俳句鑑賞文(復刻版)    2016 December        トップへ   




(12/31)

五欲失せ五感冴ゆるや去年今年  美音

五欲とは仏教で言う五境(色、声、香、味、触)に対する欲望のことで、
この五欲を抑制することで逆に五感が冴え渡ると詠者は悟った。
五感を研ぎ澄ますことで心の中に詩が生まれ育ち句となることを知った。
自然に浮いてくる詩を磨きますます楽しい句作りをされることであろう。

清水 憲一 頂きます。今日は五欲なる仏教的な言葉が目に飛び込んで来た。
詠者の句では珍しい。ただ五欲と五感が反比例するように書かれているが、
元々仏教では五欲とは物質(色)・音声(声)・香り(香)・味・触を差し、すべては五感から来ている。
従って詠者は五欲が失せたように見えてその実は益々冴えて来たのかもしれない。
向瀬美音 北野さん、ご鑑賞ありがとうございます!
私も北野さんに負けないように五感を研ぎ澄ませて頑張ります!



黒水仙やけどしさうな香りする  俊文

黒水仙は恋の花、というような歌を聞いた気がする。
詠者はこの花の香が火傷をしそうに激しく情熱的に感じられたのだろう。
深読みすれば黒水仙は詠者の想う人を暗示しているのではないだろうか。
恋が成就しますように。やけどしそうにの措辞が秀逸だと思った。

河野 俊文 北野さん、嬉しい鑑賞をいただき、ありがとうございます。
まさに黒水仙は情熱のあかし。デボラ・カーの「黒水仙」、はたまた、香水の黒水仙。
激しい情熱を詠みたかったのです。新年も変わらず、よろしくお願いしますね。





(12/30)

北風に探す里の香摩天楼   直美

下五に摩天楼とあるので詠者は今大都会に居るのであろう。
年の瀬もつまり故郷が恋しいが今年は帰れそうにない。
せめて北風の香りを嗅いで故郷を偲ぼうとしている。
郷愁に浸る詠者の気持ちが切なく伝わって来る。

高井 直美 北野 和良 さん、ご選句とご選評をありがとうございます。
お正月は帰省出来ないので、電話の向こうの両親の声が余計に懐かしいです。
ご選句頂いて、励みになります



過ちをそのまゝにして日記果つ  祐

今年の日記を振り返ると、いろいろなことが蘇ってくる。
良いこともあり悪いこともあった。この句の場合は
上五の過ちが何を指しているのかとても気になる句である。
詠者のもう一つの挙句では女の名と詠まれている。
関連しているのか、それとも全く別の事柄なのか
。 反省が来年への決意に繋がることを願いたい。






(12/29)

地球儀の蒼きを磨く年の暮   直美

年の瀬となり、家中の汚れを清めていく。机、食卓、冷蔵庫や電子レンジ、テレビの中など。
詠者は居間に飾ってある地球儀も汚れを拭き取り地球の青さを改めて実感したようだ。
だが、本当は地球儀だけではなく地球そのものの汚染をも清めたいと思ったのではないだろうか。

小出有紀 互選に選ばせていただきます。
地球儀があるということは、男の子がいる家庭だろうか。
きっと誕生日プレゼントにでももらったものなのだろう。
球体ならば、埃がつもりにくいとはいえ、この句の主人公は最も大切なものとして磨いている。
ただの拭き掃除では終わらない感が、「青きを磨く」から伝わってくる。




年の暮れ出生届の日付変ふ  勉実落

年の暮に生まれた子供の誕生日を元日に届け出て縁起を担ぐという親心なのだろう。
実は私の姉は元日生まれ、妹は3月3日の雛祭り、
私は2月11日の建国記念日(当時は紀元節)である。
紀元2600年の日に生まれたということで町内の皆さんからお祝いされたと聞いている。
そういった事例からすれば季語の年の暮は動くのかもしれないが、実感の籠もる句だ。






(12/28)

冬の空馬一頭が翔る途   勉実落

詠者が冬空を見上げると白い雲が勢い良く翔ける馬のように見えた。
青空に浮かぶ白い雲、時々刻々形を変化せせて、
その形はいろいろな物を想像させて楽しいものだ。
詠者はその馬に乗って自分も何処かへ向かって飛んでいるのだろう。
或いは有馬記念の優勝馬を見たのかもしれない。
青と白の色彩、いななく馬の声などが連想される楽しい句だ。

佐野勉 ありがとうございますぅ。
若き日に地球を半周して、かの地で馬の絵を買い求めました。若い画家の作品でしたが、
将来価値が上がるというふれこみで、交渉の上〇万円で手に入れました。
帰路は、飛行機の中、大きな絵を横に置いて、約1日の空の旅をしました。
馬の絵は今では実家の玄関にありますが、馬は元気に草原をかけぬけています。
北野 和良 佐野さん、随分と勘違いの鑑賞をしてしまいました。
絵はきっと100倍位価値が上がっているでしょうね。



実万両紳士淑女の一同に   孝之

詠者が今日行われた俳句大学九州キャンバス研修会へ参加の挨拶句だと読んだ。
永田学長、五島副学長も参加され総勢十余名、出句は60余句と報告されている。
まさに紳士淑女の集まりであり、上五季語・実万両に相応しい充実した研修会、慶賀の至りである。

原孝之 北野さん、おはようございます。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
楽しい研修句会でした。永田先生から句会の報告があると思います。





(12/27)

水仙や竹と昔の噺など   孝之

竹林の傍に水仙が咲いていて、水仙の花と竹とがひそひそ話をしているのを詠者は目撃した。
竹「あなたはいつも綺麗ね」水仙「そうかしら、でも大昔あなたの中から生まれたお姫さまには敵わないわよ」
竹「あぁ、かぐや姫さまのことね。あの方は群れ寄る殿方が誰も気に入らず、月へ帰ってしまわれたのよ」
水仙「そうだったの。今頃あの姫さまは月の裏側でどうしておられるのかしら」
竹「もうすぐ宇宙飛行士が月へ向かうらしいから、きっと楽しみに待っておられるのではないかしら」
つきない話を想像させる実に楽しい句だ。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
素晴らしい昔話ですね!



