詩と写真のコラボレーション (2009 November)









 ☆ よき男 よき裸木で ありにけり        (京都市 川端 通代)










☆ 十割の 常陸秋蕎麦の香り つゆつけず食む はじめの一口        (水戸市 菊池 和子)



















☆ ボージョレ・ヌーヴォー 解禁の日の 鴎の白        (周南市 藤井 浅夫)















☆ 新しき 本の匂いも 秋のもの 司馬遼太郎が ずらりと並ぶ        (岡山市 秋山 素子)










 ☆ 留守の間も 神の落葉を 掃きつづけ        (横浜市 橋本 青草)










☆ 我に愚痴 こぼす子がいて 我の愚痴を 聞いてくれる子もいて 神無月        (広島市 大堂 洋子)



















☆ 山全て 震えるごとく 散る紅葉        (東京都 岡村 一道)















☆ これからも ひとり最後まで ひとりと思う 落葉を 踏みつつゆけば        (福島市 三原 凍子)










 ☆ 日々待ちて ゐたる石蕗の黄 庭中に        (柳川市 木下 みね子)










☆ もっと絵を 入れてほしいと 言はれたる 思想史講義 いよよ難し        (神奈川県 中島 さやか)



















☆ 天高し 雲なき紺の どこまでも        (東京都 藤森 荘吉)















☆ 「淋し」とは 雨に打たれて 黙したつ あなたという木 わたしという木        (新潟市 太田 千鶴子)










 ☆ 山茶花や 笑ふごと咲く パリの朝        (フランス 美帆 シボ)










☆ 真っ赤でも 真っ青でもなし 子育ては 絵具の微妙に 混ぜた色なり        (諏訪市 宮澤 恵子)



















☆ 不夜城の 空に流星 ひとつなし        (東京都 青柳 森)















☆ 新米の 白いご飯に 十年の 梅干し一ケ 美しきかな        (つくば市 栗山 實)










 ☆ 冬桜 自分を褒めて 眠ります        (北九州市 真島 暢子)










☆ ふつうの人 ふつうのことって いうときの 普通があなたも よくわからない        (掛川市 村松 健彦)



















☆ この晴や 鷹の渡りの 見えざるや        (志摩市 田島 竹四)















☆ ダム工事 中止となりて 日に二本 山里に通う 町営のバス        (東京都 太田 良作)










 ☆ 秋なれや あくほど茫と してゐたく        (東京都 井原 三郎)









☆ 胡桃割つたことなし いのち九十年        (藤沢市 安田 明子)



















☆ 初鴨を 探してをれば 泳ぎをり        (柳川市 木下 みね子)















☆ 銀舎利の ご飯を常に 夢みるは 我も山頭火と 同じようなもの        (アメリカ 郷 隼人)










 ☆ 鶏頭の 奢れる朱を 憎みけり        (松戸市 大井 東一路)










☆ 廃校の うはさを聞きて ふと思ふ 音楽室の 壁のヘンデル        (大和市 澤田 睦子)



















☆ あばら家に 凌霄(ノウゼン)の花 ゆれてをり        (相模原市 児島 英)















☆ 沈みたる 故郷をなんど 眺めても 湖に映れる 山の影のみ        (城陽市 山仲 勉)










 ☆ ひらがなの 躍るポスター 運動会        (浜田市 大島 一ニ三)










☆ 秋の夜の 鏡の中に ひとりいる モジリアーニの 女のまなこ        (福島市 美原 凍子)