俳句鑑賞文(復刻版)    2017 March        トップへ   




(3/31)

どこまでが雲どこまでが花の陰   美音

日本画を見ているような気がした。
雲が浮かんでいる、その前に桜が大きな枝を広げ咲き誇っている。
薄い桜色と薄い雲ははっきりとは見分けられない。
桜はやはり日本人の花だなあ・・・・

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!嬉しいです!



雪形を野帳に記す林野なか  勉実落

詠者は林野の中から雪形を野帳に写生しているようだ。
雪形は山岳の谷などに残った雪のことで、その形を動物に見立てたりする。
雪形がある形になれば農作業を始めると聞いたことがある。
今年もそろそろ種まきの時期が近づいた。

佐野勉 ありがとうございます。季節が移ると雪形は農鳥になるようですね。
富士の南麓から、農鳥がみられます。まだですね





(3/30)

しづやしづ哀しき春をうたひまひ  勉実落

静御前が、義経を想って舞った時の歌、
「しづやしづしづのをだまき繰り返し昔を今になすよしもがな」
が下敷きになった句と読んだ。
古歌につられてとても優美な雰囲気とリズムが伝わってくる。
哀しき春が情緒を盛り上げている。

佐野勉 ありがとうございます。静御前の舞うシーンは心に残っています。
鶴岡八幡宮に花見に行くたびに、いにしえの春の哀しい恋を思い出します。



巣作りの主はマニアの人気者  孝之

春は小鳥たちの巣作りの季節。揚句では巣作りの主を具体的に述べてはいない。
読者に自由に想像して下さいということか。私は燕を想像した。
だが詠者は別の欄で写真を添えていてそれはキツツキの巣のようだ。
ここまで来ると句の後半マニアの人気者の措辞が具体的なイメージを展開する。
鳥ファンの中にはきっとキツツキ命の人も居るのだろう。

原孝之 北野さん、おはようございます。
ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。昨日、キツツキファンの先輩が来られました。
昨日は天気が悪く暗い写真しか撮れなかったので出直しされるようです。





(3/29)

甍には伊達の紋章囀れり  房子

この句の手柄は、中七伊達の紋章であろう。(私は知らなかったので)
ネットで調べると伊達家の紋章には雀の絵が使われている。
屋根の上で雀が賑やかに囀っている。景色はそれだけだ。
しかし如何にも春先ののどかな様子を、伊達家紋章といかめしく措辞したところが面白い。

熊谷房子 北野さん深く鑑賞していただきありがとう御座います。
鳥達には伊達の紋等関係なく囀ずっております。



深々と空気味わう蛙かな   直美

鳥獣戯画に描かれた蛙は腹を大きく膨らませている。
子供の頃に読んだ絵本には偉さ較べのために空気を吸って
腹を膨らませて競う場面があったように思う。
蛙は腹を膨らませるものだ。腹を膨らませるために空気を吸う蛙は、
空気を味わっているのか? と詠んだところが面白い。
ぜひ学者に聞いてみたいものだ。

高井 直美 北野 和良 さん、おはようございます。ご選句ありがとうございます。
とても嬉しいです(*^^*)素敵なご選評も頂き、ありがとうございます(*^^*)





(3/28)

水滴のつぼみ解きをり紫木蓮  栄太郎

紫木蓮の蕾が開き始めている。よく見ると花びらに水滴がついている。
雨か或いは夜露か。きっとこの水滴に力をもらって花は開いてゆくのだ。
きっと大きく見事な花を見せてくれるだろう。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、大変有難う御座います!!。
小雨に濡れながら、紫木蓮が蕾を解き、白い花びらを見せながら
咲き初める光景を目にしました。感動的な開花です。



連翹の野放図と云ふ咲きっぷり  祐

黄色い連翹が咲き始めている。小さい花が枝いっぱいに広がっている。
行儀良くではなく好き勝手バラバラに。その様子を野放図という措辞で現したところが面白い。

牧内 登志雄 北野さん、黄色く鮮やかなだけに雪柳よりも派手な感じのする連翹ですが、
雪柳と違ってけっこう好き勝手に咲き誇っている連翹がありますね。
自由奔放、勝手に咲かせて!といってるような春の日でした。
小出有紀 互選に選ばせていただきます。
「野放図」という言葉がドンピシャだ! 私も野放図に見合う何かを探しに行こう。
牧内 登志雄 有紀さん、ありがとうございます。
週末までは少し暖かくなりそうなので桜がてら「野放図」探して下さい。
投句楽しみにしています。