魚拓ある漁師居酒屋燻炭  正則

詠者は元漁師がやっている居酒屋に入った。魚料理が自慢の店だ。
壁には釣った魚の魚拓が自慢げに飾ってある。60cmもある大きな鯛だ。
珍しく囲炉裏があるのか、或いは魚を焼くコンロが卓に乗っていて燻炭が。
お客さん、この魚はご自分で焼いて召し上がって下さい、と言われ
慣れない手つきで焼き具合を確かめるーーいい香り、そろそろ食べ頃かな・・・

野島 正則 北野さん、選に鑑賞、ありがとうございます。
炭火で料理すると美味しいですよね。





(12/26)

未知といふ余白と希望はつ暦  美音

詠者は来年の暦を用意して眺めている。年が明けるとカレンダーには
次々と予定が書き込まれるはずだが、今はまだ真っ白だ。
来年はどう言う年になるのか、どんな出来事が待っているのかと期待でワクワクしてくる。
未知ということは、大いなる希望にも繋がっている。来年がどうか良い年でありますように。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!嬉しいです!
北野さんにも良い年でありますように!



固唾のみ見守る氷上サバイバル   玉有良

詠者はフィギュアースケートの大会を見ている。
選手の技は年々高度になり、激しい得点競争が繰り広げられている。
優美なスケーティングを支えるアスリートとして鍛え上げた筋力は見事なものだ。
一つのジャンプの成否が賞の行方を決する激しいサバイバル。
上五固唾のみの措辞が緊張感を伝え成功した句だ。

小出有紀 ありがとうございます。もう、息ができません!





(12/25)

なけなしの日射を奪ひ合ふ冬芽  征一

冬の日射しは弱々しく、枝についたたくさんの冬芽は
まるで日射しを奪い合っているように見えた。
なけなしの日射という措辞にハッとさせられた。

小出有紀 互選に選ばせていただきます。
今日の作者の句は全部好みだが、「なけなしの日差し」で一目惚れでした。
文句なく上手い。そして、確実な描写と、美しい調べだ。
牧内 登志雄 互選にいただきます。「なけなしの日射」がとても素晴らしく感じます。
冬芽だけでなく鳥たちも冬の日射しを求めていますね。
この季節、水鳥などのペアリングも始まり「日射し」ならぬ雌鳥を奪い合います。
今村 征一 北野さん小出さん牧内さん 御選句並びに鑑賞有難う御座います。



薩摩汁なれば甘薯の多しとも  栄太郎

薩摩汁とは鹿児島の郷土料理で、鶏肉か豚肉を大根、人参、
牛蒡、芋、蒟蒻とともに味噌仕立てで煮込んだ汁のこと。
詠者は薩摩汁を振る舞われたが、芋(甘藷)が多すぎると感じたようだ。
或いは芋があまり好きではないのかも知れない。
だが、薩摩汁と聞けば文句を言うわけにもいかない。郷に入れば郷に従えなのだ。
この句を読んで私も薩摩汁を食べたくなってしまった。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き。
丁寧なるコメントも頂戴しまして大変有難うございます。寒い時季には土地ごとに、
或いは素材ごとに暖かい汁物があるようです。薩摩汁は鶏肉、又は豚肉に、
甘薯ほか大根などの野菜も沢山入れて作る食べる汁物です。
甘薯が豚肉、味噌汁とも馴染みほのかに甘くなってとても好きです。





(12/24)

すらすらとセリフが言へて聖夜劇  征一

キリスト教ではクリスマスイヴのイエスの誕生を祝う礼拝が行われ、
子どもたちが誕生の場面を中心に劇を行う。
詠者はお孫さんが劇に参加し、与えられた台詞を上手に言えるかとハラハラしながら見守っていた。
心配は杞憂に終わりお孫さんは立派に台詞をこなし、ほっと胸を撫で下ろす泳者であった。
子供さんを見つめる詠者の温かい視線が感じられる佳句である。

今村 征一 共感して頂き有難う御座います。メリークリスマス。



寒椿父のネクタイ結ぶ母   孝之

出かける前の男のネクタイを妻が結んでやっている。
まるでドラマのような光景であり、二人の愛情が伝わって来る。
これは現在の事ではなくて詠者の記憶に残っている光景であろう。
それは同時に父母に対する深い敬愛を示している。
毅然とした母の面影が季語の寒椿に重なっているようだ。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
明治生まれの父母と庭に今も咲く寒椿を取り合わせてみました。
嬉しいクリスマスプレゼントになりました。
この互選欄は今年一月に出来たので、初のクリスマスプレゼントです!





