遍路吟句 土佐国 修行の道場(復刻版)    2014 October        トップへ            



◆ 遍路吟 土佐国 修行の道場

(10/02)  ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その1)

阿波国・発願の道場に続き、遍路吟句(土佐国)を始めます。
(季語を入れるときは可能な限り「夏」とします)

  《卯波立つ土佐湾に沿いひた歩き》     《潮風に挨拶交わすヘンロ小屋

   

先日の新聞に、次の歌が。

両手上げ太平洋を抱え込む おもてなし好き高知県は》       (四万十市 吉尾 之利)

この歌に対して玉手のり子さんから、句を頂いた。    《大海を抱きて土佐の民ぬくし》 のり子

土佐の歩きの概要を、昔の日記でご紹介しておきます。

四国遍路パート2〈予告〉(2003/6/30)

四国の地図を思い浮かべることが出来ますか?
 蝶のような形をしていて 、南に二つの大きな岬が突き出ている。
 西(左)が足摺岬、東(右)は室戸 岬です。
 二つの岬の真ん中の窪んだところが土佐の高知。

 ♪土佐の高知の播磨屋橋で 坊さん簪買うを見た ヨサコイ、ヨサコイ♪

 室戸岬は黒潮に臨み太平洋に飛び出した岬、四国では大昔からアクセスの難 しい難所でした。
 岬の先端部にある御蔵洞(みくらどう)は空海が修行をし 、
 「土州室戸の崎に勤念す。谷、響きを惜しまず、明星、来影す」 と書か れた聖地。  
 東の徳島から南西に海辺を走るJR牟岐線は、県境を越えて
高知県に入った 直後の甲浦(かんのうら)駅が終点で、その先、室戸岬まで鉄道はない。
 岬 の先端から、高知へ行くのにも鉄道はありません。
つまり、室戸岬へは徳島から も高知からも鉄道は利用できず、国道だけが頼りだ。

 鉄道が文明の象徴であるなら、室戸岬は文明から切り離され、今も昔の面影 を残す場所に違いない。
 徳島の23番札所・薬王寺から室戸岬先端の24番 最御崎寺までの距離は約90km
 1日に30km歩くとして3日間かかる 。  海岸線に沿って国道55号線が通っている。
太平洋を左に眺めながら、ひたすら岬の先端を目指す。
この行程を想像するだけで、歩き通せるだろうかと不安 が胸をよぎり、決心が鈍る。
 北陸の親知らず子知らずの難所と同じなのだろ うか。
今はきちんとした国道で車の通行も多いだろうが、それでも波しぶきを浴 び足をとられる場所もあるに違いない。
 一方、都会を離れ昔ながらの景色の保存された街道を、潮風に吹かれなが ら歩いていく。
 波打ち際の岩に降りて、汗をぬぐい一休みする。
太平洋の水 もこの辺りでは澄んでいるの違いなく、海鳥が魚を狙い上空を舞っているかも知 れない。紺碧の空と海。

 四国お遍路を思い立ち、地図を眺め始めた時から、
この室戸岬を通る行程をロマンチックに感じて絶対に歩いてみたいと思ってきた 。
 昔から、お遍路さんもこの道を歩いてきた、僕に出来ないわけはないと思い 直すと、
よーし歩くぞ!と武者震いが湧いてくる。

 室戸岬を過ぎると今度は 土佐湾を眺めながら高知を目指す行程。
27番神峯寺まで約2日、さらに28番 大日寺までが約2日。
高知に入ると札所(寺)も比較的かたまっているので、3 6番青龍寺まではまとめて巡拝が出来る。
 四国遍路パート2〈修行の道場・高知県〉、心の準備も整ったので、まも なく出発します。
◆ 遍路中は、前と同じようにモバイルPC/携帯アクセスを使って、その日の 写真(トップ)と簡単な旅日記をアップする予定です。





(10/03)   ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その2)「番外札所・鯖大師」

新幹線で神戸まで。明石から高速バスで海峡大橋を通り徳島まで往き一泊する。

 《いざ行かん出陣弁当雲の峰》     《桜鯛海峡を超え徳島へ

   

徳島からJR牟岐線で鯖瀬駅まで行く。  鯖瀬駅から100mすぐ近くに鯖 大師があった。
昔、願い事のある人は「鯖断ち(3年間)」をして病気平癒、子宝成就、心 願成就を祈ったという。
(「○○断ち」というのは好きな物、大切なものを 我慢するということだから、
この地方の人は鯖が良く採れてよく食べたのだろう か?)

