詩と写真のコラボレーション (2007 November)
☆ ひと色にあらず 薄々紅葉かな (西宮市 上田 悦子)
☆ 雑兵は 花を纏わず 討たれけり 菊人形の 合戦シーン (神戸市 内藤 三男)
☆ 深呼吸して 冬晴へ 歩き出す (岡山県 綾野 静恵)
☆ 乗れば もう母を忘れて はしゃぐ子の 園バス見送る 見えなくなるまで (佐倉市 船岡 みさ)
☆ 惜しげなく摘花 懸崖菊となる (久留米市 谷川 章子)
☆ 百本の抜くや 百の穴の どっと大地の 太息吐けり (山形県 清野 弘也)
☆ 積まれたる薪 整然と 冬に入る (伊勢原市 伊東 法子)
☆ 対岸の 街の灯りに 浮きいでし船が 岬の闇へと消えつ (東京都 倉地 克次)
☆ 鬼瓦 すこしも笑まず 秋惜しむ (横浜市 犬山 達四郎)
☆ 鈴なりの柿立つ 峠の岐れ道 いずれに降りるも 柿多き里 (広島市 和田 紀元)
☆ 八百屋にて 黄菊売るころ 菊膾 (東京都 坂東 孫太郎)
☆ 岬とは かなしき者が ひとり来て 空と海とに 抱かるるところ (夕張市 美原 凍子)
☆ 北の地の 男爵が来て 賑わいぬ (飯塚市 釋 蜩硯)
☆ 母の描きしコスモス あまたゆるる中 後ろ向きなる 白花が好き (北九州市 中村 テルミ)
☆ 秋晴や 鯉の破りし 水鏡 (福岡市 中正 木治)
☆ 深々と 更けゆく庭に 月満ちて 椰子は木の実の 高き静もり (台湾 黄 得龍)
(パパイヤの実)
☆ 白菊の 色を尽くして 咲きにけり (芦屋市 田中 節雄)
☆ 吊るされて ぺらぺらの蛸 ぺらぺらと回転しつつ 風に揺れおり (本庄市 福島 光良)
☆ サラリーマン 辞めると楽し 秋の空 (東京都 吉竹 純)
(グラン東京サウスタワー → )
☆ 横浜の ドックヤードに 風渡り 楽譜飛べども 演奏つづく (横浜市 鈴木 達寂)
☆ ハーモニカ 吹けど来たらず 赤蜻蛉 (高岡市 野尻 徹治)
☆ 雲がゆき 風がゆきます 吾亦紅 ふっとだれかの 名前を呼んだ (夕張市 美原 凍子)
☆ どの菊も 菊師の子供 菊祭 (武蔵村山市 小山 芳雄)
☆ 観音の 千のてのひらの 一つ載す〈死を忘るるな〉を諭す されこうべ (大分市 宮添 忠三)
☆ 鶏頭の 乏しき数と なりにけり (東京都 越前 春生)
☆ カランコエ 下駄の響のような花 ああもう長く 下駄をはかない (春日井市 伊東 紀美子)
(ベンケイ草科のミセバヤ)
☆ 還暦や 今も木の実を 拾ふ癖 (白井市 酒井 康正)
(スズカケ:プラタナスの実 → )
☆ 全身を 火がつらぬきて 母となる みどりごに 乳吸われたるとき (神戸市 西塚 洋子)
☆ 晩年の 見えざるがよし 草の花 (神奈川県 中島 やさか)
☆ 風待ちて 綿毛かかぐる 稚児車 オロフレ峠の 冬は間近し (岸和田市 南 与三)