(3/27)

春の雨音ふと聞いてゐて自由   顕之

能美さんは互選欄には初めてのご投稿ですね。初めまして。宜しくお願いします。
結句の自由という措辞がいろいろと解釈できる面白い句だと思いました。
詠者が雨音を聞いていることが誰にも邪魔されず自由なのだというのか、或いは
雨音が自由という概念に聞こえたというのか。幅広い解釈を楽しもう。

能美顕之 北野さん、ありがとうございます。
俳句は大好きで細々と楽しんでいます。
ありがとうございます。この句は午後からぽっかり空いた時間に
聞こえてきた音を詠みました。 なかなか余裕のない、普段聞こえてこない、
いつもある声に耳を澄ますこと。大切に思いました。
最初は「春雨の音ただ聞いてゐる自由」としていましたが、
リズムと流れが悪いと思い、推敲しました。
自分ではわかりませんが、いかがでしょうか。メッセージありがとうございました!



花衣恋であつらえ愛で脱ぎ   夢酔

恋をして逢引のために美しい花衣を誂えた。恋は実りいよいよ二人だけの夜となった。
愛し合うために花衣を脱ぐ時が来た。入るときに要らず入らない時に要る風呂の蓋のようだ。

室木 助樹 鑑賞ありがとうございます。
風呂の蓋とは、面白い喩えをw今後の句作の参考にさせていただきますw





(3/26)

餅丸めよもぎの薫る手となりぬ  藤倉浩正

よもぎ餅を手づくりし、一つ一つ丸めていった。
ふと気がつくと手によもぎの香りが一杯。
美味しそうなよもぎ餅の出来上がり。さあ皆で試食しよう。

藤倉浩正 北野 和良 さん ありがとうございます。



羅列する文字のごとくに春の雲  紀宣

のんびりと春の空を見上げていると、小さな雲がたくさん並んでいる。
まるで文字を羅列したような形だ。
詠者には何の文字に見えたのだろうと想像が湧く。

つちたに jt 純一 北野さん、互選に選んで頂きありがとうございます。
とても嬉しいです。また、すごく励みにもなります。





(3/25)

のどけしや金毘羅ふねふねまた負けて   玉有良

茶屋の舞妓/芸妓さんとの遊びで金毘羅ふねふねというのがあると聞いたことがある。
野球拳と同じような趣向だろうか。他愛ない大人の遊びだが勝ち続けるのは案外難しい。
勝ったり負けたりの遊び、のどけしやの季語とよく響いている。
一度はそんな遊びをする身分になってみたいものだ。




草餅の草の色から味はへり   正則

詠者は草餅を食べようとしている。緑色の草餅、餡は粒か漉餡か。
口に入れる前にまずはその色をじっくり眺め春の気分を満喫する。
草の色を味わうという措辞に感服した。

野島 正則 北野さん、選に、身に余る鑑賞いただきありがとうございます。
励みになります。





(3/24)

山門を背に春の海展く  房子

海に向かう丘の上の寺だろうか。山門を背にして立つと眼前に広い海が広がる。
四国八十八ケ寺を巡った時にこのような光景に何度か出会った。
四国室戸岬では左右に広がる水平線が丸く見え、地球は丸いのだと実感した。
下五海展くが素晴らしい。

熊谷房子 北野さんありがとう御座います。
岩手県陸前高田市に普門寺という名刹があり、高い所にあった為
被災は免れた様です。山門の真下に広田湾が広がっていました。



団欒の聞こえてきたり木瓜の花   孝之

木瓜の花が咲き始め、沢山の花が競うように太陽の光を浴びている。
その様子を団欒に見立てた所に感心した。どんな色のボケだろう。

原孝之 北野さん、おはようございます。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
キャンパスのそばにある瀟洒なお宅に咲く木瓜の花です。濃い紅色の木瓜の花です。





