詩と写真のコラボレーション (2007 October)
☆ 肉桂の 葉につく虫が シナモンの 香りを発し 蝶となり翔ぶ (八王子市 多田 喜代治)
☆ 地蔵尊参りの人に 良夜かな (福知山市 松山 ひとし)
☆ 馥郁と 金木犀の 香の流れ 水路のごとき 裏路地の空 (舞鶴市 吉富 憲治)
☆ 桔梗をとどけ 喜寿には 触れざりき (東京都 岩崎 玲子)
☆ 雷雲は 五竜をつつみ 暗みたる傾り 牛らの下りくる見ゆ (ひたちなか市 篠原 克彦)
☆ とんぼの目 森羅万象 流転せり (柏市 藤嶋 務)
☆ 風貌が 隠者めきたる 蟷螂が 薔薇咲く枝に 蟋蟀を食む (伊那市 加納 正一)
☆ わが訛 浮かべてをりし 秋の雲 (南相馬市 江井 芳朗)
☆ 発泡スチロールの 氷水より 鋼めく光を放つ 秋刀魚ひき抜く (沼津市 森田 小夜子)
☆ 古里へ 帰る日の来し 彼岸花 (立川市 越智 麦州)
☆ 国宝の 金の屏風に 納まりて 風神雷神 暴れ給うな (名古屋市 林 和枝)
☆ 笑茸 消化しきれぬ 三姉妹 (群馬県 酒井 せつ子)
☆ 揺れあって 触れあって 咲くコスモスに 今朝のあなたを 許してしまう (川崎市 新井 美千代)
☆ うち続く 嶺々の石見や 霧の湧く (浜田市 田中 静龍)
☆ 清貧を 常とくらせば 愉悦あり 南瓜の雄花 汁の実にして (大分市 岩永 知子)
☆ 信州を囲む 十州 鰯雲 (塩尻市 古厩 林生)
☆ 離れ来し 東京の庭 吾亦紅 其所に 私が居ても 居なくても (東海市 杉浦 とき子)
☆ 芒の穂 話さぬことで すっきりす (市原市 かじもと 浩章)
☆ 浮標に 灯の点る頃には 切り上げん 岸壁端に独り 小鯵釣る (舞鶴市 吉富 憲治)
☆ コスモスの 風かくすこと なかりけり (大阪市 塙 告冬)
☆ SLの汽笛が 峡にこだまして とおきかの日の 石炭列車 (夕張市 美原 凍子)
☆ 待ちし雨 萩の乱るる 風騒ぐ (芦屋市 田中 節夫)
☆ 大海へ 出ることのなき 水湛え 山の小池の夏 果てんとす (坂戸市 山崎 波浪)
(乗鞍高原 牛留池)
☆ 古民家の 梁太くして 糸蜻蛉 (武蔵野市 相坂 康)
☆ 片付けたばかりというのに 南国の市場のごとき 吾子の机よ (松戸市 花嶋 八重子)
☆ 風を踏み 風拾ひゆく 花野かな (横須賀市 菅沼 ひろし)
(黒姫高原)
☆ わかき日の わが後ろ手が モノクロの写真のなかで 槍の尾根ゆく (川越市 小野 長辰)
☆ やうやくに 芙蓉の似合ふ 空となり (福岡市 原田 美津子)
(酔芙蓉 → )
☆ 登山道は 獣の足跡ばかりなり 肩身の狭い おもいで歩む (鳥取県 表 いさお)
☆ 風の意に 触れし枝より 薄紅葉 (熊本県 井芹 眞一郎)
☆ 蕎麦畑 いちめん花の 白ゆるる あなたに会いに 墓地へゆく道 (夕張市 美原 凍子)