お茶の時間 (2012 March)
☆ 枯木立 そこから私 見えますか (三豊 土井 茂久)
☆ 大寒や 成層圏へ 続く空 (埼玉県宮代町 鈴木 清三)
☆ サックスはおしゃべり ペットは見栄っ張り ベースはべそかき ジャズを楽しむ (福山市 武 暁)
☆ 早梅や 心の弾み 覗かせて (田川市 山田 千恵女)
☆ おままごと ござを広げた 原っぱに いつも咲いてた おおいぬのふぐり (丸亀 図子 淳子)
☆ 幼き日 椿の蜜を 吸ひにけり (横浜市 宮内 規雄)
☆ 「どこよりも ここがいいよ」と 限界の里を離れず 老いを重ねる (つるぎ 前田 利由)
☆ 雛祭 遊びざかりの 孤独かな (座間市 斎藤 敏昭)
☆ 家屋敷 流されたって 夢はまだ 流されていないと 海に出る人 (静岡市 今井 克己)
☆ プランター 今を盛りの 黄水仙 (阿南 立石 輝子)
☆ 木の箱を 逃げ出さむとする 蛸の頭に 叱るがことく 値札貼られぬ (市川市 大河内 卓之)
☆ まんさくの 日差しが解く よぢれかな (高知 海地 桂子)
☆ サイフォンの 湯気の向こうの マスターの そのまた向こうの ジェームス・ディーン (大和郡山市 四方 護)
☆ 雛飾る 吾が手に母を 重ねけり (高知 和田 和子)
☆ くれないの 実の名を問われ マユミの芽 譲る約束 いつしかしたり (美波 小原 藤子)
☆ 寒雀 それぞれお気に入りの 枝に (稲城市 日原 正彦)
☆ 写真撮る 自分の番号 ないけれど この悔しさを 忘れないため (東京都 吉田 有紗)
☆ 人の世へ 開く白梅 ひかり脱ぐ (熊本市 西 美愛子)
☆ 口紅は 真紅を選び 勝負する いつ奪っても いいよ唇 (横浜市 八幡 まり)
☆ 殺意あるが ごとき氷柱を 討ちにけり (天童市 高橋 ゆり子)
☆ 冬の雲 引っ掛かってる 煙突は 街に一軒 残る銭湯 (西海市 前田 一揆)
☆ 凛として 熊野舞ふ乙女 迎春花 (高松 小林 八州男)
☆ 君の隣で 内気の僕が 話しかけた 言葉はひとつ 「消しゴムかして」 (大津市 大屋 久和)
☆ 梅が香や 老いにまだある 恋ごころ (松山 大野 秀夫)
☆ 一艇の カヌーが往きて 元日の 元荒川に 水脈の広がる (蓮田市 斎藤 哲哉)
☆ あの日から 逢瀬重ねて 老いの春 (岡山市 森 格)
☆ 骨董の 時計ばかりを 置いている 小さな店に 過ぎゆく時間 (東京都 江川 森歩)
☆ 山茶花や 山の所在は 南向き (三好 山下 明俊)
☆ バス着くたび 顔見世のまねき 隠されて 京の情緒を 濃くし暮れゆく (御所市 内田 正俊)
☆ 福寿草 百たび母に 咲きにけり (横浜市 山口 功)
☆ 窓際に まだありますか あのミシン 逝きたる姉の 足踏みミシン (赤穂市 堀 百合子)