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 女性俳句の世界(4)    青木誠一郎  角川文芸出版2008     2014/03/28 

◆ 女性俳句の世界(4)を読んだ。昭和前期に活躍した女性俳人27名の紹介・作品が載っている。
 中で気にいった句を選んでみた。

◆ 小池文子(1920)
 《抱かれたし みじんの雪の 静かさに》
 《花山査子 くちづけかろく 髪も来し》
 《花いばら 髪ふれあひて めざめあふ》
 《春の雪 レダ描きし夜の 夫優し》


◆ 寺田京子(1922)
 《ひとの夫 欲しいと青麦 刈られおり》


◆ 河野多希女(1922)
 《黒髪の奢り 落花のなかの渇き》 S34処女歌集『琴恋』
 《春雷の絶間 琴の音 打ちかへす》
 《象ある睡蓮 かたち無き奈落》


 《鶯に 覚めて真白き 肌着替ふ》
 《鮎の宿 そのまま夜を 深うせり》
 《奪ひあふものに 愛あり 蝉骸》

 《勾配こそ 裸婦の幻想 風花して》
 《初東雲 乳房重心として 佇てり》
 《恋は遠景 愛は含羞 雁渡る》


 《肉体を 持つは哀しみ 春の虹》


◆ 熊谷愛子(1923)
 《十二月八日 かがみて恥骨あり》
 《十二月八日 泥をずぶずぶ 脱けざる脚》
 《舌といふ肉 白桃の肉を捲き


◆ 古賀まり子(1924)
 《花ぐもり 菌出でしこと 秘めて逢う》
 《朧ふかし 明日切る乳房 抱きねむる》


◆ 伊丹公子(1925)
 《聖果のてっぺん 舐めて 青春みじかすぎる》


◆ 中山純子(1927)
 《蝶捕らむと 走れば先に 乳房ゆれ》


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【俳人一覧】ー(評者)
     ひとりの奈落ーー野澤節子ーー福永法弘
     ナミブ砂漠の罔象女ーー津田清子ーー正木ゆう子
     俳句に居直る志ーー佐野美智ーー中田尚子
     遥かな声ーー小池文子ーー原 雅子
     まゆみの実手渡す心ーー旛 ことーー鈴木しげを

      一本の杭ーー飯島晴子ーー宇田喜代子
      宇宙を抱く大器ーー井沢正江ーー角谷昌子
      意志のちからーー寺田京子ーー上野一孝
      冷艶の芸術ーー河野多希女ーー恩田侑布子
      いさぎよい十七音の立姿の詩ーー熊谷愛子ーー浦川聡子

       時の流れをとらえてーー鶯谷七菜子ーー山本洋子
       生絹の風合いーー保坂敏子
       渾身の鶴ーー菖蒲あやーー和気久良子
       いのちの句境ーー古賀まり子ーー藤原龍一郎
       天を仰ぐ人ーー大橋敦子ーー森賀まり

        時代の先端をゆく俳句ーー八木三日女ーー森田智子
        我も火を恋いーー野見山ひふみーー野中亮介
        「皆子曼荼羅」をゆくーー金子皆子ーー水野真由美
        モダニズムの具現者ーー伊丹公子ーー出口善子
        黄鐘調の鐘の音にーー加藤三七子ーー金山桜子

         花冷の鞭ーー橋元美代子ーー辻田克己
         自己哀傷の思いーー山田みづえーー木内 徹
         今日は今日のーー三好潤子ーー水野紀子
         一命に長短はなしーー長谷川秋子
         俳意と連想力ーー澁谷 道ーー高野ムツオ

          自らの魂深く切り込む決意ーー津沢マサ子ーー豊田陽子
          いのちの器ーー中山純子ーー檜山哲彦

昭和前期の女性俳句年表ーー井越芳子編