     《石造の仁王番外鯖大師》  (八十八ヶ所以外に数箇所の番外札所がある)

     《願い込め鯖断ちをする土佐の民

 《お大師に道中安全宝鐸草》    

 お参りが済んで駅前のうどんやさんで昼食「大福うどん」(\700) 。

 《讃岐には負けぬと阿波の意気高し》    

 国道55号線を南へ。  左側には海が見え始める。懐かしい遍路の標識も あり、頼りにしながら歩く。
 日差しが強くなり、汗をかく。白衣を脱ぎTシャ ツ1枚になる。

     《道標に挫けはせぬと奮い立つ

 淺川港ー海南町ー海部町と進むにつれて、荷物の重みが肩に 食い込んでくる。
足もだんだんと重くなってきた。峠道をを超えると宍喰温泉 だと気持ちを励ます。

   

 道の駅「ししくい」から旧道に入り今日の宿・弁天屋 に到着。
 高級Hリビエラの入浴券をもらって温泉へ。広い大浴場の天然温泉。
ジェットバスもあり、疲れた体を存分に癒すことが出来た。  初日、20km なんとか歩き通しました。

 《海部町高速バスのターミナル》   

 《炎天を歩き通して宍喰へ》     《南風宍喰の宿は弁天屋

 《浴衣来て手にはホテルの入浴券》      《夏の夕ジェットバスに身をほぐす







(10/04) ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その3) 「番外札所・明徳寺」

宍喰温泉を出て、峠の水床トンネル(640m)を抜けると高知県の甲浦(かんの うら)港に入る。
この辺りはまだリアス式海岸で入り江が山の合間を縫って深 く入り込んでいて天然の漁港だ。
水辺の建物の屋根で鷺が羽を休めている。

 《白鷺が道案内の甲浦(カンノウラ)》     《サーフィンと磯釣り賑わう東洋町

   

東洋町役場を過ぎ、相聞・松下ヶ鼻の先に、番外札所・明徳寺がある。
和尚さんの趣味でカエルの置物が庭に飾ってあった。オレンジの小さな花が綺麗 にに咲いている。

寝そべった蛙の母子明徳寺》      《檜扇の雨に濡れたる風情かな

       

お参りを済ませて野根大橋、伏越の鼻を通り、ひたすら南を目 指す。
国道55号線は「ふれあい海道」と名付けられ、海岸から20〜30mの 高さの崖の中腹を縫う様に走っている。
右に崖、左に海。波しぶきを浴びること はないが、波の音がどーん、どーんと響いてくる。

     《ふれあい街道に響く波の音

 今日は予報通り、朝から小雨がぱらついていた。ザックにカバーをかけ、雨 装束で歩く。
灰色の空は、海も灰色に染める。遠くの水平線はよく見えるが、グ レー一色だ。
 雨水が靴の中にも染み込んできて、とても歩きづらい。
 御崎 の辺りで雨が激しくなってきた。覚悟の上とは言え、気持ちよくはない。

 《迎え梅雨雨装束に身を固め》    

 その時、前方からやってきた軽バンの車が傍に来て止まった。
運転手のおば さんが 「お遍路さん、お待ちなさい」 「えっ、僕たちですか?」
「お昼ご飯にお寿司を接待しますから、どうぞ食べてください」
 おばさんはそう言って、ビニールの袋に入ったものを渡してくれた。
ペ ットボトルに入ったお茶も一緒に。びっくりしたが、有難く戴く。
 しばらく 歩いて法海上人堂というところで休憩し、戴いた寿司を開いた。
珍しい「たけのこ寿司」で、とても美味しかった。