(12/23)

待ち切れず開けて叱られイヴの朝   久美子

子供さんが「お母さん、押し入れで見つけたけど、これなあに?」。
イヴの夜に枕元に置こうと用意したプレゼントを子供さんに見つけられてしまった。
「あらぁ、勝手に開けて困った子よね・・・・・」。平和な家庭の一コマを上手に切り取った句だ。

山田久美子 北野様ありがとうございます。
句の学び浅い私ですが、精一杯精進致します。



冬ぬくし別れを惜しむ長きキス   玉有良

愛し合う二人が別れを惜しんで長いキスを交わす、とても素直な恋句と読んだ。
ただこの句の場合は季語が動くのではないか、と疑問も湧いた。
季節を冬に限定する必然性の観点が一つ。また季語の冬温しは暖かい日、
従って太陽の出ている昼間のはずだが、この時間と別れのキスのイメージとに違和感がある。
むしろ夜の時間の方がしっくりと来る気がする。
それでも別れとは、今日は別れても明日また逢える短い別れか、
はたまた遠地へ赴く長い別れか、と想像の膨らむ句である。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/ あまり時間帯のことは考えませんでした。
むしろ、ふたりでいることが「温し」であり、寄り添う幸せを噛み締めている、
そんな気持ちを「冬ぬくし」に込めました。
ただ、言われることも一理あるので、また推敲してみたいと思います





(12/22)

山眠る比叡の平家物語  美音

詠者は山眠る頃の比叡山へ参詣に登っている。
参道の樹々は静けさの中に微かな葉ずれの音を響かせる。
その音はまるで琵琶法師が語る平家物語のように聞こえた。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ
。』
盛者必滅、会者定離、無情を語る法師の声が頭のなかに響くようだ。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!嬉しいです!!
北野さんの頭は冴ゆる、冴ゆる!



金糸魚を突きて恋の話など・・・清一

上五金糸魚(いとより:季語)は、スズキ目イトヨリダイ科。
尾鰭上端から鮮黄色のヒゲが糸状に 伸びているためこの名がある。
体色は赤で六本の黄線が入る。 三本のものは同類のソコイトヨリ。
本州以南に分布し、沖合の 海底に棲む。全長四十センチくらい。
味噌漬け、煮物にして美味。詠者は中七で突きてと措辞しているので
きっと煮物であろう。味醂を効かせた濃い目の味付けが良さそうだ。
恋の話のお相手は男か女か、ここはもう一押しすれば陥落しそうな城攻めの場面だと思いたい。
余談になるが、上五を見た瞬間、漢字パズルを突きつけられた気がした。
「この字は何と読みますか?」。現代の辞書の欠点は、
「よみがな」が分からないと辞書を引けないことだ。
今はPCを使って漢字をコピペして検索すれば、難なく答えを見つけることが出来る。
漢字を画面に手書きして認識させるタイプの電子辞書の開発を期待したい。
金糸魚は珍しい魚であまり見かけない。こんど見つけたら、ぜひ食してみたい。

清水 憲一 北野さん選句ありがとうございます。
金糸魚の煮付けは田舎で友人とよく食べました。
勿論お相手は女性ですよ。嬉しい丁寧なご鑑賞ありがとうございました。(^0^)





(12/21)

冬至湯に浮かべて捨てし欲一つ   正則

不思議な句である。句の前半までを読むと柚子の実がプカプカと浮かんでいる景が目に浮かぶのだが、
そこでいきなり飛躍・転換して欲を一つ捨てた、で結ばれている。浮かぶ⇒捨てるの切り替えが妙である。
人間誰しも欲の塊で欲を持たない人などいない。だが捨てる欲を一つだけ選んでみよと言われたら、
大いに迷い決めかねる気持ちだが、詠者は潔く一つを選べたのだろう。それは何だったのか?

野島 正則 北野さん、選に、鑑賞いただきありがとうございました。
人間、欲が無くなったらお終いともいいますが。



行平に四半分だけ南瓜炊く   幸

今日は冬至とあってか柚子湯と南瓜の句が多かったが、この句を一日一句互選に選ばせてもらった
行平鍋を使って南瓜を炊く。中七の四半分だけという措辞が実にリアルを伝えてくれた。
写生に徹したところが良い。

Sachiko Yokoi Hayashi 北野さま 撰んでいただきありがとうございます
四半分の南瓜を炊きました





(12/20)

年用意俳人たるの飾り物  亜仁子

詠者は正月飾りの準備をしている。玄関や部屋の中、家や地域によってそれぞれ伝統の飾り物がある。
この句では中七の俳人たるの、が気がかりだ。俳人に相応しい飾り物とは何を意味するのだろうか?
いろいろと想像の広がる句である。

Aniko Papp 選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、ありがとうございます。とても嬉しいですね。



たまにはね赤を着たいわ雪おんな  俊文

中七にある赤に目を引きつけられた。季語の雪女といえば当然のごとく雪の白を考えてしまう。
だが、雪女もたまには娘らしい赤を着たいのではないかという詠者の飛躍に驚かされた。
雪景色の中の赤い着物の雪女、色鮮やかな対比が目を奪う。

河野 俊文 北野さん、ありがとうございます。オリジナリテイーを出したいと考えました。
赤を着る雪女がいてもいいじゃないか。岡本太郎のように豊かな発想で俳句を作りたいと思います。





(12/19)

妙齢の事務所揺るがす大嚏  征一

美人と評判の妙齢の女性が事務所に大きく響くハックション。
風邪か或いは花粉症だろうか。周りの人は犯人を見てびっくりをする。
そんな端ないことをするとは思わない人の意外な行動には誰もが驚く。
そんな光景を切り取った一句。一読みして思わず笑ってしまった。

