詩と写真のコラボレーション (2007 March)
☆ 白梅の 初花みるにつけ 母の割烹着と 下駄の音を思えり (川越市 小野 長辰)
☆ 日向ぼこてふ 半畳の 玉座かな (新潟市 岩田 桂)
☆ 早春は 木に咲く花の 多くあり 子を抱き上げて 触れさせんとす (東京都 鶴田 伊津)
(桜玄海ツツジ)
☆ 種袋 音を信じて 購へり (姫路市 橋本 正幸)
☆ 川せみに 池の金魚は 獲られたり 林業事務所の 静かな真昼 (浜松市 太田 忠夫)
☆ 桃の花 枕にしたい 雲探す (入間市 峠谷 清広)
☆ 「千の風」になっていますか ここに居る 今の私が 見えますか あなた (津市 中村 多美子)
☆ 煙るとは 咲いてゐること 花ミモザ (泉大津市 多田羅 初美)
☆ 球根も 蛙も蛇も 眠る地に 春知る草の ぽつぽつ芽吹く (広島県府中市 内海 恒子)
(三隅草/雪割草)
☆ 防人の 歌の海かな 鶴帰る (東京都 緒方 輝)
☆ あやまらぬ子を 叱るのが 止まらない ごめんと言ってよ 誰か止めてよ (東京都 三上 美子)
(スノードロップ)
☆ 結婚の 誓ひの言葉 風光る (八幡市 沖増 修治)
☆ 早すぎる 梅の盛りに 噎せ返る これから地球は どうなるのだろう (東京都 柴田 佳美)
☆ 流れ来て 雲流れゆく 春の空 (府中市 村田 進)
☆ 素戔鳴(スサノオ)に討たれし大蛇 たたまれて 神楽終わるや まほろばは春 (山形県 清野 弘也)
(素戔鳴(スサノオ)命 出雲大社)
☆ 下萌えに ねんざの足を 歩ませる (京都府 重田 和子)
(仏の座 →)
☆ 考えは まとめずに おくこともよし 冬の欅の 枝細やかに (熊谷市 内野 修)
☆ 金婁梅(マンサク)や 金髪少女の 舌回る (いわき市 馬目 空)
☆ 神経質な 樫の木なれば 高層ビルの 視線に 枯れはじめたる (早崎 ふき子 『カフカの椅子』)
☆ この辺と 落葉めくれば 福寿草 (小金井市 大河内 幸)
☆ 新しきニットに 首をとおすとき 白鳥のごと 首を伸ばせり (京都市 敷田 八千代)
☆ 受験子に 持たせる時計 やや進め (日野市 手塚 兼夫)
☆ 草原に 一脚の椅子 棄ててあれば つくづくと 椅子というものを見き (木曾 陽子)
☆ また訪ふと 梅一輪に 約しけり (鳥取市 椋 則子)
☆ 一杯のワインの魔法 よく笑う少女でありし われ戻り来る (佐倉市 船岡 みさ)
☆ 春満月 墳墓の上に かかりけり (鶴ヶ島市 渡辺 隆)
☆ 透明のエレベーターに 詰められて 個の情報は さらされており (四日市市 松本 昭子)
(国立新美術館)
☆ 善哉に 里の切餅 二つ三つ (加古川市 宮西 古杉)
☆ 公園のあらゆる場所に 梅が咲き その枝があり その影がある (東京都 木田 治子)
☆ 犬ふぐり 君が庭に 野の来ておりし (松戸市 林 克己)
☆ 珈琲豆 コスタリカ産と決めて挽く 武器持たぬ国と 知りて久しき (三島市 浅野 和子)