 《接待の筍寿司を頂いて》       《見も知らぬ人の情けに稲穂垂れ

        《法海上人に筍寿司をまず供え

この小さなお堂にはたくさんの紫陽花が咲き、南 無大師遍照金剛の赤い旗ととても良いコントラストだった。

 《紫陽花に彩り添える堂幟》    

佐喜浜町に入り 、雨はますます激しく、遠くで雷がごろごろと鳴っている。

 《梅雨雷に今宵の宿へ足急ぎ

 根丸、津呂を過ぎ、尾崎。今日はここで泊まる。
 ロッジの前はすぐに海 で、サーフィンを楽しんでいる人たちが見える。
ロッジ(民宿)で濡れた服を着 替え、ようやくくつろぐ。洗濯機、乾燥機があり、夕食前の仕事はまず洗濯だ。

 《宿に着き濡れた衣服は乾燥機》      《風鈴や振り返る結婚三十六年



(昨夜の宿では近くのコインランドリーで\1000!)  今日は23km+バス5 km。疲れました。
 明日はいよいよ室戸御崎の御蔵洞と24番札所・最御崎(ほつみさき)寺が待 っている。




(10/05) ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その4)(御蔵洞ー24番 最御崎寺)

昨夜、台風のように荒れ狂った天候も、朝には収まり、時間とともに晴れ間 が広がった。

 《はるか目指す室戸岬は土用波

前方に巨大な空海像が見えてくる。明星来影寺(札所ではない)という。

 《荒海に向かい聳える空海像

    

御蔵洞は室戸岬の少し手前にあり、山の中腹の自然の洞窟。
空海は青年の 頃、ここで虚空臓求聞持法の真言を百万遍唱える修行をした。
悟りの瞬間、暁に輝く明星が飛んで来て空海の口に入ったという。
洞のすぐ前の海に空海が水浴びをした という場所がある。

     《空海や金色の釈迦守り立つ

恐れ多し大師手跡に手を重ね》    

   《大海に明星睨む御蔵洞

    

洞窟から外を見ると空と海しか目に入らない。
悟りを得た空海は、それまでの教海という名前を捨て空海と名乗るようになった。

室戸岬の海岸は男性的な岩の並ぶ天下の絶景だ。

      《台風にその名を残す室戸岬

月見ヶ浜の上には中岡 慎太郎の銅像が立っている。

 《維新の志士視線の先は黒南風》    

道路から700mほど、息を切らしながら登るとそこ が(24番)最(ホツ)御崎寺。

 《空海に思い重ねる最(ホツ)御崎寺

    

近くに室戸岬の灯台が見える。お参りを済ませ、反対側の 道を降り、いよいよ土佐湾を見ながらの歩きだ。

     《灯台や恋人見守る役も兼ね

  《灯台に別れを告げて山を降り




(10/06) ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その5) #25津照寺ーー#26金剛頂寺

最御崎寺の山を下り、いよいよ左に土佐湾を見ながらの歩きだ。

     《風薫る波穏やかな土佐の湾

津呂の港、ここは土佐から帰国中の紀貫之が嵐を避けて10日ほど船待ちをした港。
江戸時代に大工事をして港として 整備したが大変な難工事で、当時の金で1190両かかったという。

紀貫之も潮待ちをせし津呂港

    

昭和九年海肅襲来地点の碑》    

さらに歩 いて室戸の町に入る。(25番)津照寺は金色に輝く多宝塔ですぐにわかる。
葉桜や朱塗り山門津照寺》      《夏念仏厄除け坂と女坂

         

街中の喫茶店?のおばさんの手作りの掻き揚げ定食がとても美味しかった。

      《名も知らぬ地産の魚に目を見張る

名を訊けばこれはメバルと教えられ

室戸漁港には20トン級のマグロ漁船が並んでいた。

マグロ漁船勢揃いする室戸港》    

     《バス停にウミガメ載せる待合室

室戸の町からさらに 北上、街道を右に入り小高い山へ登る。山頂に(26番)金剛頂寺

ここもまた巨きなわらじ礼拝講

     