(3/23)

春寒や記憶からから空回り  祐

まず後半の記憶からから空回りのリズムの良さに惹かれた。
季語の春寒と記憶から、今国会で問題となっている証人喚問を想像した。
片方は確かにもらったといい、相手は全く記憶に無いと反論。
何が真実なのかさっぱり分からない。あったことの証明は出来るが、
なかったことの証明は不可能などと哲学的な問答も出てきた。
記憶をめぐってまさに寒々と感じる中継だ。

牧内 登志雄 北野さん、互選にお選びいただきありがとうございます。
まさにご指摘のとおりの句なのですが、最近は今回の証人喚問前後の動きや、
共謀罪など暗い時代を思い起こすような流れの影を濃くしているように思います。
そうした記憶があるはずなのに、何故か社会の雰囲気がカラカラと空回りしているような気がします。



春雨や真空管の柔き音  寛昭

昔ラジオ少年だった私にはとても懐かしい記憶の蘇る句だ。
トランジスタからICチップによるデジタル化で真空管は絶滅危惧種に
なってしまったがアナログの柔らかい音は今も耳に残っている。
柔らかに降る春雨の季語が生きている。

古閑 寛昭 北野さん、ありがとうございます。真空管アンプは今も健在です
。聴いています。やはりCDよりレコードがソフトですね。最近レコードも出回っています。





(3/22)

誇らしき朝やほころぶ桜の芽   孝之

今日(3/22)東京は全国トップを切って開花宣言をした。
詠者の住まれる福岡はまだ咲いていないようだが、桜の芽は着実にほころび始めている。
そんな朝を詠者は誇らしき朝と措辞された。一体何が誇らしいのか想像が膨らむ。

原孝之 北野さん、おはようございます。気付くのが遅れました。
ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。誇らしき朝とは、
日本人の心の拠り所の桜の開花ということです。
東北地方の桜の番組を見て、その気持ちが強くなりました。



これよりは空港管理地楊雲雀  正則

空港の上空で雲雀が賑やかに鳴いている。邪魔をする物の何もない広々とした空港だ。
地上には空港管理地(立入禁止)の立て札が。人間界の規則など俺たちには関係ないよ〜
と雲雀は楽しげに飛び回る。自然の中の人間の身勝手さが浮き彫りにされた句だ。

今村 征一 空港でそのような景色を見ることがよくあります。好きな句です。
野島 正則 北野さん、今村さん選をいただきありがとうございます。
北野さん、温かなお気持ちの鑑賞をいただきありがとうございます





(3/21)

白もくれんすでに飛び翔つ気配かな  栄太郎

白木蓮の大きな花びらの姿は、活き活きとして静から動への変化を感じさせる。
それを飛び翔つ気配と措辞したところが素晴らしい。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、
嬉しい過分なるご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
春の代表的な花に「梅」「木蓮」「桜」などがあります。
白木蓮の長い冬の間毛に覆われた芽に、白くて大きな花が一面に
咲き出しました。その光景は白い小鳥が飛び出しそうな光景です。



ぼんぼりのつぼみまだまだ花巡り  俊克

開花宣言の待ち遠しい季節となった。
花見の場所にはぼんぼりも吊るされ準備は滞りなく進んでいる。
そろそろかなと出かけてみたが、残念ながら蕾はまだまだ固い。
開花を待ちわびる詠者の心情がよく詠まれている。

大久保 俊克 ありがとうございます。嬉しいです。





(3/20)

浄土から浄土へ旅す彼岸の陽  藤倉浩正

彼岸の太陽が真西に沈んでいく。詠者はそれを浄土へ旅すると見た。
太陽は大日如来にも見立てられるようだが、如来も大宇宙を旅されるのであろう。
雄大な句である。



ひと片の襟足に舞ふ花見かな  祐

彼女と一緒に花見に行った。満開の桜もちらほらと散り始めている。
一枚の花びらが彼女の襟足にふと落ちて止まった。
彼女のうなじを見てああお花見に来てよかったなぁ・・・・