今村 征一 御選句並びに鑑賞有難う御座います



後継ぎの途絶ふ猟師の牡丹鍋  寛昭

社会の変化と高齢化社会への移行で、いろいろの職業の人に跡継ぎがいないという問題が発生している。
詠者の見た猟師も跡継ぎが居ないようだ。本来ならば息子と一緒に味わうはずの
牡丹鍋、息子と一緒に食べたかったなぁと思わずため息が出る。

古閑 寛昭 北野さん、ありがとうございます。田舎は若者が減ってこんな光景ですね。





(12/18)

星冴ゆるギリシア神話よみがえり  美音

詠者は冬の晴れた星空を眺め、あれは冬の大三角、
これがオリオンの三姉妹などと星座を見つけている。
ギリシャ神話のたくさんの神々や動物たちは今星座として星空に記憶されている。
星座は神話の物語を蘇らせ詠者を神々の世界へ誘うのだ。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!嬉しいです!
北野さんはすごいなあ?万葉集、古今集、古事記、ギリシア神話、ゴルフ,
釣り、麻雀、山登り、お遍路、俳句,統計,埋め字、歳時記、をんな?



万物にカムイありけり熊祭   玉有良

詠者はアイヌの熊祭を観た。アイヌの人たちにとって熊は神の化身であり、
肉や毛皮を与えてくれる動物でもある。 熊祭は殺した熊を神の世界へ帰す祭りの儀式である。
考えてみれば大和民族は大きなもの力強いもの全てに神性を感じ、崇める。
アイヌにとっての熊のように、巨木、巨石、山や川の全てに神・カムイは居ますのだ。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
カムイやアイヌの句を詠みたいのと、テレビ特集と、ぴったりの季語
「熊祭」を見つけたのが一緒になり、この句になりました。
私がカムイを初めて認識したのは中学生の頃、ジャンプでの読み切りでした。
村の守り神コタンコロカムイ(梟)がヒロインでした。





(12/17)

おひさまをたべている雪の精見ゆ  勉実落

雪が降り始め太陽は雪雲に覆い隠されてしまった。
この句では雪の精がお日さまを食べてしまったと比喩的に詠んだことが手柄だとおもった。
絵本を小さな子供さんに読み聞かせているような楽しい風景になっている。
中七下五の語のリズムがもう少し良くなれば良いのだが。

佐野勉 ありがとうございます。アドバイスもいただき、うれしいです。
童話のような措辞については、これからも工夫して力をつけたいと思っています。



英字紙に鯛焼包む六本木   祐

六本木で鯛焼きを買ったら、英字紙で包んでくれたという。
六本木と言う場所と英字紙の組み合わせはさもありなんと思うし、
包んだ中味が純日本的な鯛焼きという対比に思わずハッとさせられる。
面白い発見、詠者の力量発揮の句だ。

牧内 登志雄 北野さん、ありがとうございます。
鯛焼きも英字紙に包んでみればTaiyakiになります。
古い英字紙、ほとんどタダで洒落た食べ物になりますね。





(2/16)

初雪や北山杉に音もなく・・・清一

北山杉(きたやますぎ)は日本の近畿地方、京都市北部から産する杉をいい、
磨き丸太として、室町時代から茶室や数寄屋に重用された。
北山杉の栽培林は存分に人手をかけ大切に育てられ、林の景観も実に見事である。
1926年の大正天皇崩御に伴い、翌1927年に多摩陵が造営された際には、
墓地正門から凌に至るまでの間に、京都より取り寄せた120本の北山杉が植えられた。
この北山杉の高さは、植林当初は人の背丈の2倍ほどであったが、現在は20mを超すまでに成長している。
私は昨年まで多摩陵のすぐ傍に住み何度も訪れ荘厳な杉並木をよく知っている。
この句は北山杉に初雪が降った光景を見事に詠み、墨絵のような光景を彷彿とさせる。

清水 憲一 北野さん 互選下さりありがとうございます。
京都北山では今日が初雪でした。その初雪の北山杉の光景を描きましたが、
川端康成の「古都」の小説も念頭にありました。ありがとうございました。



木枯やでんぐり返る子の三歳  栄太郎

寒波が訪れ厳しい木枯しが吹いている。風速が10mともなれば大人でも歩行が困難に感じるほどだ。
風に煽られて三歳の子供さんはよろけ、転けてしまった。風に転ぶなど初めての経験かもしれない。
大泣きしたのかも知れない。だが子供はそんな経験を乗り越えて成長するものだ。
そんな情景を暖かな目で見ている詠者、微笑ましく楽しい句だ。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、
大変丁寧なるコメントも頂戴しまして大変有難う御座います!!。
遠く離れた山口にいます孫と、時折スカイプにて(ビデオ通信)を行っています。
戸外が余りにも寒いため、家の中で遊ぶ3歳になりました孫がでんぐり返しを
行って見せるのです。その他「アポペン」の踊りも披露してくれます。





(12/15)