高い木々に囲 まれた僧坊はひんやりと涼しく、登りの苦しさを忘れさせてくれる。

お大師のご利益一粒万倍の釜》    

     《信じる者は救われるがん封じ乃椿

お参りを済 ませ、下りにかかり、南の方を眺めると太平洋に突き出した室戸岬が見える。
西 の方には足摺岬が見えるはずだが、雲と山並みとの区別がつかなかった。

南風海の彼方に足摺岬








(10/07) ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その6) #27神峯寺

宿を出て路線バスで神峯寺入り口まで。所要約50分。(歩くと1日分!)。
バス停近くの茶店にリュックを預け、空身で登りにかかる。
やく4km、登り 1.5時間、下り1時間が目安だという。

道はバス道として整備されている ので歩き易い。
今日は土曜日のためか、お遍路さんを載せた観光タクシー(乗用 車、マイクロバス)が何台も追い抜いていく。
どうぞお先に、僕たちは森林浴や 小鳥の声を楽しみながらゆっくりと登ります。

雲の峰杖を頼りに神峯寺》    

     《団体さんどうぞお先に燕子草

句碑の文字読めず悔しき仏法僧》    

(「樵音こぼるる道に当たりけり」 だろうか? 作者が読めない!)

ほぼ時間通りに頂上のバス駐 車場に到着。自販機の冷たいジュースを飲んで一息入れてから参拝。
今日は新し く石の大師像の除幕式があるらしく、式の準備が整えられていた。



     《炎背負い神刀かざす不動明王

またお会いしましたねお迎え大師》    

     《若楓青ふんどしの赤仁王

謎めいたアンパンマン黄雀風》     

参拝を終わって登ってきた道を降り、茶店到着がちょうど昼前。
茶店の若奥 さんの手作りの「ゆず締め鯵寿司」の昼食。
前の日に塩で締め、塩抜きしてから ”ゆず”で締めるのだという。絶品だ。

     《新茶飲み柚子締め鯵寿司頬張りぬ

昼を終わって安芸を目指して歩き始める。空は晴れてきて、汗が流れる。
腕もずいぶんと日焼けしてきた。例によって左側は土佐湾、右手は山の一本道。
大山岬にある道の駅大山で一休み、ゆずアイスが疲れを癒してくれる。

遍路には有り難き場所道の駅》    

足(の裏)が疲れてきて、だんだん歩くのが嫌になるがもうひと頑張りだ 。
港の堤防では何人かの人が釣りをしているようだ。今の時期は何が釣れるの だろうか。

夏の夕堤防釣りの人の群れ

伊尾木川橋、安芸川橋を渡ると安芸の市内。今日はここで泊まる 。
今日の歩き約21km+バス25km  明日の天気が心配だ・・






(10/08) ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その7)大日寺⇒国分寺⇒善楽寺

昨夜泊まった安芸の町は「阪神タイガース」がキャンプをする所で立派な球 場があり、
街の人たちは皆、阪神ファンのようだ。昨夜も阪神が勝ったと言う事 で皆さん機嫌がいい。

阪神の勝ちを喜ぶ安芸の人

この街を「くろしお鉄道ごめん・なはり線」が通っている。
昨年開通したば かりの元気の良いローカル列車だ。見学のためにこの線に乗ることにした。

       《くろしお鉄道はごめん・なはり線

森の国ホームの屋根も丸太造り》    

駅で切符を買って改札を入ろうとしたら、おばさんが声をかけてきて「お接待します。
どうぞ昼に召し上がってください」と寿司を戴いた。びっくりしながら「ありがとう!(合掌)」

  《弘法忌接待頂く田舎寿司》    

         《輪ぬけ様しなね祭の土佐神社

ホームの駅名看板もJRとは 大違いでユーモアたっぷり。列車にも元気な絵が描かれている。
「阪神 Vへま っしぐら がんばれ」とあり、皆さんの熱狂振り が伝わってくる。


