詩と写真のコラボレーション (2007 June)
☆ 転ぶさへ 児等には遊び 芝青き (高山市 大下 雅子)
☆ じゃがいもの 薄紫の花咲けり 種芋植えし 子ら進級して (八尾市 水野 一也)
☆ 薬局の裏に 十薬 干してあり (岐阜県 田中 純一)
☆ いささかの 事にてありき 乳房を無くしし 春の 紫蘭咲く庭に (長岡市 馬場 カヨ)
☆ 花は葉に 律儀にまはる 花時計 (刈谷市 近藤 茂子)
☆ 闇浮の 身ひとつを 峡に存えて 晩の肴の 木の芽を摘みぬ (群馬県 眞庭 義夫)
☆ 本日は 度忘れ日和 薔薇の花 (多摩市 高橋 愛子)
☆ 初夏の 樹々のさやぐを聞いている 背なの広さや 考える人 (東京都 長田 裕子)
☆ 諸葛菜 花くぐり行く 子づれ猫 (府中市 矢田 信雄)
☆ 一時間石臼回し 二十分で打ちたる蕎麦を 五分ですする (山形県 高橋 まさし)
☆ 白髪や うすむらさきよ むらさきよ (寝屋川市 木村 美智子)
☆ わたくしの 視野へようこそ はじめての顔なれば 繰るの野鳥図鑑 (新潟市 太田 千鶴子)
☆ 方丈さん 桃をつくりて 袋掛 (東京都 矢野 美与子)
☆ 菖蒲湯で われが言い来しセリフをば 息子が子らに 言う声聞こゆ (飯田市 草田 礼子)
☆ 新道路 蛍袋の 消えにけり (横浜市 竹渕 るし)
☆ 餌をまけば 来る雀らの まかざれば来ぬことわりを 少しさびしむ (夕張市 美原 凍子)
☆ 立葵 良い子を 国に渡すまい (宮崎市 長崎 直美)
☆ いささかの 光と湿りを頂きて ヤブソテツは 蜥蜴の卵を守りいる (岐阜県 棚橋 久子)
☆ ただ透明な気と気が
触れあっただけのような
それはそれでよかったような
(茨木のり子 『歳月』)
☆ 山麓の寺の 「火渡り」始まりぬ 山門の陰に 消防車いて (八王子市 青木 一秋)
☆ 薔薇を見る 目を休ませてくれぬ 園 (香川県 湯川 雅)
☆ チューリップ はみ出している 箱庭は 五月を抱えきれなくなりぬ (京都市 敷田 八千代)
☆ 苗札と 違ふ花咲き あわてけり (奈良県 高尾山 昭)
☆ ジャンケンは 蝶に勝てない 葱坊主 「グー」の頭を 「パー」の羽根舞う (名古屋市 藤田 恭)
☆ 一切を忘れて 滝の音の中 (いわき市 坂本 玄々)
☆ 祝日の 呼び名なんて なんでもよろしかろ 戦死をせずに まだ生きている (半田市 小栗 大造)
☆ 筍の 届かぬことも 一消息 (茨木市 大野 伊都子)
☆ 殺戮の銃が 自由に手に入る 自由の国の 不思議な自由 (川西市 北浦 勝)
☆ 花終えて 入山無料 牡丹寺 (大阪府 辻 千緑)
☆ カレーなら 日に三度でも食いたしと 昭和のむかし その友も亡し (帯広市 荒木 八洲男)