月冴ゑて狙ふは本所松坂町   玉有良

本所松坂町は吉良上野介の住居で赤穂浪士が討ち入りをした場所だ。
忠臣蔵のドラマ、映画はたくさんあり、その多くは雪の中を火消し装束で行進する浪士が描かれている。
私は雪の中ということで空もどんよりと曇っていたとばかり思い込んでいたが、ネットで検索してみると
当夜雪は積もっていたが晴れて月が出ていた(月齢13.6)というのが正しいらしい。
そうであればこの句は緊迫した討ち入りを冴えた月光が照らしていたということを見事に切り取っている。
勉強させてもらった一句だった。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
先日、民放で古舘一郎さんが実況中継する討ち入り再現番組がやっていて、
そこで当日は満月?で、明るい中の夜討ちだったということを聞いたばかりで、
それを活かしたいと思った。昨夜も急に思いたって外出したが、
念が通じたのか、見事に冴え渡る月光を見ることができた。
当時も、月光は雪に反射し、さらに明るく赤穂義士に味方したにちがいない。



合鍵のかすかな傷や年惜しむ  美音

詠者は合鍵を眺めているが、その鍵にはかすかな傷がついている。
いろいろな物語が考えられるが、ドラマで合鍵と言えば、
(不倫の)恋人同士、密室なのか、はたまた犯人が合鍵を持っていたのか、
などが事件の後で検討される。詠者は鍵の傷を見ながらしみじみと過ぎゆく年を振り返っている。
傷を見ながらあの部屋を訪れた回数を思い起こすのだろう。甘く、そして苦い恋の思い出・・・・

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!嬉しいです。さすが北野さん!
北野さんは合鍵いくつくらい持っていましたか?





(12/14)

泉岳寺目指す武士息白し  孝之

12/14日は赤穂浪士討ち入りの日である。その夜は雪が降っていたと伝えられている。
(今日は赤穂浪士に題を取った句がいくつか投句されたが、上五泉岳寺に注目して原さんの句を選んだ。)
赤穂浪士は山鹿流の陣太鼓を打ち鳴らし、未明に本所・吉良邸への討ち入りに及び
、見事その首級をあげる。そしてその後浪士たちは
泉岳寺へ向かい浅野内匠頭の墓前に報告した後切腹をした。
本懐を遂げ殿の墓前へ向かう浪士たちの昂揚の場面を切り取った佳句である。
季語の息白しが活きている。

原孝之 北野さん、こんばんは。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
拙句に 「白湯を取る四十七士の息白し」 があります。本懐を遂げ、
永代橋の詰所を通過する時に役人に咎めを受けました。
内蔵助の口上に感激した詰所の役人たちが白湯を振舞ってくれたのです。
その後、泉岳寺に向かいます。この句には異論もありました。
俳句は今を詠むということから外れています。しかし、過去を蘇らせる句ならば私はいいと思います。



冬ごもり鬼平終へし吉右衛門  俊文

中村吉右衛門が扮する鬼の平蔵のドラマがとうとう終焉を迎えた。
私も鬼平犯科帳の大ファンで今もTVの再放送を毎週楽しんでいるが、
そのドラマが先日最終話となった。池波正太郎の原作の優れているのは当然として、
鬼平の厳しさと優しさを見事に演じた吉右衛門の当たり役だからこそ
ここまで長く続いてきたのだと思っている。
30年近く続いたドラマでほとんどの俳優さんは第1回からの出演だが、
最近の作を見ると俳優さんの顔に年の流れを感じざるを得ない。
また、最終話では俳優の皆さんもまるで同窓会を楽しむような気分でカメラに
向かったのではないかと想像した。懐かしいTVドラマの終焉を惜しむ詠者の気持ちがよく分かる句である。

河野 俊文 北野さん、素晴らしい鑑賞をいただき、ありがとうございます。
まさに名作ですね。親子二代に渡って鬼平を演じるなんて素晴らしい。良い役者ですね。
ドラマ、映画、舞台だけでなく、さいとう・たかお作画の劇画も素晴らしいです。
なんとも味のある作品です。





(12/13)

いがぐりの家来六人ちやんちやんこ 寛昭

いがぐり、ちゃんちゃんこ、とあるので腕白坊主たちのことだろう。
1人が大将役、のこりの六人は家来役である。家来の六人は坊主頭の男の子、
大将は年上、ひょっとしたら体の大きい女の子の可能性もある。
ともかくワイワイと騒ぎながら行進する子どもたちの姿が目に浮かぶ楽しい句だ。

古閑 寛昭 北野さん、ありがとうございます。子供のころを思い出して作りました。



海の果て天の果てより寒波来る  栄太郎

十二月に入りいよいよ本格的な冬到来。天気図も西高東低の気圧配置となり
北陸・北海道には雪雲が襲いかかり、太平洋側には北颪が吹き下ろすようになった。
地に住まいする人間にはそれら寒波が海の果天の果から来るように感じられる。
海の果天の果の措辞が句を引き立てている。

桑本 栄太郎 北野さん・・・「一日一句互選」にお選び頂き、
嬉しい丁寧なるコメントも頂戴しまして大変有難う御座います!!。
急激に寒波がやって来ました。寒い時季特有の水色の空を眺めますと、
田舎鳥取の日本海の様子を想い出します。大陸からの北風が日本海を渡ってくれば
大荒れの海と寒そうな水色の空も想い出します。





(12/12)

炉開きや萌葱山吹牡丹色  俊文

季語の炉開きとは、冬になってはじめて炉を使うこと。茶道では風炉の名残の茶会のあと、
陰暦十月初旬の亥の日を選び風炉を閉じて炉を開くことを言う。
萌葱山吹牡丹と色とりどりの着物を着た女性が集まり、
その艶やかさはひとしおであろう炉開きの茶会の景色が浮かぶ。
華やかな色と合わせて、女性たちの賑やかな話し声も聞こえてくるようだ。