  《車体にも「阪神 V へまっしぐら」》    

のいち(野市)の駅で下車して、(28番)大日寺を目指す。 道路標識で同 じ方角に高知工科大学とある。
この大学は新しい大学で、昔の同僚 Y さんが教 授をしているので、
あぁY さんに会いたいなぁと言いながら大日寺へ向かった。

  《高知工科大学昔の同僚懐かしく

     《真言オンバザラダドバン大日寺


子供らもお遍路参り柏餅》    


次は(29番)国分寺。行基が開山したという。庭に咲く桔梗が印 象的。

       《境内に桔梗咲く土佐国分寺


天平の光明皇后の慈悲思い》    


続いて(30番)善楽寺へ。遍路道は田んぼの真中や川の土手を歩いてい く。

      《善楽寺花の蜜吸う黒揚羽


オハグロ蜻蛉や黒アゲハなどが優しく飛んでいて、田園の健在がうれしかっ た。


  《滝浴びて所願成就と仏足石》     


      《子育てを祈り納める地蔵盆


善楽寺でお参りを済ませ、一休みしているときに、ふと辺りを見回すと 、見覚えのある人がいた!
なんと上に書いた Y さんだ!!
偶然に驚きなが ら声をかけたら、相手もびっくり。再会を喜びながら情報を交換。

朴の花大師の助け友に会う》    


今日の宿 は、厚生年金のちょっと贅沢なホテル。
心配した雨も降らず、旧友とも再会 でき、とてもいい一日だった。  今日の歩きは20km。


      《夏の宿土佐犬君に迎えられ



(10/09)   ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その8)#31竹林寺

(7日目 竹林寺ー禅師峰寺ー雪渓寺ー種間寺ー清滝寺ー青龍寺ー岩本寺(予定 は終了)

昨日の日記には書かなかったが、善楽寺手前2kmほどの峠道の登りを歩き 始めたら、
ミニバンが後ろから来て止まり、運転手のおじいさんが「30番へいく のかね?
峠はきついから乗っていきなさい」と誘ってくれて有難く乗せてもらっ た。

そのおじいさんは自分の車で巡拝のガイドをしているのだと話してくれた。
車で行ったので30〜40分ほど時間の得をした。
善楽寺で旧友のY さんと 偶然出会ったと書いたが、
若しも歩いていたらきっと会えていなかったと思う。 不思議な縁だ。

たまさかの出遭いも遍路の功徳かな

今朝は31番竹林寺を目指して歩き始めた。
30分ほど歩いてから小さな山(五台山)を登り、峰 を超えた南側の斜面に竹林寺があった。

夏浅し茅葺き屋根の竹林寺》   


    《文殊祀る五重塔に夏の月


夏木立緑にけぶる句碑の庭

   

参道の句碑の庭という場所に苔むした句碑が建っていた。

ほろほろと山吹散るか瀧の音」  芭蕉  ↓

  《苔茂る句碑に時の流れかな》   


昔、この寺の若僧・純信と麓のイカケ屋の娘・お馬が深い中となり、
純信がお馬にプレゼントしようとハリマ屋橋近 くの店で簪を買ったのが今も歌になって 残っている。
 ♪ 坊さん 簪 買う を見た ヨサコイ ヨサコイ♪
この辺りの人はこの恋話を今も語り継いでいるようだ。

    《播磨屋橋お馬純信夏の恋

平成のお馬純信風薫る》   


    《おたぬきさんあなたも遍路巡りなの

辛い日も笑顔の日もあると励まされ》    


竹林寺のお参りが済んで一休みしていると、そこへ昨日のおじさんがひょ こっと現れた。
そして、「今日は暑くなるぞ! 歩いていたらバテてしまう。
俺 の車で回れば37番岩本寺まで行けるから、どうだ?」と営業開始。
(昨日乗せ てくれたのは、そのための布石だったのか?と思ったが)
山越えで疲れていたの で、おじさんの提案に乗ることにした。