牧内 登志雄 北野さん、ありがとうございます。
昨年、江戸時代からの桜の名所、飛鳥山を歩いた時の句です。
散る桜の儚さと、襟足に薫る微かな「女の匂い」が印象的でした。





(3/19)

正座して墨摺る彼岸太郎かな  正則

詠者は正座して墨を摺っている。般若心経かあるいは軸物の大書だろうか。
彼岸の日、ご先祖様と向かい合い心を澄ませて墨書する。
清浄な雰囲気の中、墨の匂いが漂う景色がよく見える。

野島 正則 北野さん、互選、鑑賞いただきありがとうございます。
墨の香りは、心安まりますね。



雁風呂や鼻まで浸かり河馬と化け   幸

雁風呂(季語)は、東北の外が浜で雁が北へ帰ったあと海岸に
落ちている木片を拾い集めて風呂を焚き村人が入浴する風習があるという言い伝え。
外が浜がどの辺りかは諸説ありはっきりはしないそうだ。揚句は季語の説明からの想像だと思うが、
この雁風呂に首までどっぷりと浸かった様子を下五河馬と化けと措辞したところが実に面白い。

Sachiko Yokoi Hayashi 北野様 稚拙な句を一句互選にお選び戴き誠にありがとうございます!
一層研鑽努力せねばと気を引き締める所存です。








(3/18)

緋桜の俯きてをり何もかも  祐

緋桜と聞くと私は昭和記念公園や殿ヶ谷戸庭園の緋桜を思い出す。
江戸彼岸などと同じく、三月に咲く早咲き。染井吉野は明るく元気な印象だが、
緋桜にはしっとりとした和服熟女のイメージがある。
揚句の上五中七は緋桜の姿を描写している(写真参照)が、
この句の眼目は下五にある。5音を使いながら具体的なことは何も言わず
読者の想像に任せている。俯いているのは詠者自身なのか、
あれもこれもとは何なのか、悩ましい句だ。



牧内 登志雄 北野さん、互選にお選びいただきありがとうございます。
私も緋桜には「和服熟女」の妖艶さを感じますね。その花は上を向くことがなく俯いて咲く、
少し訳ありな女のよう。それを見ている詠者自身を、ちょっと複雑な心境にさせる桜だと思う。



青き踏む草木の名前調べつつ  紀宣

仲春の候となり芽生えた青草を踏みながら詠者は散策をしている。
蕾を付けた草、花を咲かせ始めたものもある。それらを見てあぁ花ニラも
咲き始めたななどと春の訪れを満喫している姿を彷彿とさせる句だ。

つちたに jt 純一 北野さん、互選に選んで頂きありがとうございます。
とても嬉しいです。これを励みにまた頑張っていきたいと思います。





(3/17)

春暁のしじまや耳を壺に当つ  直

 この句を読んで
私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ〉(ジャン・コクトー、堀口大學訳)
を思い出した。
とても静かな春の夜明け、詠者は壺に耳を当ててみた。何が聞こえたのだろう?
後漢書の逸話に、費長房が老翁とともに壺中に入り別世界の楽しみをしたとある。
詠者には小天地のざわめきが聞こえたのだろうか。

大津留 直 北野 和良 さん、ありがとうございます



酔ひ痴れたやうに寝る猫春の暮  亜仁子

詠者の一般投句欄には猫の写真が載せられていた。
ひっくり返りぐにゃりと全く警戒心のない寝様だ。
猫が酒を嗜むのかどうかは知らないがまるで酔っぱらいのようだ。
その様子を上五酔い痴れたと措辞したところにとても共感した。

Aniko Papp 選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、ありがとうございます。
とても嬉しいですね。



(3/16)

春場所の序盤より美酒楽しめり   正則

今年の春場所は新横綱稀勢の里を中心に久しぶりに四横綱の揃う豪華な場所となり、
大阪府体育館の前売り切符は千秋楽まで売り切れという評判の場所となった。
稀勢の里、高安などが初日から連勝を続け、また白鵬が足の怪我で5日目から休場となり、
稀勢の里全勝優勝への期待も高まっている。詠者にとってまさに美酒の場所だろう。