河野 俊文 北野さん、素敵な鑑賞をいただきありがとうございます。
裏千家淡交会の研修会の様子を切り取ったものです。
まさしく着物姿の女性たちの賑やかな様子を表現したかったのです。



蜜柑もつ甘みは光エネルギー   孝之

蜜柑産地からそれぞれの地の自慢の蜜柑が届き始めた。愛媛、和歌山、
三ヶ日、熊本、ラベルを見ながらどれを買おうかと迷う毎日だ。
甘みの素は太陽の恵み、光のエネルギーが転化したもの。
甘さを噛み締めながら太陽の有難さが身にしみる。

原孝之 北野さん、おはようございます。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
蜜柑の産地に近いせいか北野さんのような蜜柑への思いはあまりありません。
あらためて南国が蜜柑の産地なのだと思い知った次第です。





(12/11)

塩引鮭のお茶づけ美味し塩加減  俊克

塩引鮭をもらったので、さっと焼いてお茶漬けにした。
香ばしい香り、塩加減も丁度良し。美味しい鮭茶漬け、これぞ師走の味だなあ・・・・
一碗お裾分けを頂きたいものだ。

大久保 俊克 北野さん、ありがとうございます。参加します。



拾ふ人なき銀杏や冬の暮  祐

場所は街路か或いは公園であろうか。樹の下に銀杏が落ちている。
行き交う人々は樹を見上げて黄金に色づいた黄葉を愛でているが、
足元の銀杏には目もくれない。森の中なら落ちた銀杏はいずれ地中に帰り
新たな生命を育むが、都会ではただ消え去るのみだ。
じつにはかない・・・・冬の暮という季語の斡旋が秀逸だ。
(巻内さん、いつも心を打つ投句を読ませてもらっています。
今月は既に6句が選されていますね。
互選鑑賞にもぜひご参加下さるようお願いします)

牧内 登志雄 北野さん、互選にお選びいただきありがとうございます。
今の季節の上野山は大きな銀杏の樹の存在感が際立ちますね。
まさに、鑑賞いただいたとおりの光景です。靴の先で割ると瑞々しい種が
飛び出しますが、その脇を皆さんが通り過ぎていきます。
 互選の選句の方、今月はちょっとサボってしまってすみません。
選句にも、もう少し時間を割きたいと思います。





(12/10)

ほっぺたのやうで憎めぬ亥の子餅   玉有良

陰暦10月の亥の日。「亥の子の祝い」をし、万病除去・子孫繁栄を祈った。
西日本で、亥の子の日に行われる収穫祭の行事でこの日に収穫を祝って
新穀の餅を食し、子供たちがわら束や石で地面を打って回る。
詠者はこのつきたての餅を上五でほっぺたのやうでと措辞した。
たしかにその柔らかさは赤ちゃんの頬っぺたそのものだ。
男には仲々思いつかない発想の句だと思った。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
餅はほっぺたのように柔らかいもの、それはありふれてますが……
猪は農作物にとっては害獣ですが、餅に姿を帰ると憎みきれない存在になるなぁと、
妙にほのぼのした気持ちになりました。



小春日の鍵を咥へし狛狐   正則

詠者が詣でた稲荷神社の狛狐は鍵を咥えていたという。
狛狐が咥えるものには、玉(宝珠)・鍵・稲穂・巻物の4種類があり、
鍵はそのみたま(玉=霊徳)を、身につけようとする願望の象徴とされているようだ。
普通の神社の狛犬は何も咥えたりはしていない。
奇妙な物を咥えているという詠者の発見を句にしたのだろう。
私もこの句を読んで初めて意味を調べて知った。感謝したい。






(12/09)

レノン忌の泣きだしさうな昼の月  征一

今日はJレノンの忌だ。レノンはオノ・ヨーコと2度目の結婚をするが、
ヨーコから俳句の話を聞き、それがきっかけとなり作(詞)風が変わったと言われているそうだ。
今日の昼間関東は暖かい小春日和で、晴れた空には半月が出ていた。
薄く儚げな昼の月は40歳で凶弾に倒れたレノンを追悼していたのだろうか。

今村 征一 御選句並びに素敵な句評ありがとうござい。
昨日も今日も荒れながらも昼の月が浮かんでいました。



風花に驚き見仰ぐ幼き子  湧雲(美雪)

風に舞い散る花のような雪を風花といい、群馬県ではこれを吹越とよぶ。太平洋側では晴れた日に多い。
中七に驚き見仰ぐという措辞を置いたからには、風花を初めて見たまだ本当に幼い子供なのだろう。
子供を見守る詠者の暖かい愛情の感じられ、空の青と白い雪との対比も目に浮かぶ佳句である。

亀山 美雪 北野様、互選ならびに句評を有り難うございます。
大人にとっては当たり前のことでも幼い子にとっては新鮮であり、その発見が逆に大人にとっては新鮮です。
それを句に表現出し、賛辞をいただけましたこと大変嬉しく思います。





(12/08)

厚化粧化けに化けたり冬狐  俊文

古来狐は化けて人を騙すと伝えられている。今日は思いっきり厚化粧をして化けて出たようだ。
典型的な厚化粧と言えば、江戸吉原の花魁や京都の舞妓さんが思い浮かぶ。
しかし現代ではバーやスナックのママさんたちも厚化粧で客を騙そうと待ち構えている。
ほの暗い店内でも厚化粧はお見通し。今夜は騙される振りして騙す悪い客になってやろうか。
中七化けに化けたりの重ね言葉が実に面白い。