巧妙な案内人に乗せられて

タダで乗せ車の楽を覚えさせ商売上手な案内おじさん

そこからは32番を手始めに一気呵成に巡拝。





(10/10)     ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その9)#32禅師峰寺ー#33雪渓寺ー#34種間寺ー#35清瀧寺

#32禅師峰寺では、本堂の建て替え工事中で、脇にある仮本堂にお参りした。

荷は車空身で楽々禅師峯寺》    


     《白南風や建て替えの仮本堂に




案内人のおじさんの車で移動するので、歩きの辛さは全くないが、少々物足りなくもない。
#33雪渓寺には、山頭火の立派な句碑が建っていた。鐘楼で鐘を突いた。

鐘楼で鐘を一突き南無阿弥陀仏》    


     《山頭火人生即遍路雪渓寺


#34種間寺には信者の短歌が奉納されていた。



出まして五穀まきたる種間寺大悲大師のありがたきかな」  (栄次)

五月雨五穀実らす種間寺

    


#35清瀧寺には大きな観音様が遠くからも見えた。
その足元には随分と古い豊後梅があり、幹はびっしりと苔に覆われていた。

    

豊後梅足下に侍らす清瀧観音

#35清瀧寺から#36青龍寺までの間に桂浜が広がり坂本龍馬の記念館などもある。

維新の雄龍馬と握手青嵐》    

この辺りでは鯉のぼりと一緒に大漁旗のようなものを一緒に立てる風習のようだ。
如何にも漁師の町・村の風情がある。

    

桂浜大漁旗と鯉のぼり




(10/11)     ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その10)#36番青竜ー#37番岩本寺

36番青竜寺は海際にあり、土佐湾の景色が素晴らしい。
三重塔は再建されたばかりのようで鮮やかな朱色に塗られ輝いていた。

     《夏の海波切り不動青竜寺

三重塔背に赤衣観音単秋を待つ》    

     《杖預け手に心経や夏念仏

緑陰や白木まばゆい太子堂》    

37番岩本寺間では67km、1時間半のドライブだったが、
「土佐の一本釣り」(青柳さんのマンガ)で有名な中土佐町などを通りながら、
山の上から土佐湾へ突き出す 岬の絶景に満足、満足。

     《波を切り一本釣りの鰹船

おじさんが道中の風景に着いていろいろと説明をしてくれる。
土佐ぶんた んが南の斜面一面に栽培されている。種は多いが甘いらしい。

土佐湾を見下ろす丘に文旦花

生姜を栽培している畑もある。 JRの終点・窪川駅の近くに#37岩本寺はあった。
夏のような青空の 下に荘厳な大師堂がある。

岩本寺ご本尊は五智如来》    

     《山雀赤い欄干歓喜天》    

奉納の柄杓に龍の水を汲む》    

     《納経所案内をする地蔵さま

庭の小屋では犬がぐったりと寝そべっていて、いよいよ夏の到来かと思わせる。

夏の日や犬もぐったり寝そべって》    

今日の歩きはたったの10km。 これで最初に予定した行程は終わった ことになるが、
電車、バス、車の利用で日にちは大幅に短縮された。

この後どう するか、今夜相談して決めるつもりです。





(10/12)      ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その11) 8日目 〈延長〉(38番)金剛福寺・足摺岬

日にちがあるし、お天気もよさそうなので足摺岬まで足を伸ばし、
(38番)金剛福寺 〜(40番)を回り宇和島ー高松を経由して帰るよう計画を延長しました。
歩 くのはつらいので、電車、バスを利用することにして
、高知から特急あしずり1号に乗り中村駅まで(1時間40分、\4020)。
中村は昔京都からの国司のいた場所で「土佐の小京都」とも呼ばれている。

都人の造りし館走馬灯

そこから路線バスで足摺岬へ(1時 間50分、\1930)。
中村を出て10分ほど走ると四万十川の堤防に出る。広い流れが心地よい。
観音崎、以布利、清水などの海岸を眺 めながらバスが走る。

