詩と写真のコラボレーション (2005 September)
☆ 詩を書けば かまきりの生る 山の寺 (松戸市 大谷 昌弘)
☆ ガス切れて 仏が原と呼ぶ鞍部 まつむし草の あざやかな青 (福井市 観 正一)
☆ 拾いたる 手にひえびえと 花芙蓉 (鎌倉市 喜多村 萬城)
☆ 君と並ぶ写真の我は いつもより素直な笑顔 花火見上げて (箕面市 遠藤 玲奈)
☆ 日々草 咲かせて 路地の喫茶店 (八王子市 藤沢 樹村)
☆ 川べりをどこまでも 君と下ろうか トム・ソーヤに近づく夏は (芦屋市 一木 仁奈)
☆ 朝顔の 一花一花の 始末かな (秋田市 石井 潤子)
☆ 君のない このさびしさが 癒えるのを 私は望む いや望まない (小金井市 丸井 栄子)
☆ 唐黍や 屋台もろとも 焼くごとく (箕面市 井上 浩一郎)
☆ 酔芙蓉 ほのぼの染まる坂のまち おわら流しが 角まがり来る (相模原市 松並 善光)
☆ 不動明王に 鬼灯の首飾り (川口市 青柳 悠)
☆ よき桃を よき顔に 買う朝市の 終わりのかくも爽やか (名古屋市 藤田 恭)
☆ 吾亦紅 風を叩いてをりにけり (大阪市 塙 告冬)
☆ 「美しいものは 秘密に満ちている」 何となく そこだけが分かる 相対論 (多摩市 藤本 高士)
☆ 黄色にも 澄むといふこと 女郎花 (福岡市 坂本 祥子)
☆ 夕立のやみし森より ややありて雨垂れの音 一気に起こる (藤沢市 田中 修)
☆ さうだねと 頷いてゐる 夜の秋 (八王子市 三井 ゆき)
☆ 高みより 深みへ落ちる 一瞬を滝と呼ばれて 川に戻りぬ (佐倉市 船岡 みさ)
☆ 風吹けば 竹が揺れつつ 秋はそこ (養父市 船戸 理一)
☆ 送り火を焚く門口に みずひきの紅 ほそぼそと 秋が来ていた (山形県 清野 弘也)
☆ 放ちたる金魚に 水の 華やげる (埼玉県 新井 あい子)
☆ 盆踊りの櫓が ぽつんと立っている どうしても 輪に入れなかった 金魚の浴衣 (尼崎市 佐々木 春美)
☆ 涼風が 束になりたる 水辺かな (横浜市 小川 みゆき)
☆ 人はいざ 我は夕餉や 赤とんぼ (綾部市 阪根 瞳水)
☆ 夏野原 わればかりゐて 笑ひをる (調布市 岩本 よう)
☆ アサガオに 顔をうずめて かの夏に離してしまいし 手を思いおり (相模原市 岩元 秀人)
☆ 秋の蝶 風をくぐりて 空の中 (大阪市 塙 告冬)
☆ 蟷螂が ガラスを登る ずるずると落ちては登る 音のない午後 (神戸市 林 陽子)
☆ 次々に 今を消えゆく 花火かな (東京都 今井 肖子)
☆ 産み月のわれにしあれば 満月も梨も葡萄も よりまるく見ゆ (高槻市 有田 里絵)