河野 俊文 北野さん、ありがとうございます。男は騙されていると分かって、
そのやり取りを楽しんでいます。男と女、騙し騙され、それもまた楽し。



黄落の極みに日の差す釣耕園   満徳

釣耕園(ちょうこうえん)は熊本市西区にある、第3代肥後藩主
細川綱利が建てた「お茶屋」と呼ばれる別荘の一つである。
肥後藩の中老で漢詩人の米田波門が、その景観を「雲を耕し月を釣る(釣月耕雲)」
と詩に詠じたことから名づけられた、と言う。
数百年を経た大銀杏が、色づき葉っぱが散り始めた。
黄落の極みの措辞がピークの様を的確に表している。
明るい日差しの中で散る葉っぱは黄金色に輝き、
藩主細川綱利公の往時の栄華を伝えているようだ。

永田 満徳 ありがとうございます。広大な敷地で、今が見頃です。
ご鑑賞のように、往時の栄華が偲ばれます。





(12/07)

湯豆腐や浮かびて消ゆる詩の欠片・・・清一

詠者の今夜の食事は湯豆腐のようだ。ぐつぐつと煮える湯の中に豆腐が泳いでいて、
詠者は食べ頃になるのを待って湯気越しに豆腐を見ている。
眼は湯気を見ているが、頭は句を考えている。言葉が浮かび、また漂う。
季語がひらめき、言葉と結びつきそうになった途端、奥様から
「何をぼんやりしているの、もうたべ頃だから早く頂きましょうよ」。
あぁ湯気とともに去りぬ・・・あのポエム・・・・

清水 憲一 北野さんありがとうございます。
また北野さんも経験されたようなご鑑賞面白く読ませて頂きました。(^.^)



肩たたく銀杏落葉の黄金色   孝之

冬の初め、黄色く色づいた銀杏の葉が木枯しに吹かれて一斉に散り始める。
樹上の枝に残る葉っぱ、はらはらと散り落ちる葉の動き、
また樹下に散り敷きまるで絨毯のようになる落ち葉。
俳句を詠む人ならばこれら感動の場面を一句に留めたいと思うのは当然だろう。
与謝野晶子は『金色の ちひさき鳥の かたちして・・・』と歌い、
山頭火は『あさまいりは私一人の銀杏ちりしく』と詠んだ。
詠者は散り落ちる葉っぱが肩に降りかかる様を「肩たたく」という措辞に凝縮した。お手柄である。

原孝之 北野さん、おはようございます。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます。
お褒め頂き嬉しいです。今日は美味しいお酒が飲めそうです。(笑)





(12/06)

法輪と高さ競ふか銀杏の木   玉有良

神社仏閣には大きな銀杏の木があることが多い。
境内の銀杏は大切にされて何百年も成長を続ける。
上五法輪とあるのでお寺の塔であろう。建物の中で一番高い
塔の法輪と競うように銀杏の葉が風にそよいでいる。
今の時期イチョウの葉は金色に輝き、法輪もまた太陽に輝いているのだろう。
一幅の絵のような景色が目に見えるようだ。

小出有紀 ありがとうございます(^-^)/
もう銀杏はおわりかけだと思ってましたが、まだ黄金の葉を纏っている
銀杏を見た後に、東寺の横を通って2つが一つの作品になりました。



旅の湯の爪先触るる枯葉かな   葉音

温泉宿の露天風呂での光景と読んだ。周りには紅葉した樹々があり、遠くにも色づいた山並みが見える。
散り始めた紅葉葉が幾枚か湯の中に沈み、足の爪先に触れた。林では冬鳥の鳴く声も聞こえてくる。
今日は風も穏やかで湯に浸かっていると時間の経つのを忘れてしまう。今夜の料理は何が出るのかなぁ。

根本 博子 和良 さん、選とご鑑賞ありがとうございましたm(_ _)m
残念ながら日帰りでした。 客もほとんどいない、鄙びた良い温泉でした
北野 和良 そうでしたか。次はぜひ一泊を!





(12/05)

鯛焼の頭派尻尾派一口派  正則

たい焼きを食べるのに流儀、拘りがあるのかどうかは知らない。
頭から食べる、尻尾から、一気に、なるほどいろいろとありそうだが、
一方で好きなものを真っ先に食べる派と最後に残す派は間違いなくある。
そんな人それぞれの食べ方の癖を、第三者として観察している詠者がまた面白い。

根本 博子 一句互選にいただきます。言われてみれば、
確かにそうだなぁと改めて気づかされる。当たり前の日常を、
独特の視点で切り取って句を詠む作者、 やはり素晴らしいです。
今村 征一 私は尾つぽから食べます。一句選に頂きました。
野島 正則 北野さん、根本さん、今村さん。一句選ありがとうございます。
一口派は、少し無理があったかもしれないですね。
鑑賞いただき、ありがとうございます。



年の瀬にアマンドショコラを口移し  勉実落

アマンドショコラ(アーモンドチョコレート)は、炒ったアーモンドに
砂糖がけをし、さらにチョコレートで包んだお菓子のこと。
外側は甘く咬むとカリッとしたアーモンドの食感と香ばしい香りを楽しめる。
下五口移しと言うからには、恋人同士、或いはママから子供さんへということだろうか。
クリスマスの恒例行事なのだろうか・・・・

