詩と写真のコラボレーション (2007 September)






 ☆ 茗荷の子 初物一つ てのひらに      (大津市 庄山 章信)









☆ 秋はまず 小さきものに 来て触るる たとえば紅き 水引の花      (夕張市 美原 凍子)

















☆ 山国や 秋蝶空気 小刻みに      (養父市 足立 威宏)

















☆ 昨夜踊り 疲れた下駄が 並べ乾さる 郡上の町の 宿の表に      (沼津市 森田 小夜子)









 ☆ どこからも 入れる家や 萩の花       (武蔵野市 佐野 三郎)









☆ 夏の森の空 地より見る 空の青 入口のごとし 出口のごとし     (桜井市 枡田 悦子)

















☆ 雲を脱ぎ 地球を脱ぎて 月高し      (広島県 末廣 紀恵子)

















☆ 池の端の大樹は 池に映るよりほかなし 今日もゆらりと 映り     (坂戸市 山崎 波浪)









 ☆ 終着駅 ひるねを乗せて 着きにけり     (旭川市 大塚 信太)









☆ 伊吹嶺の 晴れゆく霧に ふるえつつ ふたつ寄り添う ヤマホタルブクロ      (枚方市 鍵山 奈美江)

















☆ 星一つ 飛んで 二つ目待ちぼうけ      (高松市 岩瀬 良子)

















☆ 黄昏の みなとみらいの街角に ベースの効いた ジャズが流るる     (東京都 近藤 しげを)









 ☆ 蝶のゆく 先々に 秋澄みわたり      (東京都 小川 努)









☆ 初産の 姪に贈りぬ この国の 美しき憲法 ちひろの絵本      (東京都 高橋 雅雄)





















☆ 赤とんぼ 高きに飛びて 疎なりけり      (東温市 高石 幸平)





















☆ 十匹に一匹だけの クマゼミが 宝石だった 少年の頃       (八尾市 水野 一也)









 ☆ 雷の 怖さを知らぬ ヘソルック      (町田市 今村 吉宏)









☆ 湿度九十超えて あのひとと 会えなくなって 三日が過ぎる       (京都市 敷田 八千代)

















☆ 新涼や 波浮に帰港の 実習船      (さいたま市 藤井 健治)

















☆ 申しわけない 犬が乗る乳母車 動物医院 押され出てくる      (八王子市 相原 法則)









 ☆ 徒(カチ)遍路 蝮の径へ 分け入りぬ      (高知県 千光寺 昭子)









☆ 公園の 西日の中の D51は 発車の汽笛を 覚えているか      (長野県 沓掛 喜久男)

















☆ 空蝉の ふたつ梢に むかひ合う     (川口市 青柳 悠)

















☆ このバスに乗れば 間に合うはずだから 乗りたくない 午後八時     (京都市 敷田 八千代)









 ☆ 夜這ひかな 月のあかりを 兜虫     (福岡市 加藤 秀則)









☆ 口をもて 霧吹くよりも こまかなる雨に 薊の花はぬれけり      (長塚 節 )

















☆ 憩ひたる樹下に ヨットの沖がある      (奈良市 古賀 しぐれ)

















☆ 一人ずつ話せば ほんとはいい子なり 今日も揃って 叱られている      (埼玉県 中里 史子)









 ☆ ぺったりと 腹這う猫よ 夏ばてか      (横浜市 秩父 讃吉)









☆ 水遊び 突然やめて 上を指す 水面きらきら 映る白壁      (高槻市 有田 里絵)