四万十の緩き流れに竿を垂れ グチを釣らんと挑む釣り人



バスは地元の人たちの足代わりらしく、細い道の集落 を通りながら、細かく止まりながら行く。
岬に近づくにつれて、フリーストップ 状態となり、「運転手さん、ここ!」と言って止めたのは自宅の前。
「ありがと う!」と挨拶して降りる。あるおばさんは一番前の席に座り
「うちのお父ちゃん 、死んでしもてなぁ。このバスにもよう乗せてもろうたきに」
「そら、気の毒で したな」などと世間話を交わしている。

村人の声で賑わう夏のバス

岬の温泉街を過ぎ、終点の岬に(38番)金剛福寺がある。
比較的新しく再建されたらしく、とてもよく整頓されていて、朱塗り権現さまの神社?と同居している。
境内に珍しい大亀の彫刻がいた。説明板によると大師が前にある不動岩に亀の背に乗って渡ったとあった。

      《嵯峨天皇筆なる補陀落東門

雲の峰源満仲の建てし多宝塔》    

     《和泉式部黒髪埋める逆修塔

お大師が乗りて渡りし亀の像》    

大師が一夜でとりい(鳥居)を作らせようとしたが天邪鬼が鳥の鳴き声の真似をして大師は夜が明けたと思いやめたとの伝承がある。

     《大師一夜建立ならずの華表(トリイ)かな




お参りを済ませて昼食。うどん定食とカツオのたたき定食。
アイスを買って岬の灯台と展望台へ。空は見事に晴れて、海の青さが目に染みる。
この海は太平洋そのものだと感激に胸が震える。波はさほどではなく、ところどころに白波が見える程度だった。



断崖に白波の立つ夏の海》    

     《足摺の岬に丸い水平線

夏雲に視線を凝らす万次郎》    

もう一度バスに乗り、中村へ戻る。今夜の宿はルバーサイド四万十(国民年 金)。
夕食は鮎の塩焼きも出てとても美味しかった。風呂は天然温泉で少し 塩味がした。

汗拭い塩味のする温泉に

一昨夜、昨夜と連泊したサンピア高知(厚生年金)は結婚式場 もある立派なホテルで、天皇陛下や秋篠宮ご夫妻も泊まられたそうだ。
安い 素朴な民宿も味があるが、設備の整った宿もたまにはうれしいものだ。

皇族も泊まりしホテル夏涼し

◆今日、デジカメのトラブルがあった。バスの途中で撮ろうとしたら「システムエラー!」。
いろいろ調 べたら「SDメモリカード」の故障だと判明した。予備のカードと交換して無事復帰したが、
予備は容量が小さいので、今までのように枚数を気にせずバシバシ撮 るという訳にはいかなくなった。
あと2日だからなんとかなるだろう。
(夕刻 にはホテルでデータを全部PCへ取り出すので、翌日は空の状態からスタートは出来る)。
◆この町は回線が細いようでインターネットがとても遅いですね。
◆明日は(39番)(40番)にお参りして宇和島から松山へ出て道後温泉 。明後日岡山へ出て、帰京する予定です。




(10/15)     ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その12)#39延光寺ー#40観自在寺

9日目 延光寺ー観自在寺ー道後温泉
いよいよ遍路パート2の最終日となった。健闘を誉めてくれるように朝から 雲ひとつない快晴となった。
歩き遍路の趣旨にはそぐわないが、道後温泉の 湯が頭にちらつくので、今日もバス、電車を最大限利用することにした。
ホテルを出て中村駅から土佐バスで宿毛へ向かう。

土佐くろしお鉄道宿毛駅》     


40分ほど走り平田を過ぎた辺りの平城札所入り口で下車。
バス停前 の釣具屋さんにリュックを預かってもらい(39番)延光寺へ向かう。往復30分。

     《心急く道路の脇に早稲稔る》  (早稲は秋の季語)

    

土佐の国最後の札所延光寺》      《心経も心なしか板につき

境内に虚子の句碑があった。

     「おぼろ夜の赤亀にのる鐘ひとつ」  虚子

境内の池にゆうゆう錦鯉》    

バス停に戻り、再びバスに乗り宿毛へ。ここはくろ しお鉄道のターミナル。
ここで宇和島バスに乗り換えるが、時間待ちをするために駅傍のうどん屋さんでコーヒーを。\150、安い!!!