野島 正則 北野さん、選、鑑賞いただきありがとうございます。
新横綱の初優勝をみたいですね。





(3/15)

味噌風呂に浸かる鰆の機嫌よく  夢酔

鰆は春になると外洋から沿岸に近づく魚で、焼いてよし粕漬けにしても美味しい。
詠者は鰆の味噌漬けを作ろうとしているようだ。
鰆の切り身はまるで風呂に入ったようにご機嫌だ。
きっと美味しい味噌漬けになって舌を喜ばせてくれるだろう。
鰆を擬人化した措辞が面白い。

室木 助樹 ありがとうございます。
まさに的を射た鑑賞文をありがとうございますw



辛夷咲く君の告白待つやうに  祐

咲き始めた辛夷の花をうら若い女性に見立てたようだ。
君の告白を待つというのはとても内気な性格のようだ。
念願が叶い恋が前へ進むことを祈ろう。

牧内 登志雄 北野さん、ありがとうございます。はい、とても内気です。
前に進むことのできない恋でも、やはり「ひと言」を待つ季節でもありますね。





(3/14)

やうやつと白きつぼみの雪柳   孝之

原さんは先日も雪柳の句を詠まれていた。
きっと毎日通る道に木がありまだかまだかと咲くのを観察されているのだろう。
今日やっと白い莟が膨らみ始めた、もう少しで満開になるという期待感が読み取れる。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
雪柳に赤い蕾と白い蕾のものがあることを確信する1日となりました。



だんだんと話大きく亀鳴けり  美音

この句では話とは何に関することかの説明がないので、読者が想像するしか無い。
詠者は最近、海外の作者の二行詩を翻訳する作業を懸命にやっておられる。
学長の強い希望によるものらしいが、学長はこの作業を進めることで
俳句大学の存在価値をさらに高め意義あるものにするよう考えておられるようだ。
夢が荒唐無稽であったとしても、それを亀鳴くという季語に語らせているのだと思う。

増田 泰造 互選にいただきます。無限の広がりを感じます。
向瀬美音 北野さん、増田さん、ありがとうございます!嬉しいです!
大変ですがやりがいはあります。





(3/13)

恋の春今夜世界が終わるとも  太三

永遠の愛を誓うという常套句もあるが、この句は今の一瞬、刹那の愛を謳っている。
詠者の心の若々しさが伝わってきた。

牧内 登志雄 互選にいただきます。とても好きな句です。
こういう句がさらりと詠める境地を得たいものと思います。
増田 泰造 北野 和良 さん 恐縮です。清純な青春時代が?のような、
回顧を込めた懺悔でもあります。有難うございます。



さざ波のわらわら走る春の風  栄太郎

春風で湖面にさざ波が立っている。波は穏やかに前進している。
その様子を中七わらわら走ると措辞したところに共感した。
なんだか湖も喜んでいるように感じられる。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、大変ありがとうございます。
先日の散策にて眺めました春の池の光景です。陽光がさざ波に載って
わらわらと走りきらめき、得も言われぬ光景でした。





(3/12)

大福を割り大粒の春かじる  夢酔

餡の饅頭には漉餡と粒餡がある。どちらを好むかは人それぞれだ。
詠者の食べた大福は特別の粒餡だったようだ。
大粒の春という措辞にとても共感した。

室木 助樹 ありがとうございます。



風に舞ふ時計回りに雪柳   孝之

雪柳の花が風に揺れている。長い枝が無数の花を乗せて曲がりくねっている姿は
春を満喫しているようにも見える。時計回りにという措辞が新鮮だ。

原孝之 北野さん、こんばんは。
ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。嬉しいです。





(3/11)

春風よ届けよ届けみちのくに   美音

今日は3.11関東東北大震災の日で自分も含めてたくさん方が震災忌にちなむ句を作られたいた。
それらの中で揚句は平易な言葉を使いながら、被災地の方々への同情の気持ちをよく表している。
中七の届けよ届けの措辞のリフレインもリズムを生み出している秀句である。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます。
3、11は私にとって、大きな価値観の転換となりました。



