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餓狼の剣
峰隆一郎著 祥伝社文庫 2000 2016/07/13
関ヶ原の合戦から三年、安房・館山城下は食いつめた浪人であふれていた。
石田三成の小姓だった新陰流の達人残馬左京も、西軍崩れの身を窶して徒に剣を弄んでいた。
一方、浪人対策に悩む藩は浪人狩りを画策、左京の剣も目的を得た。
だが突然、気儘頭巾なる一味が浪人の群れを殺戮し始める・・・・。彼らはいったい何者なのか?
急逝した著者の遺作、長編時代小説。
一章 落武者逃散
慶長八年九月ーー関ヶ原合戦から三年が経っていた。だが、まだ世の中が落ち着いている、というのではなかった。
合戦には勝ったが、大阪城にはまだ豊臣秀頼がいるし、秀頼のそばには淀君もいる。豊臣方と言われる武将も、あちこちに残っている。
この年の二月、家康に征夷大将軍の宣下があった。家康は、江戸に徳川幕府を開いたのである。
家康は秀頼の家臣ではなくなった。何か事があっても、秀頼は家康を大阪城に呼び出すことはできない。逆に家康は、秀頼を江戸に呼ぶことができる。つまり二人の地位は逆転したことになる。大阪城の武将たちは激怒した。
家康は、武将たちを通じて噂を流した。
”豊臣秀頼は、秀吉の種ではない、大野治長の種である” と。
治長は美男である。秀頼側近の武将である。秀吉と秀頼を比べてみるが良い。似たところはどこにもない。体格にしたって、秀吉は痩せて小柄である。秀頼は骨組みもしっかりしていて、ふっくらと肉がついている。躰つきは大きい。
秀頼が秀吉の子でないとすれば、大阪方の武将たちは秀頼から離反する。その辺を狙ったのだ。
残馬左京は、汐入川のほとりに立っていた。軽袗を穿き、上に袖なし羽織を着ていた。頭は総髪である。
まだ若いから背もまっすぐ伸びている。彫りが深く、なかなかいい男だ。切れ長の双眸で、目つきがよかった。
三年前には関ヶ原で闘った。西軍は負けた。負けたと決まれば、そこで死にたくはなかった。逃げた。まだ、生まれて二十年も経っていないのだ。死ぬにはもったいない。
逃げるのはいいが、すぐに東軍の残党狩りがはじまった。みんな必死に逃げる。捕まれば、間違いなく首をはねられる。
左手の小高い丘の上に城が見える。それほど遠くではない。
館山城である。城主は里見義康、九万二千石、常陸鹿島郡二万八千石を加増されて、合わせて十二万石の領主である。
左京は関ヶ原から逃れてきた。そして安房にたどり着いたのだ。残党狩りは、ここまでは及ばないだろう。
この女、お杏という。その家に、左京は居候しているのだ。
お杏に齢を聞かれて、二十一だと言った。お杏は、だったらわたしより二つ下ね、と言った。ほんとうは十八歳である。
「そのまま」と言って、お杏の背中に抱きつく。ふたつの乳房を両手で包み込む。大きすぎも、小さすぎもしない。手ごろな膨らみだ。揉みほぐす。早くも乳首がしこってくる。
「あ、左京」 と潤んだ声で言う。左京に揉まれているおのれの乳房を見る。乳房が形を変える。それは妙にみだらだった。
「ねえ、左京がほしい」 と体をくねらせる。お杏は立ち上がる。その腰かけに左京が座る。お杏は左京と胸を合わせるようにして、膝に跨ってくる。お杏は手をのばして、一物を摘むと壺口に当てる。そのまま奥まで滑り込んだ。
「あーっ、しあわせ」 と言って抱きついてくる。こらえていたものが、こらえきれなくなって、腰を動かす。左京は、両手で尻を掴む。
左京を仰向けにさせると、股間をあらわにして、そこに顔を埋めてくる。亀頭に唇を這わせる。舌で舐めるのだ。
ゆっくりと呑み込んでいく。一物が口の中に滑り込んで行く。中ほどで一度、止まった。一呼吸、二呼吸して、さらに口に入っていく。ついには、根本まで呑み込まれた。
頭を上下させはじめる。指が一物の根元から菊座までの、蟻の門渡りといわれる部分を押し撫でている。口の中には一物の半分が埋もれているのだ。
「果てる」 と言った。お杏は咥えたまま頷いた。頭を上下させる。体が突っ張る。痺れに似た快感が走る。したたかに放出した。
お杏は動きを止めていた。一物が口の中で萎えていく。お杏は一物を放して、口の中のものを呑み込む。そしてまた萎えたものを、咥える。口の中で一物が泳ぐ。
三章 相生橋
「好きです、好きになりました」 尻を撫で、肉を掴む。
女の体とはいいものだ。淫らにもなるが、気持ちも穏やかにある。
志保の体をうつ伏せにし、腰を持ち上げさせる。志保は左京が何をしようとしているのかを知って、尻を突き出すようにする。
左京は後ろに回った。尻を撫で回し、掴んでは揉む。尻の溝に手を這わせ、切れ込みをさぐる。そこにはすでに露が出ている。その露で手を濡らし、一物を握る。そのまま尻を近づける。
壺口に当てて腰をすすめると、一気に埋まっていった。
「あ、あ」 と志保が声をあげ、腰をゆする。左京はゆっくりと腰を引いて、ドンと尻にぶっつける。それをくり返す。ぶっつける度に、志保は声をあげる。
「こんなこと、はじめて」
そうか、後ろから責めた男はいなかったのか。前に伏せていた志保の体を起こさせる。そのまま引き上げる。志保の背中が左京の胸に押し付けられる。
「いやーん」 と声をあげた。一物を迎えた壺口がさらされている。もっとも、それを眺めるところには誰もいない。だが、女は前から誰かに見られているような気がするようだ。羞恥心が、女の快感を高める。誰かに見られたい、という気もあるのか。
志保は、手をのばしてそこに触れる。一物に触れ、おのれの壺口をなぞる。そして撫であげると、とたんにヒッと声をあげ、腰をゆすった。一物が抜け落ちた。
「いやーっ、抜けました」
手をのばして一物を手にし、入れようとするが入らない。入らないが、そこいらに触れる度、声をあげ、腰をゆする。よくなって、そこに仰向けになる。股を開いて、「早く、早く」 と声をあげる。
左京が腰をすすめると、手がのびてきて一物を掴む。壺口に当てる。一気に埋まる。とたんにしがみついて来て、腰を震わせ、一気に達した。
しばらくは、ぐったりとなっている。女は余韻をたのしみことができるのだ。おのれにもどり、しっかり抱きついて来る。
「ねえ、一度だけではいやです。三日に一度は、こうして抱いてください。こんなによかったのははじめてです」
六章 気儘頭巾
館山城下には、西軍の牢人およそ三千人が集まっていた。しかし舘山城にはそんなに大勢を仕官させる余裕はない。
城主は牢人の中で剣の使える者を雇い、他の牢人を殺させる手段に出る。
また江戸の家康は、密かに食料を館山に運ばせて牢人に与えてもいた。牢人たちを館山に集めるためだ。
さらに配下の外様大名に命じて気儘頭巾という集団を作らせ、牢人たちを殺させもしていた。
だが始末人たちが少々働いたとしても三千人の牢人は居なくなるわけでもない。
殺戮が延々と続く異様な物語だ。
◆ これは著者の遺作だという。話は途中で途切れるように終わっている。
話の結末をどうつけようとしていたのか、今となっては分からない。