恋人と千鳥ヶ淵へ夜桜見物に来ている。
ライトアップされた桜は暗い空に白々と浮かぶようだ。
そして夜桜の終わった後の第二ステージを思うと自ずと身が火照って来る。
美音さんお得意の女性らしい情念の籠もった好きな句だ。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます。嬉しいです。





(4/02)

一献が二献三献野蒜味噌  俊彦

山菜の野蒜を摘んできて味噌和えにした。
これが酒によく合う。一献が二献、三献となり酔も進む。
ああ、春の味はこれに尽きるなあ・・・・

鎌田 俊彦 北野さん、お読み取り有難うございます。



つばくろの切り返しては水の際  祐

燕の飛翔はスピードもあり、反転も鋭角だ。
佐々木小次郎が燕返しの秘剣を会得したのもこれをヒントにしたのだろう。
水面スレスレに虫を狙って飛ぶ燕の姿が鮮やかに詠まれている。
まるで動画を見るように感じる句だ。

牧内 登志雄 北島さん、ありがとうございます。
元気に飛び回る燕、カッコいいですね、。





(4/01)

口づけをせがむ恋人花辛夷   玉有良

花辛夷が上を向いて大きく開いている。
それはまるで口づけをせがむ恋人のようだ、と素直で直裁的な句だ。
詠者はきっと花辛夷に自分の思いを重ねているのだろうか。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
残念ながら私はそんなに甘くありません(笑)。二人きりになったらわかりませんが……
能美顕之 互選に頂きます。何とも艶っぽい一句。
こぶしの白さが純粋な男女の恋を引き立て、17音より清潔な景が伝わります。
懐かしいな、と個人的に記憶に浸りました。
大好きな句。ありがとうございました。



宣誓の証人放語四月馬鹿  太三

さる事件で片方の人物が国会に証人喚問され、宣誓の上で証言をした。
だが相手方はそんな事実は存在しないと否定し、挙げ句の果ては
偽証罪で訴えることを言い出した。神聖な国会という舞台ながら
傍聴人の国民には事実は全く藪の中。国民を馬鹿にするなよ〜

増田 泰造 コメントありがとうございます