手をつなぎ命を継ぎて生くる春  晶子

3・11からの復興に取り組む人々を思っての句だと読ませて頂いた。
被災された人々が手をつなぎ、また亡くなられた祖父母、
両親の生命を受け継いで健気に復興に立ち向かわれている。
それらの人々に早く春が訪れるようにと祈るばかりだ。

畝川 晶子 北野さん、選んでくださりありがとうございます!
はい、震災では殉職された方も多くいらしたようですが、復興向けてもminnnaga





(3/10)

女子たちがモリモリさえずるカフェランチ   明子

仲良し同士の女子がカフェランチを食べている。
その様子をモリモリさえずると措辞したところがユニークだ。
元気いっぱいおしゃべりをしながら猛烈な食欲で食べている様子が目に浮かぶようだ。

木代 明子 北野 和良 ありがとうございます。
カフェで、ニコニコ美味しそうに食べて、おしゃべりしてる女の子たちをみて
モリモリさえずっているなぁと閃いて詠みました(*^_^*)



菜の花やローカル線の一両車  寛昭

一面に菜の花が咲いている中を一両だけのローカル電車が走っている。
電車はきっと赤い色に違いない。黄色と赤が鮮やかな対比となり、
のどかな田園風景を醸し出している。

古閑 寛昭 北野さん、素敵な鑑賞ありがとうございます\(^o^)/





(3/09)

地虫出づ演芸場の長き列  正則

浅草演芸場の紹介TVを見て、どんな様子かと出かけてみた。
お昼前、開演前だったが老老男女の長い列が出来ていてびっくりした。
東京には暇な人がこんなにいるのかと改めてびっくりした、とここまでは私の体験談だが、
同じ場面を地虫出づの季語できっちりと句にされた詠者の技に感服した。

野島 正則 北野さん、恐縮です。これからも、精進させていただきます。



片方の靴に入りし苜蓿(うまごやし)  紀宣

揚句については「苜蓿」の読み・意味が分かりにくく、
一般投句欄の方で長いやり取りをさせて頂いた。
読みはウマゴヤシ、意味は別名白詰草と判明し難しかった読みにも注記を入れて頂いた。
句意は野原を歩いていたら白詰草(クローバー)の花が靴に入って来た
と単純に読むことも出来るが、コセンダングサなどの棒状の果実が
ズボンや袖に付くのは分かるが、白詰草の花が靴に入る状況とは
どのような状況なのか、また何故片方の靴だけなのかと考え始めると謎の多い句である。
俳句ではすべてを説明する必要は無いのだが、
なぞなぞ遊びのような句として取らせてもらった。

つちたに jt 純一 北野さん、互選に選んで頂き、ありがとうございます。
長いやりとりをした後ですので、本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。





(3/08)

ぶらり旅車窓に菜畑途中下車  夢酔

詠者は特に目的地も定めずにぶらりと列車の旅に出たようだ。
車窓を眺めていると見事な菜の花畑が目に入った。
ああ、いいなあと思わず途中下車をして菜の花の写真を撮りに行った。
まるで旅番組を見ているような雰囲気。私もこんな旅がしてみたい。
(三段切れのようなのが気になるが、句の雰囲気に免じて無視する)

室木 助樹 ありがとうございます



薮つばき高き土塀の建仁寺  栄太郎

写生句だと読ませてもらった。
建仁寺は臨済宗の大本山で京都で有数な観光名所でもある。
その高い土塀から顔を覗かせるようにやぶ椿の咲いているのが見えている。
沈んだ色の土塀と赤い藪椿の花色との鮮やかな対比。まるで一幅の絵を見るようだ。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、
素晴らしいコメントもお添え頂きまして大変有難うございます!!。
四条大橋界隈〜祇園界隈〜高瀬川界隈の散策が好きで時折り出かけています。
臨済宗建仁寺派の総本山である建仁寺は俵屋宗達の「風神雷神図」が
ある事で有名ですが、何時も観光客でにぎわっています。
高くて長く連なる土塀には、内側から樹木が高く聳えています。
薮椿もその一つですがとても高く赤い花が禅寺ととても良く似合っています。





