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密書街道
峰隆一郎著 徳間文庫 2000 2017/10/10
弘前から江戸へーー権力をほしいままにする暗君・出羽守信著排斥を狙う家老の密書を手に、弘前藩の”早道之者”秋葉右近は旅立った。
だが、江戸には四天流の遣い手、百人斬りの霞新十郎がいた。さらに待ち受ける恐るべき奸計。
そして右近が放った秘策とは?
人斬剣がうなる痛快時代長編。
一章 女狩り
寛保元年(1742)六月。天下は八代将軍吉宗の時代。
陸奥・弘前藩四万六千石の津軽家当主は出羽守信著である。江戸生まれの江戸育ち、当主になったのは、十三歳のとき。
そのとき、側用人として大橋官兵衛がいて、近習の武藤丹宮がいた。
この二人によって、信著は暗君に育てられた。十三歳といえば色気付くころ、女ならば十二、三で男を知る。男も十三になれば、女の体に興味を持つ。そして、精を放つ快感を知るのだ。
この美味さを知ると忘れられない。加えて酒の味も知ることになる。だから政事は、官兵衛の言いなりになる。
右近は、三十六歳になる。人生五十年だとすれば、三十五歳あたりが盛である。つまり、盛りを過ぎたということになる。
弘前藩には、早道之者という組がある。つまり忍びの者だ。早道之者が、この世でどのように役に立つのかわからんが、子供の頃から鍛えてきた。
右近は、乳に剣術を教わった。早道之者は道場での竹刀の叩き合いはしない。実戦には何の役にもたたないからだ。
二、三日の休みをとって旅に出る。小武者修業というところか。早道之者には、この休みが許される。
二、三泊は宿には泊まらない。野宿である。修業の目的は、浪人を斬ることだ。三日も歩いていれば、たいていは何人かの浪人に出会う。
喧嘩をふっかけて斬ってもいいし、黙って斬ってもいい。とにかく、斬り覚えなければ剣の腕は上がらないのだ。
二章 密書
家老の隈部伊織が出てきた。
「この密書を信寿公に渡してくれ。人に知られてはならん。この書状が人手に渡れば、わしは腹を切ることになる」
「わかり申した」
「ここに二十両用意した。往復これで間に合うと思う。道中は長い。無事にもどって来てくれ」
書状をふところに入れる。そこに昨夜のうちに妹の笹に袋を作らせておいた。そこに書状を収める。
隈部邸を出た。歩き出した足に迷いはない。えどまでは百八十四里ある。一日十里を歩くとすれば、片道十九日かかる。
碇宿の関所を過ぎ矢立峠を越えるところでヤクザに追われている女・お稲を助けた。
右近が夜具の中へ入ると、お稲は体を滑り込ませ、抱きついてくる。しなやかな体だ。腰紐を解いて素肌に手を這わせる。
なめらかな張りのある体をしている。背中を撫で回し、尻の肉を掴む。乳房を手にし、揉みながら、乳首を咥えた。吸い、しゃぶる。
「あーっ、右近さま」 と声を上げ、腰をくねらせる。
お稲の手は怒張しているものを握っていた。風呂の中ではお稲の口の中に放出した。お稲は、まだ気をやっていないのだ。
肌に手を滑らせる。腹から腿を這って、はざまに入る。お稲が腰をひねった。そこは熱く潤んでいた。潤みを指につけて、肉の芽に押しつける。
「あっ」 と声をあげた。そこに指を押しつけてくる。腰を震わせる。いいーっ、と声をあげる。ニ指を揃えて、壺口から入れる。
「あーっ」 と尾を引く声を上げ、腰をゆさぶる。
「ねえ、ねえ、入れて、右近さまのが欲しい。入れて下さい」
お稲の手が、一物を掴んで口に押しつける。一気に熱い中に沈み込んだ。
「わーっ」 と声を上げ、とたんに、腰が激しく動き、ヒッ、と叫んだ。気をやったのだ。
三章 未熟者
四章 早道之者
「弘前から、ご苦労であったな」
「秋葉右近と申します」 と一礼して、書状を差し出した。信寿はそれを受け取り、封を切って読みだした。右近は黙って坐っていた。
「役目、相すみましたので、失礼させていただきます」
「待て、わしの書状を伊織に届けてもらう。二、三日、のんびりしているがよい」
右近は、思わず、えっ? と言っていた。書状を持って帰るとなると、また、狙われることになる。
「二、三日、遊んでおれ」 と言われ、はつ、と一礼して退出してきた。これはたまらん、と思う。「冗談ではないぞ」と思う。
五章 十人の侍
弘前藩へ戻る右近に、先代藩主信寿は十名の武士を護衛につけたが、側用人・大橋官兵衛派も負けずに追手を出し、斬合となり双方大痛手を受ける。
右近は百姓姿に身をやつし逃れて弘前藩へ帰り着く。
六章 待ち伏せ
七章 呪殺
信寿の書状には、信著を廃するとは書かれていなかった。
当惑した隈部は、信著を呪殺しようと試みるが失敗し、そのことが大橋官兵衛に漏れて切腹させられた。
八章 闇鬼
◆ 弘前藩の土着派と新参派の泥仕合。どちらが正義とは判断を付け難い。