詩と写真のコラボレーション (2009 March)
☆ オリオンは 瞬きもせず 南中し やわらかに 沈丁花の香 (堺市 丸野 幸子)
☆ 笑顔より 生まれし妻か 野水仙 (上山市 清野 桑苺子)
☆ ロボットが 人に近づき ロボットに 人が近づく ハンバーガー食む (尾道市 山崎 尚美)
☆ 肉体と 肉声うらら 朗読会 (秩父市 浅賀 信太郎)
☆ きさらぎの 光を浴びて 桃の木は ももでありたき いっしんとなる (福島市 美原 凍子)
☆ 鬼のやうに 春やってくる 武蔵野は (三郷市 岡崎 正宏)
☆ そうかもう 君はいないんだと 云う台詞 どっちが云うか あなたとわたし (三島市 渕野 里子)
☆ 朧夜の 朧を積んで 貨物船 (岩手県 祝田 幸治)
☆ 夢の中で 嬉しいことを 聞いたから しばらく蒲団に 残りたい朝 (福山市 大塚 繭子)
☆ 寒紅や 夢中な時の とがる唇 (愛媛県 河野 貴和子)
☆ 兜虫色した 弦楽器より 生まれくる ブランデンブルグ五番 聴く朝 (網走市 安田 達郎)
☆ 薔薇の芽や 芥川賞 また乙女 (刈谷市 山本 泰弘)
☆ 流水の 接岸の日は 凍てきびし 触れしギターの 弦共鳴す (網走市 安田 達郎)
☆ 底抜けに 明るい娘 クロッカス (奈良市 上田 和之)
☆ 退院を 出迎えくれし 梅の花 生まれたての子の くちびるに似て (高槻市 有田 里絵)
☆ 退職し 妻に合わすや 福寿草 (野田市 塩野谷 慎吾)
☆ 耳寄せて 張り確かむる ティンパニー 奏者は密語 聞き取るらしき (横須賀市 丹羽 利一)
☆ 獣跡 雪の風紋 乱したる (米子市 中村 襄介)
☆ 五年間 土作りして 来たのだと 友は我にも 菜の種蒔かす (高崎市 野尻 ようこ)
☆ 雪代を あつめてのたり 信濃川 (洲本市 高田 菲路)
☆ 雨滴落つ 紡錘体ならず 高速の カメラで撮れば 美しき球体 (名古屋市 諏訪 兼位)
☆ 下萌えに 太陽揺れて をりにけり (大阪市 塙 告冬)
☆ 菜の花の 畑の道を 曲がり来た エコカー一号 天ぷら匂う (高崎市 野尻 ようこ)
☆ 初孫や 土現れて 土塗(マミ)れ (長岡市 内山 秀隆)
☆ 寒風に 水子地蔵の 風車回る 回らぬあるこそ あわれ (高崎市 石井 省三)
☆ 新幹線 蜷(ニナ)には蜷の 道のあり (大牟田市 石橋 武子)
☆ 除雪車の ひびきにわかに 近づきて 峡の夜明けの 常より早し (群馬県 眞庭 義夫)
☆ 春眠や もふもふ牛に なりたまふ (北九州市 佐竹 三紀枝)
☆ モッコクの 根方に咲ける 水仙に 風花の落つ 廃校の朝 (柳井市 沖原 光彦)
☆ 霜柱 水の時間を 止めてをり (城陽市 大西 としみ)
☆ 「だから出世しないのよ」 妻の直球 内角一杯 低目に決まる (横浜市 折津 侑)