佐野勉 ありがとうございます。掲句は口づけでなく、口移しです。
口は声を発するだけでなく、ほかの所作もできます。ハートにアマンドを嵌めて、
どうぞ召し上がれ。ハグも忘れずに。w





(12/04)

幼子や背丈越すまで落葉積み   直美

小さな子供さんが枯れ葉を積んで山を作って遊んでいる。
ようやく自分の思うままに手足が動き始めたばかり。2歳くらいだろうか。
枯れ葉の山は子供さんの背丈にまで届きそうに高く積まれた。
夢中になって山を作り遊んでいる子供さんの姿が微笑ましい。
傍で見守っている詠者の優しい眼差しも見えてくる句だ。




熱燗を六腑に落とし幕を引く  無鬼

下五の幕を引くから何らかの諍いごとを想像した。
だが諍いの原因をとことん突き詰めるより、お互い大人なんだからと
鉾を引くことにして手打ち。まあ一杯やろいじゃないかと盃を交わす。
熱燗が喉を通り腹にしみる。いやぁ俺も言い過ぎた、
これからも仲良くやろうな。この酒はいい酒だなぁ・・・・

小林 広一郎 ありがとうございます 熱燗が五臓六腑に染み渡ると、
ひっかかっていた事も腑に落ち、なんで些細なことに拘っていたのか笑ってしまう。
過ぎると悪さをする酒も、こんな効用があり、付き合いは一生やめられないな。
幕を引くは無理やり捻り出したので、納得は出来ていないのですが、まあ幕引きといたしましょう。





(12/03)

金となる銀杏落葉や陽の光  亜仁子

この句を読んだ瞬間、与謝野晶子の
金色の ちひさき鳥の かたちして  銀杏ちるなり 夕日の岡に』を思い浮かべた。
黄色く色づいた銀杏の葉、それが落葉となって枝から落ちていく。
明るい太陽に照らされると金色に輝くのだ。
地面に落ちた葉っぱは金色の絨毯となって地面を覆い尽くす。
明るい油絵を見るような見事な風景だ。

Aniko Papp 選んでいただき、素晴らしいご鑑賞、
ありがとうございます。とても嬉しいですね。



冬晴やきりりメイクで発表す   孝之

誰かが何かを発表する場面を詠者は見ている。
中七きりりメイクから発表するのは女性、それも若い女性だろうか。
発表とは自分の考え(論)を述べるということだから、音楽などではないだろう。
取りまとめた論旨の中味が評価されるのであって発表者の容姿は評価対象外のはずだが、
発表者は少しでも好印象を与えようと精一杯張り切ってメイクをしているのだ。
だが、この措辞によって発表者の緊張感、高揚感が伝わってくる。
彼女は良い評価をもらったのだろうか?

原孝之 北野さん、おはようございます。ご選句と素晴らしいご鑑賞有難うございます
。昨日、卒論の発表会でした。女子学生の皆さん、いつもよりきつめにきりりとメイクして発表でした。
いろいろ先生方からきついコメントをもらったりしてましたが、私のゼミはまずまずの発表を終えました。
夜は打ち上げで盛り上がりました。(笑)





(12/02)

ゴスペルの稽古忙しき歳の暮   幸

ゴスペルとは元来はキリスト教プロテスタント系の宗教音楽である。
詠者はキリスト教会のクリスマス行事で歌うゴスペルの練習に余念がないようだ。
この時期、歌の練習を始めるとあぁ年の暮れが近づいたのだと実感するのだ。
重厚で清々しい歌声も聞こえてくるような句である。

Sachiko Yokoi Hayashi お選び戴きありがとうございます!
クリスマスシーズンになると心や身体がゴスペルを求めるのでしょうか!



寒牡丹開くや吐息漏らしつつ  美音

寒牡丹の花びらがふんわりと開き始めた。
いろいろな色の牡丹があるが、この句の場合は淡い色が相応しい。
女に目覚めようとする乙女が、吐息を洩らしているような風情。
乙女は何を想っているのだろうか。

向瀬美音 北野さん、ありがとうございます!さすが恋句の鑑賞の天才!
小出有紀 互選に選ばせていただきます。
私は真っ赤な舌のような深紅の牡丹を想像した。
息があがるにつれて、花の色も深みを増す。吐息を出すのも
憚るようなシチュエーションだからこそ燃えるのかもしれない。
エロティシズムと文学が危ういところでバランスをとっている。上手い





(12/01)


見つめゐし佳人に潤む竜の玉  寛昭

龍の玉(季語)は、龍の髭(草)に出来る瑠璃色の実のことである。
草むらに隠れるような実は宝石のように美しい。その龍の玉を美しい女人が見つめている。
佳人に見つめられた龍の玉は、恥ずかしさで身を縮めているのだろうか?
美しいものと美しいものとを対比させ読者の心も清々しい気持ちにさせる句だ。

古閑 寛昭 北野さん、ありがとうございます。うれしいてす



火の神と膝突き合はす十二月  水上 康男

日本人には人智を超える偉大なるモノ全てを八百万の神として崇める心がある。
火もその一つである。十二月に入りめっきり寒くなり、焚き火や囲炉裏が恋しくなった。
炎に手をかざし暖を取ると炎の向こう側に火の神様が見えた。
神様と膝を突き合わすなどとは何とも不遜な詠者である。神様ならば跪くべし。
(水上さん、初めまして。互選の選句・鑑賞にもぜひご参加下さい)

水上 康男 北野さん、ありがとうございます。
神様は何処にもおわすと思います。対峙をすれば声まで聞こえてきそう