     《バスを待つコーヒー店の名はゆうゆう

宇和島バスは小型の使い込んだ土佐バスと違って、エア・クッションの効いた大型のデ ラックスバス。
客も少ないので二人の貸しきり状態に近い。道路が広いので大型が使えるということだろうか。
30分ほど走って(40番)観自在寺の場所に着く。ここはもう愛媛県だ。

伊予の国最初の札所観自在寺》      《鐘を突き歩きの無事を吹流

     

本堂はコンクリートや竹床几》    

      《金銅の巨きな独鈷(ドッコ)蝸牛

観自在寺の境内には夏みかんを売る 店があったり、面白い狸や3カエルの像があった。
(・親子孫と三かえる。  ・お金がかえる ・福がかえる ・病気が引きかえる)

現世のご利益叶う三かえる》  (「蛙」は春の季語)   


この後、道後温泉へ出て泊まる。





(10/16)     ◆ 遍路吟句 土佐国 修行の道場(その13)道後温泉

お参りを済ませ、食堂 を見つけ”冷やしうどん”の昼食(\500)。
次のバスがくるまでにと急いで作ってもらい掻き込むように食べる。それほど腰は強くないがつゆの生姜味が効いて美味しい。

伊予国冷やしうどんは生姜味》    


何はともあれ40番まで済ませられたと安心感に浸りながらバスで宇和島へ 。
海岸線を行くバスからは漁港や養殖の筏が見える。宇和島着13:30。松山行き の特急は13:46、グッドタイミングだ。

     《内海に養殖筏箱眼鏡

特急の座席に納まり、長い旅だったと 振り返る。電車は山間を縫い、いくつものトンネルをくぐる。
八幡浜を過ぎやが て讃岐平野に入る。田んぼの稲は高知に比べ成育が遅いようだ。

五月山トンネル多し予讃線》    

15:08松山に到着。駅前から市電に乗り道後温泉へ。
温泉駅前の観光案内所で旅館を紹介してもらい 宿に着く。荷物を置いて 、温泉街の散策。

     「春や昔十五万石の城下哉」  子規

松山の路面電車に子規と乗り



坊ちゃんのカラクリ時計心太》    

     「春風やふね伊予に寄りて道後の湯」  柳原極堂


ここが坊ちゃんの湯だ!土産物屋さんに入り、お菓子や讃岐う どんを買う。宿に戻り、温泉へ入る。
「このお湯は飲んだらあかん」の注意書き を見ながら汗を流す。ごくらく、極楽!!!

伊予ともうす国あたたかにいで湯わく」  森盲天外    


     《浴衣着た客の溢れる道後の湯

石造りの湯神功皇后も入りしとか》    


湯気越しに坊ちゃん探す道後の湯


     《坊ちゃんの湯に汗流す夏暖簾

道後の街にはレトロな蒸気機関車やバス浪漫号が走っていた。

水無月や道後レトロ浪漫号》    

     《坊ちゃんの蒸気機関車夏帽子


昨日も今日もバスの乗客のおばあさんから「お茶を飲んでください」とお接待のお小遣いを戴いた。
四国遍路の文化、本当に頭の下がる思いだ。

お接待ぬくい心にまた涙

あのおばあさんたちにも平安が訪れますようにと祈りたい。ありがとうございました。

土佐国別れを告げて田植歌》    

帰りの新幹線の中、岡山でままかり寿しを買って食べた。

     《そりゃあいこう美味しんぞなままかり寿し


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土佐国・修行の道場の遍路は終わりました。
( 地図の青い線は、【延長部分】。これで、前回と合わせて、全行程の約半分600kmほどが終わった)



一旦東京へ戻り、充電してから次は伊予国・菩提の道場へ移ります。






⇒  ◆ 遍路吟 阿波国 発願の道場
  ⇒  ◆ 遍路吟 土佐国 修行の道場(このページ)




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