詩と写真のコラボレーション (2009 December)
☆ 神のみが 知りいし事を またあばく 彼の月面下の 水の存在 (松戸市 猪野 富子)
☆ 惜命の 白いマスクを 買ひだめて (鶴ヶ島市 渡辺 隆)
☆ すきな時 すきなお菓子を すきなだけ すき間だらけの 失恋期間 (東京都 立石 結夏)
☆ 一年早く 辞める話も出て 熱燗 (山形県 柏倉 ただを)
☆ 謎の絵師 写楽の如く 公田さん 歌壇に再び 投稿せぬのか (流山市 角田 勇)
☆ 商戦と いふいくさあり 十二月 (札幌市 岩本 京子)
☆ マネキンは マネキンなれど 恐々と スカート覗く 少年がゐる (東京都府中市 市川 きつね)
☆ 逆光の 角度に極む 冬紅葉 (名張市 山崎 美代子)
☆ それぞれに 少しはしゃいだ 送別会 もうこの町に 来ることもない (静岡市 堀田 孝)
☆ 大幟 羽子板市の 綺羅を呼ぶ (市原市 鈴木 南子)
☆ 乱れより 爛れに移る 若き言葉 うざいんですけどお はあーなんで、みたいな (和泉市 長尾 幹也)
☆ 京の旅 紅葉ならざる 寺のなし (敦賀市 村中 聖火)
☆ 疾しさのなき 生うすし 許されぬ 愛など抱きて 生きたかりけり (高松市 沖津 秀美)
☆ にわたずみ 金魚みたいに ブナ落葉 (取手市 増山 山肌)
☆ 路上にも ポインセチアの 鉢ならぶ 日暮れてあかき 駅前花屋 (所沢市 栗山 雅臣)
☆ 天よりの 地よりの 黄葉明かりかな (柏原市 早川 水鳥)
☆ 語り歌い 演じて書いて 尻さわり 昭和を生きた 名優が逝く (西海市 前田 一揆)
☆ まだみどり まだうすみどり うすもみじ (東京都 藤森 荘吉)
☆ 早咲きの 山茶花に 冷たい霙(ミゾレ)落ち 葉裏の蝶よ 公田さんは今 (松山市 豊田 里恵)
☆ 先ず寒さ 慣れることより 新任地 (長野市 懸 展子)
☆ 正倉院展 琵琶がこんなに 美しい 初めてひとりで 来ました、ことし (横浜市 安藤 淑子)
☆ 壁の蔦 残り葉わずか オーヘンリー (鹿嶋市 立原 克彦)
☆ 居酒屋の あるじ描ける 壁の絵が ムツにかはりて 燗酒よろし (ひたちなか市 篠原 克彦)
☆ 星を見る 時は平気な 寒さかな (名古屋市 中野 ひろみ)
☆ 屋根の上のヴァイオリン弾き 極楽に 舞台を移した 森繁久弥 (埼玉県 安良岡 正二)
☆ 声までも 紅葉に染まり 戻りけり (旭川市 大塚 信太)
☆ バルカンに ナナカマドあり 紅葉あり 祖国は千千に 離別すれども (多摩市 宮崎 宣和)
☆ 新しき 落葉に色の ありにけり (渋川市 山本 素竹)
☆ かがやきに 堕ちてゆくもの そのあわれ ひとはながめて 滝と呼ぶなり (八王子市 相原 法則)
☆ 一村が そっくり柿の 色となる (八尾市 水上 末子)
☆ 発酵の 声が聞こえて きたといふ パン屋始めし 子の一年目 (上尾市 伊藤 ふじ子)