(3/07)

春水の一面風の縞模様  直

空気(風)は直接には見えず、何か別のものに当たり
それが揺れることで初めて存在を知る事ができる。
詠者は水面を見ていてそこに出来た縞模様で、風の存在を知りああ春だなあと実感した。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にも驚かれぬる、を裏返したような発見だ。

大津留 直 北野さん、ありがとうございます。ご鑑賞により、
自分の句を初めて読んだような感動を味わっております。心から感謝いたします。



梅観ずに目が追ふ和服美人かな  俊彦

観梅に出かけたら、和服を着た麗人が訪れていた。
気がついたら梅の花はそっちのけで和服の美人を目が追いかけていた。
凡な男を真っ正直に告白した句でとても共感した。






(3/06)

桜の芽鎧静かに脱ぎ始む   啓子

桜の莟が少しずつ膨らみ始め、花芽が顔を覗かせている。
本当に咲くのはまだ少し先のことだが、
ほんのりと赤みを帯びた芽は春の到来を告げている。
鎧を脱ぎはじむと言う措辞に文句なしに惹かれた句だ。




バス停でひと休みする蛙かな  紀宣

バス停に差し掛かると、一休みしている蛙に出会ったと読める。
時候は啓蟄だが、はてもう蛙も出てくる頃だったかな? と疑問が頭をよぎる。
さらに蛙が一休みしているというのは本来何処へ行こうと
しているのだろうかとまた疑問が湧いてくる。
実にシュールな印象の句である。詠者は何を報告したかったのだろうか?





(3/05)

春の俳大のび太とスネ夫とジャイアンと  美音

俳句大学にはいろいろな性格、多様な傾向の句を詠む人がいる。
そのことをのび太スネオ、ジャイアンに例えたところが愉快だ。
また東京キャンパスの出句には、定形外の句もたくさんある。
今日の美音さんの句は字余り御免と開き直ってはいるが、
とを三つ重ねてリズムを整えているのがお手柄だ。

向瀬美音 クク、北野さん、ありがとうございます!
私は北野さんはのび太だと思います!いや、もしかしたらできすぎくん?
やっぱりドラえもんかも!



啓蟄の吉原大門潜りたる   正則

江戸時代に作られた「吉原遊郭」は、その刹那性と特殊な文化のため多くの人を魅了してきた。
私もTVドラマ「吉原裏同心」などで「四郎兵衛番所」のことなども知っている。
詠者はスカイツリーの見える現在の吉原を訪れ、タイムワープして江戸時代へ紛れ込んだ。
そこには啓蟄にふさわしく好き心の武士や町人がぞろぞろと大門を潜り
遊女の品定めをしている風景があった。自分も江戸に生まれていれば・・・ああ・・・・・

野島 正則 北野さん、選、鑑賞、ありがとうございます。





(3/04)

おお貴族電車に乗つて春愉し   孝之

貴族電車とはクルーズトレインななつ星in九州のことだろう。
JR九州が誇るこの電車とツアーは、一人一室なら100万円もする。
3泊4日のツアーは上半期は完売、下半期の予約を受付中だ。
こんな豪華な電車で旅をすれば何と愉しいことだろうと言う
詠者の願望の句と読ませて頂いた。

原孝之 北野さん、おはようございます。
ご選句と楽しいご鑑賞有難うございます。
ななつ星の貴族電車というのは楽しいですね。
100万円もするのに予約でずっといっぱいだそうです。
しかし、これは西鉄の電車の絵なのです。大木町の大木族を「おお貴族」と洒落にしたものです。
北野 和良 名産のいちじくのことでしたか!とんだ読み違いでした。
原孝之 いえ、ななつ星の方が夢があっていいですね。有難うございます。



桃咲くや天を捕へて肩車  晶子

子供さんを連れての散歩の途中で桃の花が咲き始めているのを見つけた。
子供さんが花を良く見えるようにと肩車をしてあげた。
赤い花に手を伸ばす子供さんと青空、花の甘い香りなどが浮かぶ景色が見えた。

畝川 晶子 北野さん、選んでくださりありがとうございます。
また、素晴らしいご鑑賞も大変嬉しく思います(^^)。
私は親の立場では詠めませんが、見た光景と幼き頃の自分の経験とミックスして詠みました。
写生は苦手ですが精進いたします(*'-')。ありがとうございました。





(3/03)

雛あられピンクを奪ひ合ふ姉妹   玉有良

雛あられにはピンク、白、黄色、萌黄色などがある。
幼い姉妹は可愛らしいピンクが好きだと取り合っているようだ。
雛飾りを楽しんでいる姉妹の姿が彷彿と浮かんでくる楽しい句だ。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/ 懐かしい光景ですね



灯暗く仕丁の怒る笑ふ泣く   美遥

夜になり雛飾りも薄明かりの中にある。
三人仕丁の姿を見ると、それぞれが怒る笑ふ泣く顔をしている。
彼らは昼間の仕事を思い出しているのだろうか。
怒る笑ふ泣くの表情を捉えたところが素晴らしいと思った。

Biyou Utashiro 北野さん。ありがとう。本当に嬉しいです(^^)





(3/02)

春兆す真空管のほの灯り   幸

真空管という措辞にぐっと捉えられた。
何を隠そう私はかつてラジオ少年だった。当時のラジオやオーディオアンプには真空管を使っていた。
2A3という三極管を出力回路に使うととても良い音が出た。やがて真空管はトランジスタに変わり
さらにICチップの時代となったが、今もマニアの間では真空管アンプが珍重されている。
スイッチを入れると真空管のヒーターがオレンジ色に輝く。
それを眺めていると制御された電子の流れが目に見えるような気持ちとなり、
音楽が心に染み込んでくるのだ。ほの灯りの措辞が素晴らしい。

Sachiko Yokoi Hayashi 北野様 お選び戴きありがとうございます!
おのこ達のアンプやスピーカーに対する熱き思いや語らいに少年の目の輝きが宿りました。
熊谷房子 Sachiko さん一日一句互選に頂きます。
私も「真空管」に惹かれました。昔のラジオを思い出しました。
Sachiko Yokoi Hayashi 房子様お選び戴きありがとうございます
真空管の柔らかな耀と柔らかな音にはデジタルに無い暖かさが有りますねぇ!



なかなかに離せぬ握手弥生かな  美音

下五弥生から卒業式の場面を思い浮かべた。
三年間ともに学び遊び親しんだ親友と別れを惜しみ握手をする。
こんなこともあった、あんなこともあったと次々と思いでが蘇り
握った手がいつまでも離せない。さあ、でも思い切って新しい世界へ飛び出そうね。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!素晴らしい鑑賞もありがとうございます!!





(3/01)

菜の花の緑あふれて汀まで  祐

大きな菜の花畑が渚の辺りまで広がっている。
菜の花の黄色と葉っぱの緑で視野が一杯になる大きな景色。
波打ち際の波の音も聞こえてくるようだ。

牧内 登志雄 互選に選んでいただき嬉しいです。
菜の花は黄色ばかりに目がいきますが、葉と茎の緑があってこそ映えるのだと思います。
その菜の花が海岸線まで傾れ込むように広がる風景を詠みました。



春雷やラフマニノフの長き指・・・清一

ラフマニノフと言えば、ピアノ協奏曲1番や2番を思い出す。
彼は身長2メートルに達する体躯と巨大な手の持ち主で、
12度の音程を左手で押さえることができたと言われている
(小指でドの音を押しながら、親指で1オクターブ半上のソの音を鳴らすことができた)。
また指の関節も異常なほど柔軟であり、右手の人指し指、中指、薬指で
ドミソを押さえ、小指で1オクターブ上のドを押さえ、さらに
余った親指をその下に潜らせてミの音を鳴らせたという。
ピアノの烈しいメロディーと季語の春雷が見事に響き合っている。

向瀬美音 北野さんも音楽に詳しいですね
清水 憲一 北野さん互選頂きありがとうございます。
また素晴らしい鑑賞をして頂き光栄です。音楽にも詳しい博識家の
北野さんを尊敬します。ありがとうございました。